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ユナの旅【連載中】  作者: りな


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夜の町を歩きながら、ユナは小さく言った。

「……探し方が、わかりません」

女性は歩みを緩めず、即座に答えた。

「気にするな。ついてきな」

わき目も振らず、大股で進んでいく。ユナは遅れないよう、小走りでその背を追った。

やがて女性は一軒の店の前で立ち止まり、扉を押し開けた。酒の匂いとざわめきが溢れ出る――飲み屋だった。

女性は迷いなくカウンターに向かい、店主に声をかける。

「新顔、見てないか?」

「……どんな奴だ?」

店主が眉をひそめる。

「ひげで顔がよくわからない男だとさ」

ユナから聞いた人相を、そのまま伝える。店主は少し考えた後、首を振った。

「俺は知らんが……おい」

カウンターで酒をあおっている男たちに声をかける。何人かに尋ねたが、返ってくるのは「知らない」

の一言ばかりだった。

その時だった。後から店に入ってきた男が、会話を耳にして口を開いた。

「ひげの男?それなら見たな。礼拝堂の前で立ってたぞ」

ユナと女性は、思わず顔を見合わせた。

「……行くよ」

女性はそう言って踵を返す。二人は店を飛び出し、夜の町を駆け抜けて、礼拝堂へと急いだ。


「あれかい?」

と、女性が低く言った。ユナは小さくうなずく。

「いいかい。おまえさんは、私の子供のふりをするんだ。何も言わなくていい」

そう言って、女性は迷いなくユナの手を取った。

――何をすればいいの?戸惑いながらも、ユナはとりあえず、その手をぎゅっと握り返す。

二人は並んで歩き出し、礼拝堂の前に立つガルドのすぐ脇を通り過ぎた。

すれ違いざま、女性は視線を向けることなく、低く何かを呟く。二人にしか聞こえない、大きさで。

……?

ユナが思わず振り返りそうになるのをこらえる間も、ガルドは動こうとしなかった。

やがて、女性とユナはそのまま距離を取り、

何事もなかったかのように、夜の闇の中へと通り過ぎていった。


女性とユナの姿が、完全に闇へ溶け込んだのを見届けてから、ガルドはようやく、深く息を吐いた。その吐息には、確かな安堵の色が混じっていた。

彼は一度だけ、二人が消えた方向を見やり、

それから静かに踵を返す。女性とユナが向かったのとは、逆の道へ。

足音を忍ばせ、夜の町を歩き出したガルドの背中は、やがて街灯の届かない闇の中に溶け、その姿もまた、夜に紛れて消えていった。


数刻後、町外れの風車小屋。

羽根は止まり、軋む音だけが時折、風に混じって鳴っていた。

「ここだよ」

女性が小声で言い、戸を二度、短く叩く。

一拍、間を置いてから、内側で足音がした。

きい、と戸が開く。そこに立っていたのは、背の大きな男だった。

深く被った外套、伸びたひげに隠れた顔――ガルドだ。

「……ユナ」

その名を口にした瞬間、張りつめていた空気が、わずかに緩んだ。

「ガルド……!」

ユナは思わず一歩踏み出した。

生きていた。目の前にいる。それだけで胸の奥が、きゅっと痛んだ。

「無事でよかった」

ガルドは低く言った。手を伸ばしかけ、途中で止める。その指先が、わずかに震えている。

「ごめんなさい」

ユナは言った。

「訳が、あったんだろ。その格好は?」

ガルドの問いに、ユナが何か言おうとした時。

「さてさて、感動の再会は後にしな」

女性が肩をすくめて言った。

「ここも安全じゃあない。長居は無用だよ」

ガルドは一瞬、女性を見た。その目に、驚きと理解が同時に浮かぶ。

「……あんたが」

「ああ。あたしだよ」

女性はにっと笑う。

「礼はいらない。村長の代わりってだけさ」

ガルドは小さく頭を下げた。それから、改めてユナを見る。

「逃げてるのか?」

「……」

ユナは首を立てに振った。

「行こう」

ガルドが言った。

「夜が明ける前に、町を出る」

女性は風車小屋の外を見やり、うなずく。

「東の森を抜けな。追っ手は西を探すはずだ」

三人は言葉少なに、動き出した。


闇の中で、ユナは気づかぬままだった。

胸の奥に眠る“何か”が、静かに目を覚ましつつあることを。


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