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「で、大方、教団に捕まってたんだろ。像なんて、とっとと渡しちまえば良かったんだ」
女性は包丁を肩に担ぐようにして、ぶっきらぼうに言った。
「しかしだな……」
村長が言いかけた、その言葉を――
「で、誰だい。この子は?」
女性が、ぴしゃりと遮った。鋭い視線が、ユナに向けられる。
「……よく、知らない」
村長は歯切れ悪く答えた。
「ああん? なんだって?」
女性の声が一段、低くなる。ユナは胸の奥がきゅっと縮むのを感じながらも、勇気を振り絞った。
「あの……村長を、探しに来たんです。村で、待っていました。でも、戻ってこなくて……」
一瞬の沈黙。女性はユナをじっと見つめ、やがて口の端を吊り上げた。
「ふぅん……隠し子かい?」
「怒るぞ」
村長は即座に言い放った。女性は肩をすくめ、くくっと喉を鳴らして笑った。
「冗談だよ、冗談。……けど、面白い子を連れてきたもんだね」
ユナはその視線に、理由のわからない居心地の悪さを覚えながら、それでも目を逸らさず、二人を見上げていた。
「さて。村長は帰んな。せっかく出れたんだ。おまえさんもな」
女性は包丁を下ろし、追い払うように顎で外を示した。
「あの……人とはぐれたんです。私、探さないと」
ユナは小さく、けれどはっきりと言った。
「どういう奴だい」
女性は足を止め、振り返る。
「大きくて……顔が、ひげで見えなくて。男の人です。……ガルド、って呼んでます」
ユナの言葉に、女性は「ふうん」と短く相槌を打った。少しだけ考え込むように視線を天井へ向ける。
「食べ物でも持ってくるよ。待ってな」
それだけ言い残し、女性は扉を開けて外へ出ていった。扉が閉まると、小屋の中は急に静かになった。
ユナと村長は顔を見合わせ、同時に息を吐く。
――嵐が、ようやく通り過ぎた。二人はそんな気がしていた。
女性は、包みを抱えて戻ってきた。中には食べ物と飲み物、それから畳まれた服が入っていた。
「ほら、食べな」
そう言って、女性はユナを遠慮なくじろじろと見た。視線が痛くて、ユナは背筋を伸ばす。黙々と食べ終えると、女性は服を差し出した。
「これを着るんだ」
「え……これを?」
「そうさ。その格好のままじゃ、すぐバレちたうだろ?大方、逃げてきたんだろ?」
ユナは言われるまま、物陰に移ってごそごそと着替えた。布をかぶり、腕を通し、裾を整える。
――ワンピースだ。思ったより軽くて、動きやすい。鏡はないが、少し……可愛いかもしれない、と思った。
おそるおそる女性の前に出る。
「娘のお古だけどね。似合うじゃあないか」
女性は大きく笑った。
「村長、これから連れが来る。一緒に村に行きな。あたしはガルドとやらを探してくるよ」
そう言って、女性はユナの肩を軽く叩く。
「ほら、行くぞ」
促されるまま、ユナは女性と一緒に小屋を出た。




