3話 精霊魔導核
前話で子宮内反症を取り上げましたが現代では出産出来るらしいです。
「ノアよ、本気か?」
「仕方ありますまい」
祖父の言葉に父が答える。
「リア...五歳になったらお前には【セシル】を名乗ってもらう...が対外的には通例通り10歳になってからとなる。この意味が分かるか?」
父の言葉自体は鷹揚で一見優しそうに聞こえる為、父の後ろで聞いている祖父は気付けないかもしれないが眼が幼子に向けるようなモノでは無かった。その威圧感に
「...お祖父様」
思わず祖父に駆け寄りしがみついてしまった。振り返った父を見た祖父は一瞬驚いた顔をしたが
「そのような眼で娘を見たのか...」
祖父の声は嘆くでもなく、怒るでもなく、少しだけ哀れみ?のようなものが混じっているように感じた。
「申し訳有りません。この子の才気に当てられたようです」
そう言った父に
「厳しく育て過ぎたかの?」
「そのような事はごさいません。感謝しております」
と親子の対話らしい会話が入る。落ち着きを取り戻した私は
「ありがとぉ。お祖父ちゃま」
と告げ父に向き直る。
「お母ちゃまがもう赤ちゃん産めなくなったから?」
少しわざとらしいかもしれないが意識して言いにくいと感じた部分を強調して舌足らずなまま話す。
「今はソレで良い」
嘆息と共に父は私にそう言うと祖父に向き直り
「公務に戻ります」
と告げ部屋を出た。
「お祖父ちゃま...」
祖父の足にしがみつきながら上目遣いで呟いた私を見て、祖父は優しく微笑みながらそっと頭を撫でてくれた。
私が内密で仮にではあるが家督継承する事になったので、部屋の配置換えが行われた。
「母と離れて寂しくないか?」
そう祖父に言われ
「お祖父ちゃまがお隣りだから大丈夫だよ♪」
と元気に答える。
「そうかい」
と優しい目で私を見た後一瞬眼を鋭くして周りを見渡し誰も居ないのを確認して私を抱きかかえた。
「...!?」ビックリする私を余所に祖父は自分の部屋の横の壁に手を翳し『通せ!」と唱え壁を抜ける。
そのまま細く短い通路?を進むと左手に大きな宝石があった。
「...きれい...」
何処からも光など入って来てないにも拘わらず視界が保てているのは、目の前にある宝石が輝いているからだ。
「リアよ、これは魔導石の中でも一際大きくての。我が公爵家の家宝でもある」
そう言って祖父は自分の指に嵌っていた指輪を外し、指輪に付いてる宝石が手の外に向くように握らせた。
「この指輪に付いてる石をこの凹みに当てて、儂が良いと言うまで離さないで欲しいんじゃが...出来るかの?」
祖父の言葉に「出来ゆ!」と答え早速行動に移る。
祖父の狙いは明白だ。眼の前の魔導石と呼ばれた宝石は明らかに弱っている!!
指輪の宝石を凹みに押し当てると魔力が繋がったのを感じたので(いけっ!)と念じ魔力を流す。
「キィゥーーーーーーーンンンンーーーー−−−−−…」
結構な魔力を持っていかれこれ以上はキツイと思った瞬間、祖父に「もう良いぞ」と言われ魔力を注ぐのを止めた。
「ノアは波長が合わず全く注げなかったが...リア、お主は凄いの!余す事無く注げたようじゃ」
そう言って抱き上げ頬ずりしてきた。
「儂の魔力は半分も入らずいつも魔導石側から拒否される感覚すらあったのじゃが、魔導石にはやはり意思のような物があるのかのぅ?」
そう言った祖父の言葉に輝きを増したように感じたのは気のせいだろうか?
「リアよ。これから寝る前に毎日此処に来て魔導石に魔力を注いでくれんか?」
「うん♪この子はリアが育てゆ!」
祖父の願いに私が答えると
「この子?相変わらず独特の感性をしとるの」
と言って祖父は目を細めた。
...後日私が魔導石呼びした意味を祖父は知る事になる。
5歳の誕生日を迎え父が公言した通り今日から母屋から出る時や客人を迎える時は男装する事になり、早速着させられ自慢の髪もバッサリ逝かれた。
傷心する事も出来ず叔父からの剣術指南も始まり、嘆く暇もなくお勉強の時間もこなして疲れ果てながら祖父の部屋にたどり着く。
「大丈夫かの〜」
心配そうに駆け寄り抱き寄せながら
「今夜は止めておくかの?」
と言う祖父に「大丈夫、今夜もやる」
と告げ祖父と共に魔導石の元へ行く。
「キーーーンンンーーー−−−‥」
流石に疲れているのでいつもの半分で止めると『...イデス』と声が聞こえたような?
「何か言ったかの?」そう祖父が言うと『スクナイデス』と今度はハッキリ聞こえた!
祖父と私が魔導石を見つめていると『コレダケデスカ?』と聞いてきた。
「今日は疲れててもう魔力があまりないの」と伝えると
『ワカリマシタ。明日以降ノ供給量二変化ハ有リマスカ?』と聞いてきた。
祖父が「儂の魔力でも良いか?」と聞くと
『不可、濁ル、初期ノ歪ミ未廃棄、不能』
すっごい拒絶感…
「何か儂の魔力に老廃物でも混じっとるみたいな言われ方じゃの」
項垂れる祖父の頭をナデナデしてると
『老人、不味、低養分、濁有、幼女、美味、高養分、清冽』
何か怖い事を言い出した。取り敢えず
「明日から暫く今日から始めた事に慣れるまで、今日と同じで貴方に与える魔力は何時もより少ないと思うけど大丈夫?」
と聞くと魔導石は『我慢シマス。後、魔導石チガウ、精霊魔導核デス』と言ってきた。
...精霊魔導核?と疑問に思っていると祖父が
「精霊魔導核?石ではなく...?」と呟く。
「お祖父様?」私の呼び掛けに祖父は
「魔導石に魔力を貯める事で意思が宿った場合、それは人工精霊魔導石と呼ばれる...じゃが」
一息入れ祖父は言葉を続けた。
「精霊魔導核は核石に特定の属性を持つ精霊を封じるか、気の遠くなる程の月日を過ごした精霊が核化した物を言うのじゃが...前者には魔力は注げず自然回復させるしか無く、後者はそもそも人が扱えぬ...いや、精霊そのものが由としないであろう」
祖父の言葉に
『我、記憶、喪失、原因、魔力過疎、推定』
と精霊魔導核が言って来た。
「精霊がおのが力を使い切る事象など起きうるのか?歴史上の記録で思い当たる節は無いのう」
そんな祖父に私は「お祖父様...眠い」と限界である事を伝えると
「スマン!せめて壁抜けしてから寝ておくれ!」
と言いながら私を抱きかかえ、慌てて私の部屋に駆け込んだ。
作中で対外的にと言ってますが貴族社会のみで市井に公布されるのは15歳です。
セシルの場合
5歳・・王族と一部の内政にまつわる公家
10歳・・伯爵家以上の男性貴族及び子爵家以下の当主のみ
15歳・・公国全土に公布
こんな感じです。
因みに成人は20歳です。
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