9話 配下たちの思惑
「カイン様」「サクヤか...どうだ?」「予想通りの結果でした」「そうか」
待ち合わせ場所で合流したカーウィン殿と収集した情報を照らし合わすも、結果は同じだった。
「結局、ニス湖に来る前から得ていた情報と変わらずですか」
「それも含めて予想通りなんだろう?」「はい♪カイン様♪」
私の呟きに皮肉を込めてくる上官をゆとりを持って受け流す。
「何も得るものは有りませんでしたが、仕方ありません。セシル様の元へと向かいましょうか」
「ワザとやっているのか?」「先程クレアが申し、セシル様が承認なさっておりましたので」
提案とも、独り言とも取れるよう言った私の物言いに、カーウィン殿が挑発めいた口調で問いかけてきた。それに応じ、私も同様に答える。
「良いだろう。初見での見栄...どこまで張れるか、お手並み拝見といこうか」
そう言ってカーウィン殿は大精霊様の元へと足を向けた。
(あの緩みきった環境で唯一気を抜かない男...)
私の演技を見抜いた上で必要な情報を与え、更に私を試そうとする...
「一筋縄ではいかないわね」
カーウィン殿の背を俔いながら、どうやって(諜報部に)食い込もうか...
私は思案しながら彼の後に続いた。
(サクヤ=リノ=エルフヴェール...出会ったのがヴェルノア様亡き後だったのは、不幸中の幸いかもしれんな)
背中に彼女の気配を感じながら、ふとそんな考えが頭をよぎった。
(覚悟が決まっていなければ...サクヤは疎か軍学校でも、賢しいだけの痴れ者に遅れを取っていたかも知れない)
だが実際に悪意を感じその対応に追われる事で身に付いた能力は、所詮対処療法でしかなかったとあの日に知った。
主君と奉じた方から今際の際に聞いた諜報部の存在。
そこで得た、真なる忠義に殉ずる者たちから託された想い。
それらが無ければ今頃、エルフ家の思うままにされていただろう。
何も知らなければ、それも悪く無かったかもしれないが...
(ヴェルノア様の本懐と姫殿下の本懐が重なった今、私の本懐は忠義そのものとなった)
サクヤの視線に傀儡とならずに済んだ幸運に感謝しつつ、私は大精霊様の元へ向かうべく足を早めた。
「早かったのう。その様子ではあまり芳しく無かったのであろ?」
「はい。申し訳「良い良い。どうせ想定の範囲内じゃろ?」...その通りで御座います」
「ならここに居ても仕方あるまい。さっさと湖畔へ向かうのじゃ」「ハッ!」
律儀に報告して来たカーウィンとサクヤに、我はセシルの元へ急ぐよう求めると
「リア様?「様を付けるでない!我はお主の娘であろうが!」へ、へ〜い」
アレクの奴め...我を敬う気持ちは分かるが、周囲の眼がある事を忘れてもらっては困る。
「そう思うならリアも言葉遣い直してくれよぅ」
「思った事が口に出てますぜぃ♪」「お主は黙っておれ!」「へいへい」
小声で発したつもりが聞こえてしまったのだろう。じゃが
アレクが萎縮しているのに対して、マルバスは大分(精霊に)慣れてきたようじゃ...
「それよりマルバスよ。例のモノは無事運んできたのかぇ?」「.........」
「き・た・の・か・ぇ?」
「来ました!来ましたから!その威圧止めて下さい!」
ちと慣れすぎているようなので、お灸を据えてやった。
「ひでぇ...黙ってろって言ったくせにっ!ひぃいいっ!!!」
反省が足りてないようなのでオカワリしてやった。
「マルバス。今のは余計な事は言わず聞かれた事には答えよと、そう言われていたのだぞ」
「わっかんねよ〜そんな事...?!いや!今、理解しました!」
カーウィンの助言に感謝しないマルバスに再教育を施すと、マルバスは心身共に凍りつかせた。そんな中アレクが申し訳なさそうに口を開く。
「湖畔の、どの辺りに向けて出立しましょうか?」
どうやら先程のやり取りで、近くに居た人間たちにも悪寒が走ったようじゃ。
サクヤが周りを見ながらキョロキョロしており...
「湖畔の途中までは街道を行くが良い。進行方向を変えるのは、周りに人影が無くなってからじゃ」
多少申し訳なく思いながら我が言うと、アレクは小さく返事をしてそそくさと行動に移した。
そんなアレクたちを見ながら
「とりあえずどの辺りかだけでも教えて貰えますかい?」
マルバスが野営場所を聞いてきたのでザックリと伝えると
「ザックリ過ぎませんかぃ?!」
「仕方なかろう!あやつも移動中なんじゃぞ?!」
うへぇ〜...とでも言いたげな顔をしてマルバスがコチラを見てくるが、コレばかりはどうしようもない。
結局途中まで付いて来ることでセシルとのやり取りを待ち、ある程度の場所が決まってからマルバスは例のモノの隠し場所へと向かった。
「ふいぃ〜...エラい目に合ったぜぇ」
「どうせまたチョケおったんじゃろ?」
「そりゃねぇよ親方!?」
帰って来たマルバスにカマをかけたら、相変わらずの結果に収まっていたようだ。
そんな事より俺は何処に向かえば良いかが気になって仕方ねぇ。
「で、何処に向かえばええんじゃ?」
「まだ早いっすよ。日が沈んでからっすね」
「別に構わんじゃろ?どうせ街道から外れとるんじゃ」
「親方ぁ...この装甲車って奴、砂埃が目立つんですって!」
「むぅ...仕方ないのぅ」「それよりアレ、やっちまうっすよ!」
俺が嬢ちゃんとこに行こうと場所を聞いたら、マルバスの野郎はまだ早いって言いやがる。
しかも目立つからダメときた。その上でアレを完成させたいらしい。
「まぁ実験体も居るし、何とかならぁな」
「そうっすね」「「酷すぎませんかねぇ!!」」
喚く二柱を余所に、俺は魔具を完成させるべく作業を始めた。
「今夜は、少し冷えるみたいですね」
精神生命体である悪魔族には、およそ五感というものが無い。
宿主を得る事で一時的に五感を得る事はあるが、基本的に自らに適する肉体を持たない我等は五感を感じ得ない。
だが水面を見て水蒸気が発生するかしないかで、おおよそ(日中と)の気温差を知る位は出来る。
「今夜は、あまり月が綺麗ではありませんね」
そんな事を思いながら、湖に我が分体となる媒体を浮かべる。
「往け!」
私の意に従いソレは幻獣となるべく周りに在る、ありとあらゆるモノを取り込んでいく...
やがてソレは小さな丘に長い首のようなモノが付いた、よく分からない物体となる。
「沈め!」
まだ幻影を纏ってない幻獣モドキが湖に沈んでいき、やがて見えなくなる。
「今夜も、人間どもはやって来るのかしら?」
あれだけの恐怖を得る為に、下手をすれば心的外傷を負うことになるのに...
私は人が持つ不可解さが、未だに理解出来ない。まぁしたいとも思わないのだが。
「だから私は【怠惰を貪る者】と名付けられたんだったなぁ」
宵闇に沈む太陽と昇り始めた月を交互に眺めてから、最後に湖畔を眺め私は気配を消した。
三歳「伺う、窺う、覗う、諜う、どれもシックリ来ないんだよなぁ」
セシル「またなの?!ここは学校じゃないのよ?」
クレア「国語の授業みたいですねぇ」
サクヤ「...で使ったのが『俔う』ですか。普段使わない漢検1級の文字じゃないですか」
三歳「でも忍者って意味合いがあるから、サクヤにはピッタリだろ?」
サクヤ「諜報員を勝手に忍者扱いしないで下さい!」
リア「他に気になる事はないのかぇ?」
セシル&サクヤ「???」
三歳「まぁ今まで無かったのが、逆にスゲェんじゃねぇか?」
クレア「(セシルの方を見て)!?続きます♪」
セシル「???」
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