3話 二人の騎士の誓い〜再び〜 前編
私には、近従騎士が二人居る。
と言っても準騎士であるが...
これは昔からの慣習で、貴族でない者を側近に据える場合....1代限りの、且つ立場の劣る者として扱われても(不平不満を言わない事を暗黙の了解とする)歯牙にしない、克つ事を由とするのが当たり前とされた時の名残り...
当然今でもそうなのだが、昔はそこに配慮があった。
だか今は...
「アヴェイル!」
彼は呼ばれた方に向き直り、大して気にも止めず「何だ?」と聞き返す。
「貴様!準騎士の分際で口の聞き方を知らんのか?!」
どこの馬の骨か分からないが、小物がまた自尊心を守りたいだけで爵位は上でも立場は下だと分からず馬鹿が無知を晒す。もっとも嫡子でも無ければ当主でもない、騎士の称号すら無い者が偉そうにしている事自体が滑稽なのだが...
「いや...平民でないだけで騎士ですらない君に、そんな風に言われる筋合いは無い...あっ!?ひょっとして家督を継ぐのが決まってる?だとしても現時点で継いで無い無印の君が、準騎士にその態度は...ないんじゃないかな?」
「!?貴様!...」「貴様?そろそろ聞き捨てならなくなってきたかな?」「...っく!」
無印(貴族由来の子への蔑称)呼ばわりされ頭に来るも、扱き下ろそうとした相手が称号持ちである事実に結局なすすべ無く無様を晒し下級貴族は逃げるように立ち去っていった...それよりも
「アヴェイル?あなた...普通の会話も出来たのね」
「おじょ!...殿下、それはあまりにも...」
アヴェイルのまともな姿に驚きすぎて公子である事すら忘れて呼びかけた私に、アヴェイルも一瞬素に戻りそうになりながらも踏み留まる。
実際には既に私はアヴェイルが脳筋ではない事を知っているのだが...
「お話したい事があります」
突然アヴェイルの真面目な物言いに、いや、変化に私は...
「脳筋って治るの?!」
思わず辛辣な態度を取ってしまい...
「シェリア様の事でお話があります。お人払いもお願いしたく...」
アヴェイルは素行を崩さなかった。驚きながらも
「わかったわ。夕食後、私の部屋に来なさい」「ハッ!」
私はアヴェイルに告げ、その時を待った。
自室でクレアの入れたお茶を飲みながら、食休みをして待っていると
...コン、コン...
「アヴェイルです」「入りなさい」「ハッ!」
予定通りアヴェイルが入室しクレアが控える。すると
「セシル様」
アヴェイルが私をお嬢と呼ばずに名前で呼びクレアを見る。
「クレア、外して下さい」「!?良いのですか?」「扉の前で控えてなさい」「分かりました」
例え腹心であっても未婚の、しかも公女と男性が一時でも同じ部屋で過ごす...貴族なら絶対的な禁忌である。それほどにアヴェイルが今から私に語ろうとしている事は...
「クレア、ありがとうございます」「...」
アヴェイルの謝意にクレアは会釈よりやや深く頭を下げ、部屋を出て扉から離れた。
「改めまして...正当なる巫女姫、聖女セシル様に剣だけでなく我が身も捧げたく存じます」
クレアが部屋を出たのを確認し、アヴェイルは私の前で跪き頭を下げる。
「シェリア母様から、全て聞いたのですね」
「はい。ですが時間が無く作法までは...」
私の言葉にアヴェイルは泣きながら言葉を詰まらせる。
私の母が殺された日を思い出したのだろう。
「作法なら私が聞いているから大丈夫よ」「はい。シェリア様よりそう伺っております」
私の言葉に頷き同意を示すアヴェイルに、私は鍵を差し出すように伝えると
「ここに...」と胸元からネックレス状に擬態した鍵を首から外して私に差し出す。
差し出された鍵を両手で握りしめ、私は聖女としての力を使う。
「接続せよ」
私の呼びかけに輝きの鍵が共鳴しだす。その状態でアヴェイルの手のひらに鍵を押し付け、私の手のひらを合わせるようにしてそのまま手を握る。
「我が呼びかけに答え混じり合うその力を我が名と共に解放せよ!」
聖女の呪と今までアヴェイルが込めてきた精霊との繋がりを混ぜ合わせ一つにする事で...
「出来た...!」「これは...凄い!!」
光の大剣が現れた。
まるで流星のような輝きで、その気になればどこまでも伸ばせそうな...本当に伸びた。
「うおわぁ!?」
アヴェイルが制動に成功する。
「ありがとう」「いえ、運良く(伸びる)気配を感じ取れました」「そう...」
私は...おそらくアヴェイルも気付いたようだ。だが一つ気になる。気になるが...
「(光の大剣を)収めましょうか」「はい」
そう言ってまずは輝きの鍵が元に戻るのを確認した。
「次に、一人でも出来るか試してみましょうか」「はい」
アヴェイルは私の言葉に返事をして私の手を握ったまま力を解放しようとして
「待ちなさい!」「はい?!」「手を離しなさい」「...はい」
...男ってどうして...
私も前世で男なのだが何故か理解したいと思わなくなった。
女になってみると分かるのだが...視線とか気配とか...要するに下心が嫌なのだ。
そんな事を思いながらアヴェイルを見ていると
輝きの小剣が現れた。
「しょぼくない?」
私がそう呟いた瞬間......!
ドサッ...
アヴェイルが倒れた。どうやら魔力枯渇になったようで...
「さ、支えが、欲しかっただけ...」
パタッ...
落ちた...
私は扉の前に立ち
「クレア?」...トトッ!「はい?」「カーウィンを呼んできて」「いらっしゃいます」
私の言い付けを守り聞き耳など立てずに控えていたクレアを称賛しようと思ったら
「違いますよ」「何が」「いいえ、何でもございません」「違わんだろう」
予想通りらしいと私は思い直した。
「カーウィン、アヴェイルを部屋に運んだら私の部屋に戻って来て欲しいのだけど...」
「お体の方は大丈夫なのですか?」
私の言葉にカーウィンが気遣ってくれるが「まだまだ大丈夫よ♪」と少しだけ愛嬌を魅せるとカーウィンが耳まで赤くなる。
(面白い)と思いながら私はクレアを伴い部屋に戻る。
クレアに冷めたお茶を入れ直してもらいながら、カーウィンがアヴェイルを担ぎ部屋を出ていくのを眺めていると
「お嬢様って昔からカーウィンの事好きなんですね」
「.........はぃ?!」「違うんですか?」「違うわよ?!」「...へぇ〜〜〜」
クレアが何か勘違いした事を言い、勘違いしたまま締め括ろうとした。私は
「好感が持てるって事よ!?好きって事とは違うからね?!」
クレアの勘違いを正そうとするも「そうなんですね♪」と笑顔のままでクレアは答えた。
「だから違うって言ってるでしょ〜〜〜〜」
アヴェイルに力の解放を行った事よりクレアの方が...
...コン、コン...
疲れると思いながら、カーウィンのノックを聞いた。
セシル「ねぇ、前書きは?」
三歳「毎回は要らないと思わん?」
リア「ソコの煎餅取ってくれぃ」
セシル、三歳「自由か!?」
クレア「リア様、原作者のオヤツだから取れませんよ」
リア「食べてみたいのう」
セシル「また今度ね」
三歳「ソレ、俺が買って俺が食えないヤツ」
リア「腹が膨れんから要らん!」
クレア「皆我儘ですね」
一同「最後はコレか」
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