2話 辛辣な挨拶より陰湿な陰口の方がキツイ
三歳「前話でやるトコを最初に持って来た...だが」
セシル「残り半分でしょ?」
リア「先に前話書くと後で困るぞぇ」
クレア「いつもの事です♪」
三歳「お前...ココだと辛辣だな」
クレア「始まります♪」
「ふん...コレがドール家の容姿か...軟弱そうな...」
僕を見透かしていると言いたそうなフンフ家と同類にカーウィンが立ちはだかり威圧しながら見下ろす。
「...ちっ!」
カーウィンの一瞥に耐えられなかったのだろう。端役の同級生は、嫉みの視線を向けながら立ち去る。
「なんと愚昧な...」「かまう必要はない」「ハッ!」
不毛な睨み合いをするカーウィンを窘めつつ、目的の場所に向かう。
アヴェイルが教室の扉を開け私が入室した途端、教室内のざわつきが大きくなり...
「ドール家はお守りが居ないと扉一つ開けれないのか」
ここでも揶揄が飛びクスクスと笑う者も...いや大半がそうみたいだが...
そんな中から一人の女子生徒がやって来て
「はじめまして♪セシル様」と言いながら周りに聞こえぬよう近付き小声で「巫女様」と私を呼び、離れてから
「私はサクヤって言います。よろしくね♪」
と、この学校本来の話し方を入学初日で行ってきた。この軍学校の事を騎士軍学校と呼ぶのは貴族側だけで、市井の者は軍学校と呼び騎士ではなく公国軍人になる事を目指して入ってくる。
当然貴族も目的は軍に入る上で必要な知識と技術を学ぶ事の筈なのだが...今は子飼い集めの場と化している。だが名目上は技能習得の場で、立場も等しく同じとされている。なので貴族の常識を知らない平民の為、また平民の実態を貴族側は学ぶ為、言葉遣いは市井に依るものとされている。だから
「はじめましてサクヤ、こちらこそよろしく♪」
僕もソレに倣いにこやかに...だけど握手を求めた手に力を込め引き寄せ「目的は?」と小声で手短に聞き返し離れる。
「良ければ式が終わった後、何処かでお話しをしたいかな?って...」
「なら帰る前に僕の家に寄っていくかい?君が見たい物があるかもしれないよ」
「わぁ嬉しい!では門の前でお待ちしていますね♪」
そんなやり取りをして荷物を机に置き、私たちは貴族しか居ない教室を出て廊下に控えていた準騎士を伴い入学式場に向かう。
因みに準騎士二人は本来なら式場で来賓席後ろにある従者用の場に待機するのだが...来賓席が空席の為、共におかしな空気を纏っている。
・・・・・・・長ったらしい式は割愛・・・・・・・
「別に見たくないでしょ?」『誰に言っとるんじゃ?』
とりあえずリアは無視して『ヤレヤレ』教室に戻る。
「皆様はじめまして♪」
貴族クラスだと言うのは当然教師側なら把握している事もあり、やや緊張した物言いが目に付く。
「私はこれから五年間貴方がたのクラスを担当する「コレも長いし式同様割愛しよう」...ちょ〜っと待とうか!?」
前話の轍を踏まない為にも僕は次の行動に移る。
(えっ?!私って名無しのままじゃないよね!?)
教室でライナ先生の自己紹介、生徒の自己紹介、明日必要な物と各書類(時間割等)の配布を終えて僕はサクヤと合流し帰路に着く。
(「さっきの見て予想済みよ」...サクヤ談)
そんなサクヤの想いを受けて、私は前話の伏線を回収する為の回想を公爵家に着くまでに済まそうと思う。
表向きは僕とサクヤが馬車内で談笑しているという事で...
「...隠れてもムダじゃ。出てくるが良い」
突然リアがゲビックに向かって言い出した。
「俺は隠れてねぇぞ?」「お主に言っとらん」「???」
私は変形機構を模索する為の模型を作製しながらリアの視線の先に居るゲビックの後ろに在る気配を察知した。
二人の視線を感じたのかそこの空間が歪み、一人の男が現れた...が
「ソレ、何スカ?」「三枚羽を固定して一本にしたり、折り畳んだ時はジェット気流を生む為の推進力として活用出来るように円筒状にした機構内に収まった状態で回転...」
「なんで皆驚かないんですかぁ!?」
クレアの言葉に我に返った私は「アナタ誰?」と尋ねる。
するといきなり現れた男より先にリアが
「シャドウ・イーター...お主らが【悪魔族】と呼ぶ者たちじゃ」
「エライ懐かしい呼び名っスね」
リアの言葉に答える悪魔族...
「ねぇ?どうしてココに来たの?」
母と祖父を殺した悪魔族と聞いて私は魔力を練る。
「止めよセシル!同族なら全て報復対象とするのかぇ?!」
リアの言葉に納得出来ない(頭に血が昇ってる)私は全てを凍らせるつもりで魔術を解き放つ!
「聴け!水の精霊よ!大気を凍らす力を顕現せよ!!」
目の前に居た悪魔族は一瞬で凍りつくもニヤリと笑う。凍りついたままで!!だが
「反撃は許さんぞぇ」
リアの言葉に悪魔族が硬直する。
いつの間に背後に回ったのか分からなかったが悪魔族は真にリアを恐れているようで
「だ、大精霊様にそんな事言われて動ける者なんて...居ませんぜ」
悪魔族は両手を上げて(大精霊に)降参した。
「...つまりアナタはそのアガレスって悪魔族に命令されて私の所に来たのね?」
リアに脅され洗いざらい喋った悪魔族に、私は再度確認し次の指示を与える。
「マルバス、アナタそのアガレスの言う事聞くフリして暫く泳がせなさい。それと改めて聞くけど...」
私は声のトーンを落とし睨めつけながら問う。
「私の家族に手を出したのは...「知らねッス!でもアガレスでもないと思うッス!」...そう」
何故かマルバスはリアに対するのと同じ位私に敬意?を向けている気がする。
「ソレは身に宿る魔力が同質じゃからよ。考えてみぃ?誰が魔導核に魔力を注ぎ続けたか」
私はリアの言葉に納得する。つまり気配が同じなのだろう。
「あとは...マルバスの喰い方のせいでもあるの」
リアの意味深な言葉に私が首を傾げていると、リアはゲビックとマルバスを指差し
「(マルバスが)楽しんでおるじゃろ?アヤツが喰うのは喜怒哀楽の【喜と楽】じゃ」
「えっ!?」驚く私を見て更にリアは続ける。
「最初に言ったじゃろ?シャドウ・イーターじゃと」
リアのお陰で悪魔族の在り方を理解した私は
「マルバス!アナタをゲビックの助手に任命します!」
私はそう宣言し、ついでに同質の悪魔族も集めるよう命じた。
「コレで遅々として進まなかった開発が捗りそうだわ♪」
「...なんか...嬉しくねぇ」
喜ぶ私を見て何故か喜びの感情を拒否するマルバス...
その辺りまで思い出した所で...
「着いたわ」
私は馬車を降りサクヤにも降りるよう促し...
「ここで!...(前話の終わりに)繋がる訳よ!」
天を見上げ紅潮する。そんな私を見てサクヤは
「なんか...思ってた人と違った」と率直な意見を漏らした。
残念そうな視線を私に向けながら言うサクヤに
「辛辣な挨拶カマしてくる盆暗どもより(味方からの)陰湿な陰口の方がキツイ」
と、私が不満を口にする。そうしたら
「悪意のある解釈しないで下さい!そんなつもり、ありませんから」
サクヤが上手くまとめてくれた。
セシル「ナイス!三歳」
三歳「上手くまとまったな♪」
サクヤ「陰謀です!私!担がれました!」
リア「ここに出てきたら利用されるぞぇ」
サクヤ「...失礼(永久に)します」
クレア「そうは問屋がおろさない♪」
一同「...(コイツが地味に一番怖いんだよな)...」
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