12話 交差する疑惑
騎士軍学校が作中に出てくるまで色々お待ち下さい。
壮絶な親子喧嘩に没頭していた私たちを取り囲んだ騎士団の中から、一人の騎士が出てきて
「フェルナンド公爵閣下、親族...いや直系公族殺しの容疑で身柄を拘束させて頂きます!」
「...閣下だと」
家柄だけの坊っちゃんが、止せばいいのに功を焦って勇み足…
得意げに出て来た騎士が持つ、家紋入の剣柄を見てから父は
「五星家か...12公家の小倅は家格も学べず、騎士軍学校を出れたのか」
口調も眼と同様に蔑み下す。
「!?ダズンではない!!今は十二星家である!不遜であるぞ!」
旧名呼びされ激昂する騎士に父は
「不遜?その言葉は汝に与えられる言葉であろう?本家に仇なす忘恩極みし者が五星家から出たと知れば、フンフ家当主は何を思うかな?」
「本家が「止めい!!」...?!」
声がした方を振り向いた愚かな騎士が
「クヴェンダル卿!私に代わって「クドい!貴様不敬にもほどがあるぞ!」...っえ?!」
そう言ってクヴェンダル公は出世とは無縁になった騎士を押し退け、父に向かい恭しく儀礼する。
「我が公国の総主家当主フェルナンド太公におかれましては...と言いたい所ですが、残念ながら今、貴公には公族殺しの嫌疑がかかっております。丁重に扱う故...大人しく御同行願えますかな?」
七星家当主...クヴェンダルもさっきの五星家令息と変わらぬ性質を漏らしながら父を睨める。
「...少しお待ち「構わん」...はい?!」
私が家族殺しの嫌疑を晴らそうとすると父に止められた。
「ここに居る者だけに伝えても真偽を証明は出来ぬ」
父の言葉に得心を得た私は手法を変え、あらましだけでもクヴェンダルに報告しようとすると
「カーウィンよ...先程の宣誓を認める故、お前がセシルに代わって報告せよ」
「...!?有難き御言葉!貴方様に感謝を!!」
父の言葉にカーウィンが機転を利かして対応する。
...く、悔しい...
私は父にある種の嫉妬を覚えながら、ふとある考えが脳裏をよぎる...それをカーウィンに伝えようとした瞬間...
『動きを止めよ!仮面はどうした?!』
念話に呼び止められ辺りを見回すと、ランシェの隣に居た!
『お主...先程父の威圧に負け、前世の記憶事吹き飛ばされ...男装していた自分の事すら忘れておるじゃろ?』
ホムンクルスの言葉に...先程お付きの二人が宣誓した事で、我を忘れて女になっていたと今更ながらに知る。それと
...さっきからランシェが慌てふためきながら、私とソックリな顔で髪の伸びた耳長族と私を見比べているのに気付いたが...今は説明出来ない。
それよりも男性である事を思いだした僕は、カーウィンの報告が終わるのを
七星家当主の前で待つ。
「...以上になります」カーウィンの挑発的な報告に父の言葉が関係すると僕が口を添える事で解決する。
「そのような事が...承知致しました」
(カーウィン如きに)...とでも言いたげな目を私に隠す事無く、クヴェンダルは苛立ち通常の礼をして立ち去った。
縄には付かず取り囲まれるだけで連行される父と、それに追従する騎士団を見送りながら一息吐く。...が
「お母様...」
ランシェの言葉に、私とアヴェイルは引き寄せられるように母の前に行き膝を突く。
「...お母様」
私は激情に任せ父を追い...思えば祖父の死に目にも顔を合わせていない。
震える手で横たわる母の...血に濡れた...まだ少し熱の残る手を取り...
「「お母さまぁぁぁぁぁ!!!!!ーーーーー……」」
気付けば私は母に覆い被さり、ランシェが私の...母の手を握る私の手を上から握りしめ...
私の背中に顔を埋めながら...私同様、号泣した。
その後、査問審議官立会の元...
証拠となる物が列挙されたが...一方的に父が冤罪にされるような事はなかった。
祖父殺害の剣(父の儀礼用の剣)...悪魔族の手と思しき手に握られていた
母殺害の剣(一般兵下肢の剣)...公爵家周辺見回り中の衛兵の物と思われる
父の剣(普段使いの剣)...悪魔族の返り血のみ検出
その他祖父の死因は斬撃によるものでなく突起物であると断定
切り飛ばされた悪魔族の手は飛び散る悪魔族の血と同様の状態になった
母殺害に用いられた剣の持ち主が公爵家と母の殺害された坑道前との間にある側道で(遺体が)発見された事
等...父が手を下したとは思えない状況に合わせ、アヴェイルとカーウィンの二人が聞いた祖父と母の証言も加わった。
...だが四大公家筆頭ノースヴェール家当主レイモンド=ジル=ノースヴェールは
「これだけの事件が起きて収拾も12公家の手を借りる始末、総主家とは思えぬ失態ですな。フェルナンド太公?」
ここぞとばかりに父に詰め寄る。父は
「望む罪を与えれば良かろう。世間を惑わさぬ程度に、これまでしてきたようにな!」
怒気に侮蔑を込めて吐き捨てた。だが簒奪を目論む者は愉悦の表情を隠しもせず
「なら!クランドール家を一時総主家とせず、替わりに四大公家が代行するものとし!軍部に於いてはフェルナンド公を大将から中将へ降格とする!」
今にも高笑いしだしそうな声音で父へ判決を下した。
降格した父は第1大隊から新設された第8大隊に任命された。
腹が立つが空いた第1大隊にレイモンドが大将として収まり、当然のように総主代行にも就任した。
「「お祖父様...」」「お義父様」
私とランシェ、叔父(母の兄)...本来ならここに父も参列...いや、喪主として葬儀を執り行うのが当たり前なのだが...査問審議会にとらわれている為、此処に居ない。
親族で無いためクランドール公爵家に仕える者は後ろに控えているが...時折風にのって啜り泣く声がしてくる。
家人の方を向きながら私は言った。涙を堪えて
「愛されているわね?公爵家...」
ランシェに微笑んだ。
ランシェも後ろの家臣を見て笑顔で「はい♪」と涙で濡れた眼で答えた。
この後、祖父のお骨上げに間に合うよう母の火葬も執り行われた。
後に国葬は総主家であるにも関わらず行われない事が...十二星家議会で議決される事を、まだ私たちは知らない。
下す...評価を下すの「下す」と同じ意味です。
家人...「かじん」と読めば主人以外の家族「けにん」と読めば家臣、家来、使用人といった意味になります。
クランディアは土葬でなく火葬です。
次回『新章突入!』…の前に…
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