11話 忠節からなる忠義と託されし忠義、その想いは...
俺は今までに感じた事のない情動にかられながら、血の繋がっている...
それでいて、全く愛情の欠片も感じた事のない他人のような父に殺意を抱いていた。
今も目の前で何かを追うように走る父の背を見ても、なんの郷愁の念も抱かない。
...が突然情無き父が立ち止まる。だが俺は勢いに任せそのまま剣を振るおうとすると
キ゚イ゙ィィィィーーン゙ンンンン‐‐‐
振り向きながら放った父の剣閃に、弾かれるどころか後退してしまい...しかも
キィィーーンッ!ギャーーン゙ッ!!
続けて二回打ち込まれ、更に大きく後退してしまい坑道の外に出てしまった。
ゆっくりとこちらに歩みよる...悪意にも似た殺意を向ける父...
それを見た俺は
「貴様に人の魂はないのかぁーーー!!!!」
剣よりも言葉の刃をぶつけた。眼に、これまでにない憎悪を宿して...だが
「貴様のような悪魔族の元締めに言われる筋合いは無い!!!」
眼に宿した以上の感情に、裏打ちされたような信じられない言葉を...父は私に叩きつけた。
「ふん!私の言葉に悪意を散らされたか!悪意の世界から来た者よ!!」
私を見る眼が少しだけ変わった父に、改めて問う。
「どういう事?悪魔族と(日本が)どんな関係があるって言うの!?お祖父様とお母様を手に掛ける程の事なの!?答えなさいよ!!!」
私の疑問に父が答える前にアヴェイルが先に口を開く。
「待ってくれお嬢!シェリア様は悪魔族に殺された!さっきシェリア様から聞いたんだ!!」
えっ!!!
驚きながら首だけ少し傾け、アヴェイルをチラ見すると...
「本当です!私もヴェルノア様から聞きました!しかも悪魔族に襲われた所にフェルナンド様が駆けつけたとも!」
カーウィンまでそう証言する。
「お姉様...」
カーウィンと一緒にランシェも着いてきたみたいだ。
真実が告げられた事でその場が静まりかえった...が、父が口を開き言い放った言葉は更に衝撃的だった。
「セシルよ。自作自演ではないのか?」
父の言葉の意味が分からない。おそらく皆もそうだろう。父は尚も続けて
「日本人は悪魔族の元締めだ。貴様が手引したのではないのか?」
...余りに唐突で、考えた事もない事柄に頭が追いつかない。
「アヴェイル、カーウィン、その者を捕らえよ」
父から出た信じられない言葉に身じろぎしながら、私は振り返り、父を背にして、二人を見てしまった。
同時に歩み寄って来る二人
(嘘でしょ!?)
アヴェイルが私に右手を向け、伸ばして来て
(嫌ッ!止めて!!)
カーウィンが私に左手を向け、伸ばして来て
(怖くなって目を固く閉じ俯いてしまう!)
そんな私の横を二人は通り過ぎ
「「それは出来ません!!」」
と声を揃えて二人は父に言い放った!そんな二人に私はもう一度振り返り、その横顔を視る。
アヴェイルが、先程伸ばした右手で私と父を遮るように前に出し
「我が剣はセシル=クランドール様だけに捧げます!」
カーウィンが、先程伸ばした左手で私と父を遮るように前に出す。
「我が剣もセシル=クランドール様だけに捧げます!」
驚く父に一瞥し、二人は私の前に傅く。先にアヴェイルから口上を述べるようだ。
剣の柄を私に差し出し、普段から肌身離さず携えていた鍵を添え...
「我が魂の根源、輝きの鍵をこの剣と共にセシル=クランドール様に捧げん!願わくば我を一振りの剣とし、貴方様の前に立ちはだかる者を等しく払う栄誉をここに授け給わん事を願う!」
私はアヴェイルの願いを聞き入れ家名を与える事を宣言する。
アヴェイルの手から剣と鍵を受け取り剣の腹を右肩に当てた。
「その願い、セシル=リア=クランドールの名に於いて、叶え『クラン』の号を与えましょう」
言い終えると共にアヴェイルの掲げた両手に剣を置き、鍵を首に掛け
「アヴェイル=クラン...良しなに」と終の言葉を添える。
私の言葉にアヴェイルは控え、続いてカーウィンが口上を述べる。
「我が魂の根源、静寂の鍵をこの剣と共にセシル=クランドール様に捧げん!願わくば我を一帖の盾とし、貴方様に危害を加えんとする不遜な者から等しく護る栄誉をここに授け給わん事を願う!」
私はカーウィンの願いを聞き入れ家名を与える事を宣言する。
カーウィンの手から剣と鍵を受け取り剣の腹を右肩に当てた。
「その願い、セシル=リア=クランドールの名に於いて、叶え『ドール』の号を与えましょう」
言い終えると共にカーウィンの掲げた両手に剣を置き、鍵を首に掛け
「カーウィン=ドール...良しなに」と終の言葉を添える。
私の宣言を受け、二人は揃って剣を掲げ拝命の義を述べた。
「「我等はここに!クランドール公国の正式なる勲称を得、名に恥じぬ功績を共にすると身命を賭してここに誓い、不変の忠誠を捧げ奉る!」」
「そなたらに艱難辛苦を、私と共に」
「「我等が全て!御心のままに!」」
謁見の間ではないが公爵家当主たるの父の前で...
公爵家嫡子の私が宣誓したのだ。ある意味宣戦布告にも捉えられないが...
「アヴェイル、カーウィン、それが何を意味するか「「ありのままの意味です!!」」...覚悟はあるか」
宣戦布告となった。勿論私は初めからそのつもりはあったが...
「こっちだ!」「居たぞ!」「囲め!逃がすなよ!」
どうやら騎士団に見つかったようだ。
「命拾いしたな...悪魔族の手先共よ」
この期に及んでまだ言うらしいが...
「それを言うなら、乱心の嫌疑...晴れませんよ?」
「日本人らしい物言いだな。改めて問えそうだ」
父の本気の発言に皮肉を言って見せるも、逆に嫌疑を強める結果になってしまった。
私は心の中で
『出番ですよ!先生!!』
全力で呼んでみた...
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