10話〜11話へ...仕える定めと悪意の行方
アヴェイルとカーウィン含めその他の孤児たちに対して貴族に仕える為の学習を基本的に孤児院は行っています。
作中の様に優先順位の高い貴族から選ぶ権利があって二人はクランドール家に見初められた感じです。
また付いていけないと判断された者も孤児院の運営や子どもの居ない家庭に養子に行く等需要はあり奴隷のような制度は公国にはありません。
「では、この二人でよろしいですか?」
「うむ。それで手続きのほうを頼むぞ」
孤児院の院長に幾ばくかの金貨を手渡し、まだ3歳に満たない男の子二人を譲り受ける。
「アヴェイル、カーウィン。君たち二人は非常に恵まれている。これからの人生を良いものにする為にも、しっかりとお勤めに励むのですよ」
院長の言葉に二人は緊張した面持ちで頷いていた。
「では行こうかの」
そう言って儂は馬車の扉を開ける。すると
「いらっしゃい♪ここに座って良いのよ」
とシェリアが優しく迎えると
「うあぁ♪キレイな馬車!」
そう言ったのはアヴェイルと呼ばれた赤髪の男の子だ。
「お、お邪魔します」
もう一方の青い髪の男の子カーウィンと呼ばれた子は年より落ち着いて見えた。
シェリアの横に陣取ったアヴェイルはシェリアのお腹の子に気付き
「赤ちゃん?」と聞いてきた。シェリアは
「そうよ♪貴方たち、この子が生まれたら守ってあげてね」
と二人を交互に見ながら言った。
「うん!僕たち、その為にお勤めを果たすんだよね?」
アヴェイルの言葉に「あら?もう騎士気取りかしら?」
とシェリアは笑った。この時カーウィンは儂の隣に座り儂の服の端を摘んでおった。
「そっちの子は大人しいわね?」
カーウィンはシェリアに顔を覗き込まれると
「は、恥ずかしいです」
と儂の後ろに頭だけ隠した。
儂とシェリアは顔を見合わせ笑いながら、御者を務めるヤーシスに
「そろそろ頼むわい」
と告げた。
「シェリア様!」「あらあら?また来たの?」
孤児院から公爵家に来て1年ほど経ち、暇がある時は何時でもシェリア様の傍に仕えるように部屋を訪れていた。
騎士見習いになった俺は...出会った時から仕えるべき人は正直この人だとずっと思っていた。だが実際は...
「あんだった!あんだった!」
この訳の分からないチンチクリン乳児が俺の直接の主になるらしい。
今も普通はつかまり立ちがやっとの筈なのに
「あんだった!あんだった!」
意味不明な掛け声を発しながらベビーベッドの柵を握りしめ、スクワットのような事をしている。
「本当にリアは元気ねぇ♪」
そんな呑気な事を言いながら優しい目を娘だけだけでなく、俺にも向け微笑んでくれる...そんな母のように慕っていたシェリア様が...
「シェリアさまぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!!!!!」
公爵家の北側にある坑道の前で、首筋を両手で抑えながら...仰向けに倒れていた。
その後ろで坑道の中に消えた人影ひとつ...
「ぅぅうあああぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!!」
声を上げ、狂気に囚われ、坑道に入った殺人者を追う仕えるべき主よりも...
「シェリア様...」
俺は、生き甲斐とも言える敬愛する主の横に跪き、その顔を拝んだ。
「よく聞け!カーウィン!」
私はヴェルノア様を抱きかかえ最後の言葉を聞き逃さないよう集中する。
「ノアは儂を助けシェリアを逃がす時間を稼ごうと...ゴフッ!?」
「ヴェルノア様!」
焦りながらも実の祖父のように敬愛し、身命を賭して忠義を全うすると決めた方の最後の願いを実行すべく、私は振り返り
「クレア!エマ様を全力で探してきてくれ!!」
眼で人払いせよと訴えながらクレアに望みを託した。
「分かりました!」そう言ってクレアは振り返り「エマ様を大至急!全員行って下さい!!」
言いながら自らも走り出した。一度だけ...コチラを覗き見て...
「人払いは済ませました」
私の言葉に死ぬまで忠誠を尽す主だと定めた主の言葉に私は......
「やれやれ、しつこいですねぇ...」
私は振り返り追撃者を確認すると...その後ろに更なる気配が...
「アレに見られたくはありませんねぇ...それより、ここで消えた方が面白そうだ♪」
最初はグダグダになった計画を諦め、追撃者を屠るつもりでしたが...
我等が拠り所を念じ空間を切り替える。
『さて...観物ですねぇ♪』
閉ざされた空間からその場で起きる出来事を、まるで人間が興行で行っている舞台劇場のように心踊らせながら私は親子の成り行きを見守り続けた。
「ご機嫌ではないか。【誘惑し盗む者】よ」
拠り所へ戻ると同時に私に声をかけてきたのはおそらく
「【言葉を惑わす者】かい?」
「分かっておりながら聞くでない。それより...随分力を増したようだな」
予想通りのアガレルの言葉に
「えぇ!!堪能してきましたとも!!!」
私は恍惚の感情を抑えず更に魅せつける!!!
「蒔いた種が芽吹かないと思っていたら!まさか別の感情から糧を得て!」
人間の舞台劇場のように私は続ける...
「芽を出すどころか!開花するとは!!!至極なり!!!!!!!」
天を仰ぎながらその時を反芻する。
「ふん。忌々しい...我のマネごとで調子に乗りおって」
負け惜しみを言うに留め、自らの力の流出を防ごうとするアガレルに向き直り私は
「そう思われるなら...アナタも出かけてみては如何ですか?」
挑発を試みる。
「クドいわ!」
そう言って自らの拠り所に還っていった。
「連れませんねぇ」
私の口撃は...少し届いたようだ。
「忌々しい!儂の精神を喰らいおって!!」
毒ついても意味は無いが精神保持の為、言葉にしてこれ以上のダメージを防ぐ。
「忌々しい...が、ヤツが喰ろうたであろう力ある人間...奪うのも一興か」
そう一計を案じ直ぐ様、実行に移す。
「【変質者】よ」
儂の呼び出しに応じ別の拠り所から一柱が答える。
「なんだよ?爺さん」
いつものようにやる気なく答えるマルバスに
「前の契約に従い務めを果たせ」
いつものようにコヤツを利用する。
「えぇ〜!?また?もう時効でしょ?!」
いつものように嫌がるコヤツに、いつものように言葉で惑わす。
「我等に人間の法は通じん!馬鹿な事を言わずに行ってくるが良い」
「はいはい、行きますよ。全く...柱使いの荒いこって」
儂に諭され渋々動きだすマルバスを見ながら
「儂は手加減などせんでのう♪待っておれ...人間よ」
まだ見ぬ贄は...如何ほどかのう。
尽くす...公用可能
尽す...公用不可
ですが『尽す』の方が意味合いが強いのでコチラを使いました。
読んで頂きありがとうございます(╹▽╹)
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