表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい~前世はSランク冒険者だったのでこっそり無双します~  作者: 都鳥
帰還

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/219

39 夜のひと騒動

◆登場人物紹介(既出のみ)

・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。神秘魔法で大人の姿などになれる。

・デニス…王都シルディスの西の冒険者ギルドに所属するAランクの先輩冒険者

・ジャスパー…デニスの後輩冒険者で、『樫の木亭』夫婦の一人息子

・ミリア…『樫の木亭』の給仕(ウエイトレス)をしている狐獣人の少女

 ……やってしまった……

 夜中だというのに、全力で叫んでしまった……


 目の前ではジャスパーさんが、またトムさんにひどく怒られている。

 お酒の強い匂いがするので、おそらく酔っていたのだろう。まあ、先ほどの騒ぎでもう酔いは覚めていそうだけれど。

 シェリーさんはごめんなさいねと申し訳なさげに言って、私の肩を抱いてくれている。


「リリアン、すまない…… 俺らの注意が足りなかった……」

「いいえ! ジャスパーさんは知らなかっただけですし。……何かがあったわけではないので…… 大丈夫です……」


 ちょっとだけ嘘をついた。


 バタバタと足音がして、少し息を荒らしたデニスさんがやって来た。店に残って居た常連客が呼びに行ってくれたらしい。

「疲れているところにすまんな。デニス。他に頼れる奴がいなくてな」

「いや、まだ休んではいなかったから大丈夫だ。それでいったい何があったんだ?」



 私もついうっかりしていたのだけど、ここは元々はジャスパーさんの部屋なのだ。彼がこの家を出て行って、空いたこの部屋に私が居候させてもらっている。

 今日、ジャスパーさんは夕飯の後に、店を抜け出して夜の街に出掛けていたらしい。そしてこっそりと帰って来て、昔の様に自分の部屋に入り、ベッドに潜り込んだ……つもりだったのだろう。

 だから私に何かをしようとか、そういうつもりではなかったはずだ、多分。


「でもリリちゃんは女の子なんだから…… 怖かったでしょう? 本当にごめんなさいね……」

 シェリーさんに謝られるのは何度目だろうか…… 逆に申し訳なくも思えてくる。

「俺も説教ばかりで、この部屋の事を言ってなかったしなぁ…… 夕飯の後、こいつが居なくなってて、すっかり言いそびれてた」

 トムさんは頭を掻きながら大きなため息をついた。


「で、どうするんだ?」

「ひとまず明日以降の事は明日考えるが。でもこいつがこんな事しでかしちまったから、リリアンはここで過ごさせる訳にゃいかんだろう。このバカ息子がまた何もしでかさない保証はない。ひとまず今日はどこかで泊まらせてもらえるといいんだが……」

「そうだな。ミリアんとこに行ってみるか……」

 えー、もう遅い時間だからミリアちゃんに申し訳ない。

「いや、私は大丈夫ですからっ」


 焦ってそう言ったが、デニスさんがこっそり耳打ちしてきた。

「お前がここにいると、トムさんもシェリーさんも安心できないんだ」

 あ…… そうか……

 私がここに居ると、二人はジャスパーさんが()()()()()()()()心配もしないと行けないんだ……

「……すみません、そうします」

 そう言うと、デニスさんはちょっと申し訳なさげな顔で、頭を撫でてくれた。



 そんな事をしているうちに、もうさっきの騒ぎが昨日の事になっていた。

 デニスさんと一緒に『樫の木亭』を出てきたけれど、やっぱりこんな時間にミリアちゃんの部屋に押しかけるのは申し訳ない……

「デニスさん、私、外で寝ますから大丈夫です。ミリアちゃん起こすのも悪いし……」

「外ってお前……」

「旅の時も狼になってたの見たでしょう? あれでしたら、外で寝てても平気ですから」

「バカ、そういう訳にもいかないだろう」

 遅い時間だからだろう。デニスさんは私の肩を抱いて、(かば)うようにして歩いてくれている。


 ミリアちゃんのところに行くには、薄暗い路地に入らないといけない。その路地に入る角を曲がろうとして、デニスさんの足が止まった。

「いや…… ダメだな……」

「……? どうしたんですか?」

「例の手紙の件がある。お前がミリアの部屋に居ると、もしも何かあった時に二人一緒に危険にさらされる」

 あー、そうか……

 目標にされているのは私なんだ。

 何か危険があると決まった訳ではないけれど、万が一の時にはミリアちゃんを巻き込んでしまう。


 『樫の木亭』に居た時には、元Sランクのトムさんが居たから安心していたけれど。

「うーん、やっぱり私は外で寝ますよ。あの姿なら狙われたりもないでしょうし」

「……なんでそうなるんだ?」

 デニスさんは、はあーと大きくため息をついた。

 そして私の肩を抱いたまま、くるりと向きを変えて歩き出した。

「! デニスさん、どこに行くんですか?」

「俺んちに行くぞ」


 * * *


「一応、旅に出る前に片付けてはいったんだが…… 少し埃っぽいかもしれねえ。すまんな」

「いいえ、すみません…… 本当にご迷惑を……」


 デニスさんの借りている部屋は、単身にしてはちょっと広めの部屋だった。

 家具はさほど多くはなく、最低限揃えてある感じだ。マジックボックスが二つ並んでいるので、収納はそれで賄えているのだろう。部屋の隅には装備の手入れ道具が広げたままになっている。

 使い込まれているがしっかりした木製のロングソファとローテーブル。壁際に(しつら)えられた少し大きめのベッドが目についた。


 単身の冒険者は持ち家ではなく、こうやって部屋を借りている事が多い。さらに町から町へ移動する冒険者になると、拠点すら持たない者が(ほとん)どだ。


「ああ……よく考えたら、ジャスパーと居るのと変わんねえな。俺なら安全って訳じゃねえだろうし……」

 デニスさんはそう言いながら頭を掻いた。そんな事はないだろうに。

「デニスさんとは旅の時も同じ部屋で泊まったじゃないですか」

「いや、宿に泊まるのと俺の部屋に泊まるんじゃ違うだろう?」

 どうにもデニスさんの歯切れがわるい。それだけ気にしてくれているのだろう。


「うーん、ならこっちの姿になりますか?」

 そう言って、チョーカーの魔法石を使う振りをしながら、大人の姿になった。

「これなら、気にならないんじゃないか?」

 デニスさんは、こっちを見ると少し目を見開いて…… 口に手をあてて顔を()らせた。

「バカ…… 逆効果だ……」

 うん……? どういう意味だろう?

「……ダメですか?」

 すぐに元の姿に戻った。

「なんでそれで、大丈夫と思うんだ?」


 顔を逸らせたままのデニスさんにそう問われて、何故か答えが出せなかった。

 どうしたんだろう、私……

 なんで大丈夫だと思ったんだ??


 いや……

 『大人の私』はそういう対象には見られない、そう思っている?


 なんだろう? 混乱している?


「……どうした? リリアン?」

「ああ…… ごめんなさい。ちょっと考え事を」

 口元に手をあてたままこちらを向いたデニスさんの、頬がちょっと赤くなっている気がした。



「そういえば、本当にジャスパーには何もされてなかったんだよな?」

「あー…… 多分、ジャスパーさんはそういうつもりじゃなかったと思うんです」

「……何かあったのか?」

「うー 多分ですけど。自分のベッドに潜り込んだら何かがあったから、それで何だろう?って思ったんじゃないかと……」

「……何をされた?」

「……抱き付かれて…… あとちょっと体を撫でられました……」


 それを聞くと、デニスさんは頭を抱えて大きなため息をついた。

「……それはアウトだな」

「でも、あそこは元々ジャスパーさんの部屋ですし。酔っていたようですし……」

「酔ってたってのは言い訳にはならねえ。それを許しちまったら、また酔ったらやっても許されるって事になっちまうだろう? また酒を理由にして何するかわかんねえよ。それならそこまで飲んじゃいけねえんだ。ヤツの為にならねえから、それはきっちり言ってやらないと」

 明日また説教だな、と誰に聞かせるともなく吐き出すように言った。


「まあ、もう遅いから寝るぞ。後は明日だ。ベッドはお前が使ってくれ。俺はこっちで寝るから」

 そう言いながら、ロングソファに置いてあったクッションを並べ直している。いやいや、デニスさんの長身だと明らかにサイズが足りないでしょう。まともに眠れるとは思えない。

「いいえ、デニスさんがちゃんとベッドで寝てください。私はソファで大丈夫ですし、なんなら獣化して床で寝ますからー」

「お前、旅の間もずっとそうだったろ? それでちゃんと休めるのか?」

「ま……まあ、それなりに……」

 上手く誤魔化(ごまか)せば良かったのに、咄嗟(とっさ)で変な言い方になってしまった。


 そんなのはすぐにバレて、デニスさんはもう今日何度目かのため息をついた。

「ちゃん寝とけ。先輩の言う事は聞くもんだぞ」

 うーん…… そっか。そう言われるなら、()()()()にしないとね。

「はい、ありがとうございます」

 と、素直にベッドに入ってみせると、デニスさんは満足そうに(うなず)いた。


「あの…… やっぱりあんな事があったので、ちょっと心細いです…… 寝付くまで隣に居てもらえませんか?」

 体をずらして一人分のスペースを空けてみせる。このベッドは二人でも十分に休めるサイズだから、かなり余裕がある。

 それを見て、デニスさんはちょっとだけ考える風を見せたが、

「仕方ないな…… 寝付くまでだぞ」

 そう言って、ベッドの隣に体を横たえてくれた。


「故郷の兄が、よくこうして不安な時に一緒に居てくれていました。 デニスさんはお兄さんみたいです……」

 『兄みたい』という言葉で、気持ちが緩んだのだろう。デニスさんは優しく微笑んで手を伸ばし、頭を撫でてくれた。

「……少しは落ち着くか?」

「はい、ありがとうございます」

 その手を取り、そっと両の手で握った。手の温もりを確認する振りをして、こっそり魔法をかける。


 そう待たないうちに、隣から寝息が聞こえてきた。


 そっとベッドから出てデニスさんの様子を(うかが)うと、睡眠の魔法が効いているようで昏々と眠っている。

 うん、これでいい。私はソファで寝よう。


「先輩の言う事は聞くもんだぞ……」

 こっそりと小声で、昔の呼び方で呼び、彼の頭を撫でた。

 お読みいただきありがとうございます。

 またブックマークや評価もありがとうございます。

 とてもとても嬉しく思っております。


 #1で出した設定が、ようやく回収できました。長かった……

 この騒ぎは#1書いた時から予定してありまして、でもデニスの部屋に行くのは予定外でした(笑)


 余談

 ミリアやリリアンは獣人で夜目が利くので、街灯の無い薄暗い路地でも気になりません。

 そういう場所にあるので、ミリアの部屋は安く借りられているようです。


(メモ)

 ジャスパーの部屋(#1)

 ミリアの部屋、路地(#27)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一部の話を『『ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい』おまけ閑話集』への別掲載の形に変更いたしました。
よろしければこちらもよろしくおねがいします♪
https://book1.adouzi.eu.org/n2483ih/

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ