第87話 『始まる何か』
図書館を出たアコウとミコトは、ゆっくりと階段を下りていた。
空はすっかり夕焼けに染まり、吹き抜ける風が肌に心地よかった。
「……変な感じだね」
アコウが、ぼそっと言った。
「うん?」
ミコトが振り返る。
「今日は、なんか……全部が繋がってる気がしてさ。でも、なにが繋がってるのかは、やっぱり思い出せないんだけど」
言葉にできない、でも確かな“何か”。
夕日が遠くで滲むように、その感覚は確かに心にあった。
ミコトが笑う。
「また、変な夢でも見るんじゃない?」
「うーん……あるかも」
そんな会話をしながら、2人は駅へ向かって歩き出した、その時――
■ユウの視点──追いかける一歩
手が、勝手に動いていた。
足が、何かを振り切るように走り出していた。
「……待って!」
自分でも、なぜ声をかけたのかわからなかった。
でも、逃したらいけない気がした。
2人が振り向く。
アコウも、ミコトも。
その瞬間――ユウの心臓が大きく跳ねた。
そこには、写真の中のふたり。
夢のように遠い記憶のなかで、笑っていた誰かが確かに立っていた。
「えっ……司書さん?」
ミコトが首を傾げる。
アコウも少し目を見開いた。
「……あの時、声をかけてた気がする。……違うっけ?」
まるで思い出そうとしているように、アコウが静かに言う。
ユウは、息を整えて、ほんの一言だけ、絞り出すように言った。
「……また、会えてよかった」
アコウとミコトは、目を見合わせ、
次の言葉を探すように、小さく笑った。
■夕焼けのなか、始まる“何か”
何もかもが解けたわけじゃない。
記憶はまだ曖昧で、言葉にできないことだらけ。
でも、それでも。
ここからまた、何かが始まる予感だけは確かだった。
夏の風に吹かれて、3人はゆっくりと歩き出した。
名前も、記憶も、すべてが戻るその日まで。
ただ、この“今”を信じて。
以上になります。
初めて、お話を書いたので
見苦しい部分は、多々あったかもしれませんが
最後まで見てくれた方がもしいたら、有難うございます。
自分なりには、満足のいく最後だったと思っております。
有難うございました。




