第76話 『扉を求めて』
その日、アコウは教室の窓からグラウンドを眺めていた。
いつもと変わらないはずの昼休み。
けれど、何かが“ずれている”気がする。
――今日、月曜日じゃなかった?
それは何日も前にそう感じたはずだった。
でも、翌日も、またその次の日も、“月曜日”が続いている気がする。
掲示板の予定も変わらず、給食の献立もリピートされていた。
アコウ「……もうヤだ、月曜ばっか……」
ミコト「やっぱおかしいよね、これ」
後ろから、ミコトがスッと現れる。
アコウ「え、なに急に……ちょっと怖いって」
ミコト「ううん、昨日も一昨日も、起きた時間も天気も、給食のメニューも“同じ”だった。朝のニュースもまったく同じ」
アコウ「……ゾッとするね、それ」
ミコトは眉をひそめて、小さな声で続ける。
ミコト「ねえ、どっかに……また“扉”があるんじゃないかな」
アコウは思わず顔を上げる。
アコウ「……図書館?」
ミコト「ううん、違う場所……たぶん、もっと目立たない場所」
2人は、何となく同時に目を合わせた。
――駅の売店横。
そこは以前、第5層の入り口だった場所。
ただの古びた壁に見えたそこに、確かに“扉”はあった。
■放課後・駅の売店横
放課後、制服のまま2人は急ぎ足で駅前へ向かう。
人の流れの間をすり抜けながら、静かに近づいた。
アコウ「……何もない、ように“見える”だけかも」
彼女はポケットから認識阻害の石を取り出す。
持ち主が思い浮かべた相手にだけ見える、それは“視界を上書きする鍵”でもあった。
石を握りしめ、売店横の壁を見つめる。
アコウ「……見えた」
ミコト「やっぱり!」
そこには、薄い霧のような輪郭で浮かぶ鉄製の扉があった。
プレートには何も書かれていない。けれど、その周囲の空気だけが――“動いていた”。
アコウ「……開ける?」
ミコト「うん。……ていうか、私、そろそろ次のコスプレが何か気になってきた」
アコウ「そこ!?」
ミコト「いや、大事じゃん。今回はまともなの着たいし」
アコウは小さく笑って、扉に手をかける。
すると――
カチャリ、と音もなくロックが外れる。
奥から吹き出す風に、どこか懐かしい気配が混じっていた。
アコウ「……ユウ、いるかな」
ミコト「行こう。今度こそ、“直接”会えるかも」
扉はゆっくりと開かれ、まばゆい光が廊下の壁を照らす。




