第74話 『記憶と記録の狭間』
静かだ。
音もない。風もない。けれど、時間だけが微かに歪んで、引き伸ばされたように流れている。
ユウは、白く無機質な空間――“記録の部屋”と呼ばれる場所に腰を下ろし、スマホの画面をじっと見つめていた。
そこには、猫耳メイドのアコウとミコト、巫女姿で年賀状を構えていたときの2人、そしてケーキコスで困惑していた2人の姿が、次々にスライドショーのように映し出されていく。
ユウ「……記録はあるのに。記憶もあるのに。触れられない、って、ひどいよね」
彼女の声は虚空に吸い込まれ、返事は返ってこない。
彼女は今、“時間”から半分外れた場所にいる。
第3層を越えたとき、あの異変が起きた瞬間から、少しずつ「ズレ」は広がっていった。
ユウ「……あのとき、ちゃんと止めてれば……いや、止められたのかな……」
ふと、指先でスマホをスクロールする。
そこに――アコウが、図書館でユウに気づきそうになった日の写真があった。
アコウの目線は、確かにこちらに向いている。
けれど、次の瞬間には“認識阻害の石”の効果で視線は逸れ、ユウはただの「通りすがりの司書」として流されていった。
ユウ「……ごめん。あのとき、声をかけたかったんだよ。すごく。
でも、今の私……触れたら、記録ごと、壊れそうで」
彼女は掌の中で、薄く光る認識阻害の石を転がす。
これは、あの日、アコウが落としたもの。
本来なら、持ち主にしか効果を発揮しないはずなのに――自分には効かない。
それが、ズレの証拠だ。
ユウ「私、もう“現在”にいないのかな」
独り言のように呟いたとき――空間の隅で、微かな揺らぎが起きた。
ミメイの声が、空気ににじむように響いてくる。
ミメイ『あなたが本当に望むなら、扉は開かれる。けれど……選択の代償は、常に付きまとう』
ユウ「わかってる。……でも、私が




