第70話 『新しい月曜日』
月曜日。
昨日も月曜日だった気がするのに、また――月曜日だった。
アコウは、制服のネクタイを締めながら、ふとカレンダーを見て眉をひそめた。
アコウ「……え?」
日付は、先週と同じ“月曜日”。
天気も、朝のニュースの内容も、まるで再放送のよう。
不安を抱えたまま、駅へ向かう通学路。
そして――駅の構内にある、小さな売店の横で、アコウは“それ”を見た。
誰も見ていない。誰も気づいていない。
駅の壁と自動販売機の隙間に、確かに存在する、異質な扉。
鈍く光る金属の縁、黒いガラスのような扉。そこに、かすかに描かれた数字。
『5』
アコウは、背中の温度が一気に冷たくなるのを感じた。
アコウ(……見つけた)
ポケットを探り、認識阻害の石を軽く握る。
すると、ふっと扉の輪郭がさらに明瞭になった。
スマホを取り出し、ミコトにメッセージを送る。
■駅前広場――数分後
ミコト「……それ、見えてるよ。間違いなく、“ダンジョンの扉”だ」
アコウ「今回は、コンビニじゃなかったね。場所も、雰囲気も……なんか違う」
2人は互いにうなずき、学校とは逆の道へと足を踏み出した。
ミコト「……学校サボるの、すごい久々」
アコウ「これは“緊急事態”だから、セーフ」
ミコト「誰に言ってんの」
■第5層――「無限の廊下と選択の迷宮」
扉をくぐった瞬間、世界が切り替わる。
そこは、音のない廊下だった。
無機質なコンクリートの床に、等間隔に並ぶ金属製のドア。
天井の蛍光灯は静かに点滅し、左右どちらを見ても、同じ風景が永遠に続いているようだった。
アコウ「……なんか、今までと全然違う。コスチュームも……変わらない?」
ミコト「うん。普通の制服のまま……。え?ないの?あの強制コスプレ……」
アコウ「ちょっと期待してた?」
ミコト「まさか、そんな、少しだけしか」
アコウ「してたんかい」
会話に緊張を紛らわせながらも、足取りは慎重だ。
すると、左右に並ぶ扉の一つが、ぼんやりと淡い光を放った。
近づくと、そこには**“鍵穴”**がある。
そして、アコウのポケットにある“前層で手に入れた鍵”が、かすかに反応するように温かくなった。
ミコト「……開けろってこと?」
アコウ「でも、どれが正しい扉かは……わかんないよね。開けたら終わりかもしれないし」
ミコトは、慎重に周囲を見渡した。
そして、一つ気がつく。
ミコト「アコウ……全部の扉、番号がない」
アコウ「え?」
ミコト「これ、正解の扉を“思い出す”か、“直感で選ぶ”しかないんじゃ……?」
アコウは、手にした鍵をじっと見つめた。
すると――鍵の金属部分に、ほんのりと、映る映像のような光の揺らぎが見えた。
それは――図書館で笑っていたユウの姿。
アコウ「……たぶん、この鍵が覚えてる。“正しい扉”を」




