第64話 『敵はいないけど、トラップはあるよ』
雪が静かに舞う中、アコウとミコトはブッシュドノエルの姿で並んでいた。背中にはチョコレートのロールケーキ模様、頭には苺の飾り、手には再び「クリスマスカード」と書かれた妙な札束。
アコウ「……敵がいないのは助かるけど、だからってこれで歩き回るのは羞恥プレイすぎる」
ミコト「なんで私、体の真ん中にロウソク刺さってるの……!? しかも、ゆらゆら揺れてるんだけど……火、出てるこれ!?」
ユウ「うんうん、素晴らしい。動くたびにホイップがぷるぷるしてる……(カシャカシャ)」
アコウ「また撮ってるーッ!? っていうか! 敵出ないならいっそ戦いたいって気持ちになってきたよ……!」
ミコト「ねぇ、なんか……その先のトンネル、壁の隙間から白い何かが……」
ブシュッ!!
唐突に、壁のあたりから勢いよく生クリームが噴き出した。
アコウ「ちょっ!? 冷たっ!?」
ミコト「やだ! なんで顔面にくるの!? わざとでしょこれ!?!?」
ユウ「うーん、この反応……最高……。こっちの角度からも(カシャカシャカシャ)」
アコウ「ユウーー!! こんなトラップ仕掛けたでしょ!? どうせいつもの“悪趣味AI的配置”でしょ!?」
ユウ「ちがうよ!? 私も初めて来たんだから! ……多分」
道中、特に敵もなく、静かで整った通路が続く。その合間に突然吹き出すホイップや、何かと足を取るゼリー床、滑りまくるバター通路など、戦闘の代わりに嫌がらせに全振りした罠が延々と続いた。
そして、ある分岐路の先に、妙に豪奢なドアが現れる。
そこには、《SHOWER ROOM》と書かれた看板が。
アコウ「え、親切……!? ……じゃなくて、なんでダンジョンにシャワールームがあるの!?」
ミコト「しかも……隣に更衣室と……衣装ラック……? 中……見ていい?」
(ガラッ)
ミコト「うっわ……全部……クリスマススイーツ系……」
アコウ「モンブラン、ミルフィーユ、ストロベリームース……って、選べるの!? 種類!?」
ユウ「全部、着てみようか」
アコウ・ミコト「遠慮します!!!!」
しぶしぶシャワーでホイップを落とし、元の(?)ブッシュドノエル姿に戻った二人は、再びダンジョンの奥へ。
そしてついに、一際大きなキャンディケインのアーチを抜けた先、広場の中心に**金と銀に輝く“時間の鍵”**が浮かんでいた。
アコウ「……これが、鍵……?」
ミコト「思ったより……戦いもなくて、あっさり……」
ユウ「戦いはなかったけど……君たちの尊厳は削られた気がする」
アコウ「返せッ! 私の尊厳ーーッ!!」
ミコト「地味に屈辱的だったよ……もう“ケーキトラップ”とか言われたら条件反射で叫びそう……」
ユウ(スマフォをそっと構えながら)「じゃあ、“鍵と尊厳を取り戻した少女たち”ってタイトルで写真まとめようかな」
アコウ「やめろォーーッ!!!」
その瞬間――
《第4層クリア。時間の鍵、取得完了》
天の声のような通知と共に、クリスマスダンジョンがゆっくりと光に包まれ始めた。




