第61話 『日曜日は?』
光が過ぎ去り、目を開けたアコウとミコトは、まず自分たちの姿を確認して悲鳴をあげた。
「うそでしょ!? な、なにこれ……」
アコウが自分の体に巻きついたチョコ色のリボンを掴んで震える。彼女の衣装は、まさに“ブッシュドノエル”――クリスマスケーキそのもの。
スポンジ色のベースにチョコクリームを模したマント、背中には堂々と“メリークリスマス”の飾りが差さっていた。
「私……ロールケーキじゃん!!」
「わたしもー!? なんか、粉砂糖とか乗ってるし!」
ミコトも同様に、ホイップとイチゴをあしらった“デラックス仕様”のブッシュドノエル姿。しかも、二人とも手にはまたしてもクリスマスカード型の武器を持たされていた。
「うわ、しかもまたこれ!? どうやって戦うの、このハガキサイズの武器で!」
「物理より気合いって感じなのかな!? でももうこれ、気合いじゃどうにもならないくらい恥ずかしいよー!!」
ばたばた暴れる二人の前に、どこからともなく、ぬっと現れたのは――
「……」
「……ユウだ!」
「ユウー!!」
再会の歓喜の声が上がるかと思いきや、ユウは開口一番、深い溜め息をついた。
「……よりによって今度はブッシュドノエルか……!」
「そっちのテンションが下がるのもどうかと思うんだけど!」
アコウが突っ込む。
ユウはやや引きつった顔でスマホを取り出し、なかば義務のように二人を撮影した。
「ほら、ポーズ。記録、記録……」
「納得いってない顔しながら撮るなー!!」
「ていうかこれ、完全にコスプレ通り越して食品じゃん!」
「でもミコト、ちょっと美味しそうかも」
「アコウもな!」
と、冗談交じりに騒ぐ二人を制し、ユウは少し真剣な表情になる。
「……実はさ。ここ最近、私たちの“時間”が微妙におかしいんだよね」
「時間?」
「第3層に入ってからずっと……日付がランダムに変動してる。“昨日が火曜日”のはずなのに、“今日はまた火曜日”だったり、“週末が来た覚えが無い”のに“月曜日”になってたり」
「……あ、それ、なんか最近……」
アコウがハッとした表情になる。
「土曜日の気分で寝たのに、日曜日が来なかった気がする!」
「ていうか! なんか最近、休日がずっと来てなくない!?」
「わかる! わかるよそれ! 毎日、学校行ってる気がするー!!」
ミコトも叫ぶようにうなずく。
「おかしいと思ってたのよ! 制服の洗濯する時間が無いなーとか、寝ても寝ても寝た気がしないなーとか!」
「そこなの!?」
ユウがズコッと足を滑らせそうになりながら突っ込んだ。
「ねえ、普通そこは“世界がおかしくなってる!?”とか、“時間が歪んでる!”とか、そういうリアクションじゃないの!?」
「だって、日曜日が消えるって……最悪じゃん……!」
「休み無しとか、人権ないじゃん……!」
二人は膝から崩れ落ち、肩を落とす。
ユウはこめかみに指を当てながら呟いた。
「……この世界、崩壊する前に精神からダメになるパターンかも……」




