第28話 『穴があったら入りたい』
■翌日・昼休み 学校の中庭ベンチ
晴れた空の下、アコウとミコトは中庭の隅っこのベンチに並んで座っていた。
どこか落ち着かない顔で、サンドイッチを見つめる2人。
「……あのさ」
「……うん」
同時に口を開いて、ハッと目を合わせる。
「……そっちからどうぞ」
「いや、アコウから……」
「……うん、じゃあ言うけど……」
アコウはサンドイッチのたまご部分を見つめながら、小声で言った。
「……昨日、なんで私たち……あんなにノリノリで撮影会やってたの?」
「知らないっ!」
ミコトは即答して、顔を赤らめながら身をよじった。
「っていうか……なんであんなポーズとか……決め顔とか……したの?私!」
「いや、それ私もだし……なんか、変なテンションになってて……」
「しかもさ……おたまでポーズ取ってたよね? “料理長スタイル☆”とか言って」
「言ってた……やめて、思い出すと穴に入りたくなる……」
2人は同時に顔を覆って、バツの悪そうな笑みをこぼした。
「……あの時は、もう完全に“これはそういう流れ”だと思って……」
「うん……なんか、拒否したら負けみたいな空気だった……」
「でも……意外と、楽しかったのがまた腹立つよね……」
「うわ、わかる……! 最後とか、普通に笑ってたもん、私……!」
ミコトは制服の袖で顔を隠しながら、こそっとアコウの方を見た。
「……あれって、ユウさんがはしゃぎ過ぎてただけ、だよね?」
「……だと思う。写真も撮ってたし、スマホの待ち受けにしてたし」
「えっ!? うそ、やめて!? 消してぇぇぇぇぇぇ!!」
「たぶん、永久保存されてる」
「ぎゃーー!!」
ベンチの上で2人が頭を抱えて騒いでいると――
その様子を、少し離れた木陰からじっと見つめる視線があった。
■学校の敷地外・塀の上 ミメイ視点
「……ノリノリだった」
学校の外壁の上。
一般人には見えないよう認識外フィルターを纏いながら、ミメイはじっと中庭を見下ろしていた。
目の前の観測ウィンドウには、前日の映像が再生されている。
オタマを持ってポーズを決めるアコウとミコト。笑顔、ウィンク、バリエーション豊富なカット。
「……記憶維持、感情反応強め。恥じらいレベル、高」
淡々とデータを処理しながらも、ミメイの口元がピクリと緩む。
「……“羞恥の再燃”。観測ポイントとしては上等。
データタグ:“猫耳メイド”、“撮影テンション暴走”、“おたまファンタジー”……」
ぱちぱちと、謎の分類タグを追加しながら、さらにじっと観察を続ける。
「……次回、衣装変化の可能性も要検討」
カシャ。
無音でシャッター音が鳴る。
ミメイは無表情のまま、観測用デバイスで写真を1枚保存した。
「……観測、継続」




