覚悟と盗聴
「レイス君の気持ちは俺にとっても嬉しい。だが……」
フィリム様が黙っていなかった。
「レイスはお母様との約束で──」
「協力者も命を狙われる可能性が高い。既にフィリムも命を狙われている可能性はある。俺は自分の身は護れるが、人数が増えればそうもいかなくなるんだ」
ぐうの音も出ない。
だが俺も、ここまで来て何もしないというわけにはいかなかった。
「ヨハネス様、覚悟の上です」
「ふむ……」
ヨハネス様が俺を射抜くように魔眼でじっくりと見つめてくる。
「成程……そこまで覚悟があるのならば……」
ヨハネス様は、再び周囲を警戒しながら聞いている。
「ならば暫し待たれよ」
ヨハネス様は、ポケットの中から不思議な石を取り出し、その石に魔力を込めている。
暫くすると、部屋中が石から発せられる光に包まれた。
「まぶしっ!? ちょっとヨハネス! 何したのよ!」
「魔道具だ。この光の中での会話の声は外に絶対に漏れない。今から話す事は外の者には聴かれたくないのでな。実は遠くからこの部屋の会話を盗み聞きしている者がいた。逆にそいつに魔道具を忍ばせ、奴等の会話も盗み聞きしているがな」
「相変わらず用意周到ね……」
「当たり前だ。俺とフィリムで対談をする時点で盗み聞きをされると推測できる。だが、レイス君まで巻き込んでしまったみたいだ。すまない」
「いえ……」
むしろこれはチャンスだ。
ヨハネス様に俺の覚悟を見せるための。
「で、相手は誰なのよ」
「あえて泳がせておいたが、まだ小物までしか釣れていないぞ? ザガル伯爵とその部下のウイガルだけだ」
「あいつ……」
ここにきたときに嫌味を言っていた伯爵……すでに敵意を隠そうともしていなかったとはいえ……。
というか……。
「伯爵で小物なんですか……?」
「ああ。やりがいがあるだろう?」
ニヤリと笑うヨハネス様はやはり、誰が見ても惹かれる魅力を持っていた。
「ふーん。それ、私とレイスに任せてくれない?」
「……できるのか?」
「やるのよ」
フィリム様の提案に押し黙って見つめ合う二人。
これは……フィリム様なりの俺へのチャンスの提供だ。
「いいだろう。ただし二人の命が危ないと判断した場合は俺が必ず助ける」
「そうならないようにするわよ。その代わり……」
「わかっている。俺だって味方は欲しいんだ」
ヨハネス様が静かに笑う。
魔導具の光が振り払われた。
読んでいただきありがとうございます。
タイトルを変更させて戴きました。
引き続き宜しくお願い致します。




