(前編)裁きと混乱
次の日、王宮の玉座の間で、バルスとルーラの裁きが行われた。オルダニネス国王が玉席に座り、ヨハネスがその横に起立している。
何度も王宮には出入りさせてもらったが、オルダニネス国王を見るのは初めてだ。
老人とまではいかないが、結構なお年を召している。
ヨハネスの外見が国王譲りだというのはよく分かるくらい、男前なオルダニネス様だと思った。
大臣達も集まる中、俺とフィリムは被害者のため、特別に奥の壁際から出席している。
フィリムは小声で教えてくれた。
「アイツが第二王子ガブネスよ……」
フィリムが足元からこっそりと指を指した先、ヨハネスの少し手前で立っている男……あれがガブネス王子か。
バルスとルーラに暗殺を仕向けた張本人なのに、よく平然とした態度でいられるな……。
バルスやルーラを助けてあげないとって気持ちすらなさそうな雰囲気だ。
むしろ、この状況は好都合っていう顔をしているような気がするんだが……。
オルダニネス国王が口を開いた。
「すまぬな。忙しいのに集まってもらって」
「それは良いのですが陛下、なぜ今回の裁きにあのような平民まで!」
「ふむ……それはヨハネス第四王子に説明してもらおう」
捕らえられているバルスとルーラに目線を向けた。
「この者達に私やそこにいるレイスという民と、フィリム公爵令嬢を暗殺をしようと私の応接室に侵入したのだ。暗殺に使おうとした凶器も証拠として回収している」
玉座の間がどよめき始めた。
「信じられない!」
「リングベルド伯爵ともあろうお方が王子を……」
「だが……第四王子をよく思わぬものは」
「ばかもの、ここでそれをいうな」
玉座の間が騒がしくなり、ヨハネスは更に発言を始める。
「静粛に。安心したまえ。そこにいる民のレイス君とフィリム公爵令嬢が、今回の騒動を解決し、この者達を捕まえてくれた。レイス君、フィリム公爵令嬢、こちらへ来たまえ」
俺とフィリムはヨハネスが起立している前で膝まづいた。
「此度の活躍、御苦労であった。さて、私一人に暗殺を仕向けたのならまだ良い。私自身で解決できる。だが、未遂であるとは言え、私だけでなく他の人間も巻き込んだ罪は更に重い」
「と、いうわけだ。今回の件についてはすべて、ヨハネスに委ねると決めておる」
そう告げるとオルダニネス国王は役目を終えたと言わんばかりに息をつく。
あとはヨハネス次第というわけか。
「今回の一件、実行犯二人の処刑および――」
――バンッ
「何だ突然!?」
「静かにせんか! ダイン王子殿下だ」
「だが今は裁きの……」
「あのお方にそんなもの通用するか」
ざわめく現場だったが、驚くべきことがもう一つあった。
「ミルト!?」
「ミルトちゃん……」
バルスとルーラは裁きの刻の最中は発言権が与えられるまでは喋ってはいけない。
しかし、逃げたはずのミルトがこの場に現れて思わず声に出てしまったんだろう。
俺ですら声を抑えるのが精一杯だった……。
「ヨハネス、そやつらをどうする?」
「暗殺未遂です。処刑せねば示しがつきません」
「そうであろう。だがそれだけか? 王家への暗殺未遂だ。普通なら一族郎党に罪が及ぶであろう?」
ダイン王子の目線が俺に向けられた。
「まさか……彼は被害者ですよ」
「だが、それを周囲が認めるかな?」
周りの大臣もボソボソとどよめきが起こりはじめる。
「皆の者、王子を護ったレイス君の功績は大きい。だが、加害者であるこの二名の息子が、……目の前にいるレイス君である」
どよめきも更にエスカレートしていく。
「功績は大きいが、この者達の罪を引き継がなければいけない場合もあろう。故にこのままではレイス君も極刑になるだろう」
この発言によって、収拾がつかなくなってきてしまった。
完全にダイン王子のペースになってしまった。
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