15.閑話 とあるお茶会 2
最終改稿日2015/04/11
遠いところのお話し、その2です。
「ごめんっ!本当にごめんね!!」
燃え盛る炎のような赤毛の女性が土下座する勢いで純白のワンピースの少女に対して何度も頭をさげながら謝罪し続けている。
「えっと……ファリスちゃん、わかったから、もうそんなに謝らなくても……」
「いいえ、エリスちゃんの大事な子をうちのバカトカゲどもが虐めてたとか、本当にあり得ないから、気付くの遅れてごめんなさい!!」
エリスは困って兄のほうを見ていると、ちょうど最後のメンバーが来たようで、お呼びがかかった。
「おーい、エリス、ファリス。ナーシャ来たからお茶会始めるぞー」
***
「あらファリス、久しぶりじゃない。クリスは一緒じゃないの?」
「あ、うん。クリスは今ヤボ用で湖の方に行っているわ」
「へー。あそこの水質ってさ、いつまであのまんまなの?200年前くらいに一度改善されたのにまた狂っていない?」
ナーシャはせっかく自分の“娘”が死にそうな目に遭いながら改善したのに、とあきれ顔で苦笑している。
「まぁまぁ、その件はクリス次第だろ。俺たちがどうこう言っても始まらないぜ」
「そうね。それよりエリス、貴女の大事な子。リリーちゃんだっけ?怪我なくて良かったわね」
グサッと何かが刺さったかのように身悶えるファリス。
「お姉ちゃん、もう許してあげて?ファリスちゃんが可哀想だから……」
「はぁ、まぁ、一番の被害者のエリスがそういうならいいわよ。でさ、ファリス?うちの子たちも被害受けそうになったんだけど……?」
ちゃんとけじめつけてあるんだよね?と言外に匂わせながらにっこり微笑むナーシャにファリスがビクッと震える。
「は、はいぃぃぃっ!バカトカゲに今後一切相手にするなと申し付けましたのでどうか、どうか許してくださいっっっ!?」
「許す」
背もたれに上半身を安堵のため息とともに脱力してだらしなく預けるファリスをアルカイトは災難だったよなぁ、と同情の視線を送りながらお茶を飲む。
「ファリスちゃん、それって、あの男の子限定だよね?お兄さんたちも、なの?」
「……えっと、あのクソガキは問答無用、その他に関してはあそこの当主あてに神殿通じて『神託』わたしといた」
お代わり欲しいひとー?とアルカイトが甲斐甲斐しく空いているカップに注ぎ、焼き菓子を追加していく。
「まぁ、ファリス。お前んとこの子が巻き込まれないだけ…………マシだったよな」
「そうね。もし巻き込まれていたら……聖戦発動してたかも?」
「まてまてまてまて!それやりすぎ!おかしいだろその基準!!」
「やぁねぇ、冗談よ、冗談」
「嘘つけ、目が笑ってねぇじゃないか」
…………こいつら見てると本当に『寵愛』与えるのが怖い。俺もこうなっちまうんかなぁ?
まぁもっとも。俺にはエリス以外いらねぇし。大丈夫だろ。
ぴこん♪
「…………ねぇねぇお兄ちゃん。今私のステータスに『アルカイトの寵愛』ってくっついたんだけど」
「「このシスコン野郎、何やってんの!」」
「…………まじか。あー、まぁ気にするな。今までと大して変わらないだろ」
「そういえば……そだね。うん、気にしないことにするよお兄ちゃん♪」
「「少しは気にしなさいよ!?」」
このシスコンブラコン兄妹、絶対下界の神殿関係者に見せられないわねぇ、卒倒されそうだし。とため息ついて顔を見合わせるナーシャとファリスだった。
『寵愛』って、神様にも付くんですね…………。




