閑話[滅国跡地での対話]
【シーシャ国跡地】
《廃墟住宅街》
「情けないですね」
「も、申し訳ないです……」
ヌエは呆れ果てたようにそう述べ、手元の死体を持ち上げる。
本来の四分の一になったそれは血液すらも抜け果てて、最早、ただの塊となっていた。
彼女はその塊を持ち上げただけでなく、他の肉塊を片手で持ち上げては肩へ担いでいく。
「ああ言う手合いは話を逸らしていけば諦めます。尤も、諦めて居ないのも何人かは居たようですが」
「わ、私にはヌエさん程の話術はありませんので……」
「貴女の気弱さは慎重であるとも言い換えられますが、進むべき所で進まなければ、何も結果は得られません」
「は、はい……」
「とは言え、妙な事を口走らなかったのは褒めましょう。パニックになって有ること無いことを取り繕っては本当に斬りかかられてましたからね」
「……はい」
「いえ、別に何も貴女が前の仕事でそれをやったからといって言っているのではありません。えぇ、違います」
「ごめんなさい……」
「構いませんよ。あの時も相手が優しい方でしたので。えぇ、自らの地位を利用して馬鹿ばかりする人と比べればマシですとも。えぇ、マシですとも」
「ご、ご苦労様です……」
ヌエの声は非常に不満げな物で、この人が愚痴を漏らすのは珍しいなとミズチは苦笑する。
普段から冷徹完全な人だから、こういうのは少し意外だがーーー……。
「……少し会話がずれましたね。さっさと片付けてしまいましょう。これから忙しくなるかも知れないのですから」
「え?」
「ベルルーク国がサウズ王国と戦争を起こすのかも知れないのですよ」
「……え!? ベルルークとサウズと言えば、四大国家の内の二つじゃないですか! そんなのが戦ったら」
「だからです。……とは言え、現在では非常に少ない確率ではありますが。ギルドでも相応の準備はするように、とレヴィア様より」
「介入するのですか?」
「どうでしょうね。あの方々が何を考えているのかなど、私達が知る由はありません」
ヌエは次々に死体を拾い集めては肩へ担いでいく。
その量は既に彼女の体積を超えていたが、それでもヌエが止まる事は無い。
「ただ、あの方々は平和を求めているのは解ります。彼等は皆、子供のような人物です。豪快に、爽快に、軽快に。そんな人物が集まって、世界の中に中立という存在を割り込ませ、如何なるならず者だろうが如何なる横暴者であろうが力の元に、名の元に従わせる」
「その圧倒的なカリスマ性に私達は惹かれた。……そうですよね」
ミズチは黒衣に包まれたヌエの雰囲気が、何処か柔らかくなったのを感じた。
彼女も彼女なりにギルドへと信頼を寄せているのだろう。
世界的中立組織、ギルド。
自らも籍を置くその組織の危険性はよく解っている。
彼女の言う通りならず者も横暴者も身を隠す組織としては絶好の場所だからだ。
だからこそ偽装なども蔓延るし、違反も増える。
しかし、それを許さぬ人間が居る事も確かだし、彼等を抑える存在があるのも確かなのだ。
「……早く仕事を片付けましょう。また、忙しくなります」
「は、はい!」
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