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獣人の姫  作者: MTL2
四つの国を結ぶもの
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海岸線での雑談

【トレア海岸線】


「あの、スズカゼ殿」


砂浜から遠く離れた海岸線に、彼女等の姿はあった。

海に入るでも砂浜で遊ぶでもなく、ただ呆然と海を眺める彼女達の姿が。

各々が様々な方向に視線を向け、色々な事を思っているのだろう。

その雰囲気に纏まりという文字はない。


「はぁ」


スズカゼは片手を頬について、小さくため息をついた。

視界に広がる海を見ていれば悩み事など馬鹿馬鹿しく感じられる……、という事はなく。

逆に大きな存在に照らされて自分の悩み事が浮かび上がってくるように思えてしまう。

しかも、その悩みが小さな事だと理解出来てしまうから、さらに悩んでしまうのだ。


「スズカゼさん、どうかしたのですか?」


「いや、これからの成り行きが……」


「成り行き?」


「あの会議があったじゃないですか。首脳会議が」


「えぇ、ありましたね」


何を言いたいかは、まぁ、整理は付いている。

しかし、これは妄想というか想像というか、少し過ぎた考え事かも知れない。

それを理解しているからこそ悩みの種となっているのだが、だからと言ってハドリーに話せば解決する、という事は無いだろう。

それでも言うのか、自分は。言っても良いのだろうか?


「ちょっと、スズカゼ殿」


……いや、言うべきだ。

これはエゴでしかないけれど、聞いて貰えればそれだけで楽になる。

彼女を利用するようで気が引けるが、それぐらいの我が儘には付き合って貰っても良いかもしれない。

その代わり、獣椎で何か奢ることぐらいはしようと思う。


「私、会議どうこう以前に……、世界がどう動くかが怖いんですよ。その中心に自分が居る、なんて自惚れた事は言えませんけれど。それでも、そんな感じがするんです」


「世界の変動に巻き込まれる気がする、と?」


「……大袈裟かも知れないですけれどね」


スズカゼは恥ずかしげに頬を掻く。

そんな反応にハドリーは何処か慈愛の色がある笑みを浮かべるが、それ以上は言わなかった。

いや、正しくは言えなかった、だろう。

彼女を表ではなく裏から静かに支えると決めた彼女だからこそ、その役目は自分の物では無いと決めたのだ。


「大袈裟ではありませんわぁ」


そして、彼女の予想通り。

その役目はサラが受け継ぐ事となる。


「世界の動きは確かに異常ですもの。スズカゼさんは少なからずそれに関わっているのですから、その不安は真っ当ですわぁ」


「すいません、スズカゼ殿」


「……そうですかね?」


「スズカゼさんは変な所で謙遜的ですわねぇ。もっと自信を持って良いんですわよ」


「自信、ですか」


「失敗したり恐い事があったりすると、人は自信を失う物ですもの。だから、もっと自信を持って前に進むべきですわ」


「そのですね、スズカゼ殿」


「……そうですよね、もっと自信を持つべきですよね」


ぎゅっと拳を握り締め、スズカゼは再び海を見る。

あの大きな海には、この覚悟でさえもきっと呑み込まれてしまうのだろう。

だが、呑み込まれても無くなる訳ではない。

その青い海の中でもっと光り輝くことだって出来るはずだ。


「ありがとうございました、ハドリーさん、サラさん!」


「いえいえ」


「どういたしましてですわぁ」


二人は少女のお辞儀に対し、微笑みを見せた。

その微笑みが持つ意味は母性だとか保護欲だとか、そんな物だけではなかっただろう。

目の前に居る一人の少女が成長していくその様を見守るが故の暖かさ。

それこそが、彼女達が感じている物だったはずだ。


「……あの、スズカゼ殿」


「何ですか、デイジーさん! さっきから!!」


「いや、あの」


デイジーは自分の胸へと視線を下ろす。

スズカゼに会うなり凄まじい速度で甲冑を外され、薄絹の下着姿が露わになり、彼女の片手によって先程から揉みしだかれているその胸へと。


「胸を離してくれませんか……」


「いや、無理ですね」


「どうしてですかぁ! 先程から既に数時間揉まれ続けて、もう感触がないのです!!」


「じゃぁ、もげよ」


「もげって!!」


因みにこのやり取りが行われている間も、スズカゼはデイジーの胸を揉み続けている。

最早、ハドリーとサラは恒例行事の一つとして放置しているが、やられている本人からすればそれ所ではない。

と言うかあの装甲を外した速度があれば弾丸を避けられたのではないか、と思ったが、言った所でさらに激しく攻められるのは容易に想像出来たので言わなかった。


「……女性の悲鳴が聞こえたから来てみたんだが」


と、いつものようにこのカオスを遮る人物がやって来る。

男声と口調からしてデイジーは一瞬、ゼルかと思ったが、そうではなかった。

いや、むしろそうであって欲しかった。


「何やってんだ、スズカゼ・クレハ」


「あ、シャークさん」


南の大国、シャガル王国が王。

シャークその人よりも、ゼルの方が何倍も良かった。


「しゃ、しゃ、シャーク国王!!」


ハドリー、そしてデイジーとサラは素早く背筋と両手先を伸ばしきり、顔を強張らせる。

まさか国王が訪れられるなど、と内心真っ青になるが、それ以上に未だデイジーの胸を揉み続けるスズカゼに青くなっていた。

シャークはそんな事を気にする様子はなく、ただため息混じりに止めてやれ、と言葉を述べ、スズカゼはそれを速効で否定する。


「シャークさん、私は力を手に入れたいんです。その為には苦しい思いだってしなきゃならないのは解ってます。……けれど、それを乗り越えてこそ力が手に入る!」


「この状態で力と言われてもなぁ」


「力って言うか乳ですよね、知ってます」


「じゃあ、始めからそう言えよ……」


「まぁ、冗談は置いておいて。どうしたんですか? シャークさん、こんな所で」


「序でだからこの辺りの民の様子を見てきたんだよ。ここはまだ、俺の国領域だからな」


「国領域?」


問いの声を上げたスズカゼに、ハドリーがそっと耳打ちする。

スズカゼが彼女の腕の羽毛が微かにくすぐったくてひゃんっ、と声を上げてしまった為に、ハドリーまで同類ではないのかと奇異の目を向けられたのは秘密である。


「東西南北の、サウズ、ベルルーク、シャガル、スノウフでそれぞれ国領域を持っているのです。国領域とは東西南北で四大国がそれぞれ持っていて、ある程度の自治を補償しているんですよ」


「あぁ、だから私がシーシャ国に行ったりしたんですね」


「あくまで自治的な物ですから正式に決められた事ではありませんし、かなりグレーゾーンではありますけれどね」


「確かに行き違いとかありました……」


シーシャ国での間抜けな一件を思い出すとため息が出てしまうが、それは今は置いておくとしよう。

あの時も被害者は一人として出なかったのだから、そこまで引き摺る物でもあるまい。

……そう言えば、あの時出会った彼等は元気だろうか?

どうせだからフェベッツェに聞いてみるのも良いかもしれない。


「この辺りは東と言うより南に近いですから、シャーク国王も見回りに行ったんでしょうねぁっ!?」


「そうなんですか。ありがとうございます」


スズカゼは精神を集中させ、一切の雑念を振り払う。

大は小を兼ねるという言葉があるが、質は量を上回るという言葉もある。

これは矛盾だ。最強の矛と最強の盾が織りなす矛盾だ。

なればこそ、その間にある真理を感じ取らなければならない。

それが出来て初めて、力を手に入れる事が出来る。


「シャークさん」


矛と盾に手を添えた少女は、至極、真剣な顔つきで南国の王へ視線を向ける。

その両腕の先にある矛と盾より感じる感触に神経を集中させて。


「巨乳と貧乳、どっちが良いですかね!?」


「知らねぇよ……」



読んでいただきありがとうございました

作者は両方OKで編集君は貧乳派です

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