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獣人の姫  作者: MTL2
四つの国を結ぶもの
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大一行の獣車移動

【サウズ湖のほとり】


「……旅行とは楽しみですな!」


「うふふ、そうですわねぇ」


「……ふん」


「あの、ジェイド。私達も行って良いのでしょうか?」


「気にするな。大丈夫だ」


「おー、スズカゼぇ。そっちの菓子取ってくれ」


「あ、はい……」


デイジー、サラ、ファナ、ハドリー、ジェイド、ゼル、スズカゼ。

この大一行はいつも通り移動するために獣車の行商人であるレンを待っていた。

最早、ただの国家間の移動手段になりつつある彼女だが、ジェイドとハドリー曰く、金さえ貰えれば彼女が不満を抱くことはない、だそうだ。

その点は安心して良いだろうし、何より旅行だ。

突然の知らせだとしてもサプライズ的に喜べる行事だと言えるだろう。

尤も、スズカゼ、ハドリー、デイジーの女性三人組は口元を引き攣らせ目元を震わせ指先を凍えさせている。

その理由としては、まぁ、至極単純な物で。


「いやぁ、旅行なんて何年振りだろうかな? メイアウス女王」


「そうね、お互い立場的に出来る物でも無いもの」


「獣車の旅はよくしますが、行商人を利用する事はそうありませんね。それもこんな大人数で」


「はっはっは。いやぁ、こう大人数で騒ぐのも悪くない物ですよ」


「あ、ゼル-! その菓子、俺にもくれー!!」


バボック、メイア、ネイク、バルド、メタル。

この場に居て良いはずのない異端なる五人が居るからだ。

本来ならばその隣に居るはずの数千の兵すら連れず、ただ一人の側近だけを連れているからだ。

他の空間と絶界するように質素だが強固な獣車に腰掛けているからだ。

四大国の半数の頭が、この場に居るからだ。

そして、序でにと言うかその物と、その者と言うか。


「その菓子、俺にもくれないか」


四天災者が[灼炎]ことイーグ・フェンリー。

彼の人物も今ここに居るからだ。

合計13人。通常と異常が一緒くたとなって、この場に居るからである。

今から迎えに来る行商人が耳先をピンと伸ばして指先爪先をびーんと伸ばして。

驚愕するような面々が総揃いだからであった。


「何この状況」


「スズカゼ、早く菓子」


「そういう問題じゃないやろ!? これ旅行やなくて拷問やん!!」


「拷問言うな。普通にたのしーたのしー旅行じゃねーか」


「普通に楽しい旅行というのは仲の良い人達でゆっくりと楽しむ物だと思います、ゼルさん」


「旅行の楽しみ方も人それぞれだろ」


「団長、これでは最早、旅行ではなく遠征では……。と言うか私達って要ります?」


「良い修練じゃねぇか。お前達も護衛だ」


坦々と言葉を吐くゼルだが、それに反してスズカゼ達の表情は段々と青く染まっていく。

この場を気にしないサラとファナとメタルの精神力は異常とも言えるのだが、まぁ、それはいつもの事だ。


「おい、レンが見えた。全員、荷物を持て」


「指図するな、獣人風情」


「ファナのこの言葉を聞くのも久々だねぇ」


「バルド。お前、何かオッサンくさいな」


「……メタルさん? 私はまだ若いと思うんですがね?」


下らないやり取りを行っている内に、レンは彼等の元へ到着した。

まずジェイドとハドリーを見てにやりと頬端を崩し、次にスズカゼを見て一礼する。

デイジーやサラには挨拶をして、ファナには少し引き攣り気味の笑顔を。

そして、あぁ、今日は他の面々も居るのかという感じでそちらに振り向いた瞬間、耳先をピンと伸ばし指先爪先をびーんと伸ばして驚愕していた。




【サウズ平原】


「うん、悪くない」


獣車の乗り心地を真っ先に口に出したのはバボックだった。

ここに来るまでも軍のそれに乗ってきた彼だが、軍用の獣車は、それも大総統用のは非常に乗り心地が良い。

だが、こちらは所詮、[擬装用]の獣車だ。

国家の重鎮達が秘密裏に外出する際に用いられる、外見こそ質素だが中は頑丈な獣車である。

決して大総統が乗ってきた軍用のそれには及ばないだろう。


「これの乗り心地が良いのは君の国の技術者の腕が良いからかな? それとも、この獣車の運転手の腕が良いからかな?」


「レンの腕だろ? アイツの運転は暴走さえしなけりゃ良いモンだぜ」


「ふむ。サウズ王国は良い人材が多く居るね。羨ましいよ」


「そっちの人材が乏しいだけだろ? ……良い人材が居るかも知れねぇ獣人を餌にするからだ」


「はっはっは、仕方ない事でもあるんだけれどね。しかし人材が乏しいとは言ってくれるじゃないか。ネイク、彼にオートバーンを紹介してあげなさい」


「断ります」


「……断られてしまったよ」


「下らん言い合いをするな。バボック、メタル」


「イーグ、これは戯れさ。世界を旅している彼だからこそ客観的に話が出来る。自国贔屓なしでね」


「戯れは結構。だが、それを彼の場所でも行うつもりではないだろうな」


「彼の場所、ね。はっはっは、君がそんな言い方をするとは!」


「俺も所詮は幾戦場に生きる屍だ。脳無く能を持ちて力を振るう骸でしかない事など重々承知している。……だが、それでも今から向かう場所が[世界の中心]と化す事は知っているんだよ」


「大袈裟だね」


「むしろ過小評価だと思うがな」


彼等の言葉の応酬を前に、メタルは何処か不満げな表情を浮かべていた。

それに気付いたバルドが、納得いきませんか? と言葉を掛けても、彼は口を開く事はない。

見かねたメイアが彼の名を呼び、こう口にする。


「話、理解出来てる?」


「た、たわむれ辺りまでな」


「……あっそう」


安定の馬鹿である。


読んでいただきありがとうございました

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