表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣人の姫  作者: MTL2
森の魔女
138/876

材料採取

「しっかし、面倒な事この上ねぇな」


その木の実を拾い集め、メタルは呆れ気味に息をついた。

彼の背負う木籠には今し方拾い集めたような木の実と同じような物が幾つも入っている。

その数は十や二十ではなく、既に百を超えていると行っても良いだろう。


「見た事の無い実だな……。いや、ペクの実に似ているか?」


「カーメルの実だ。ペクの実の亜種みたいなモンで、毒がある」


「……よく知っているな」


「マズいんだよ、これ。食うと全身が痺れて三日は動けなくなるらしいぞ」


「ふむ、そうなのか。森の魔女……、イトー殿に聞いたのか?」


「俺は特に効かなかった」


「食ったのか!?」


「初めてここに来た時にな。餓死しかけてて……」


メタルは懐かしそうにそれを眺め、木籠へ放り込む。

その瞳は確かに懐古のそれなのだが、微かに後悔の色も混じっているようにも見えた。

特に効かなかった、とは言えども相応の思いはしたようだ。


「しかし、このカーメルの実にパリコ草、アンガルドルマ大虫にリリンソン鳥の羽……、その他諸々。幾つか毒のある物もあるが、これ等は別に私が居なくとも集められたのではないか?」


「質の良いモンが集められたじゃん」


「あぁ。確かに質の良い物であれなあるほど、作られる物質の性質は向上するだろう。……だが、本当にそれだけだろうか」


「……何が?」


「イトー殿は何と言うか、心なしかだが……、私を遠ざけようとしていたように見えた」


「……気付いてたのか」


尾尻に木の葉が着くのも気にせず、メタルはその場に腰を落とす。

木籠も下ろして、一時の休憩を行うかのようにだ。

メタルはリドラにも腰を下ろすよう勧めるが、彼はそれに従わなかった。

ここに来るまでの、触手の一件が彼に警戒心を抱かせているのだろう。

だが、メタルは大丈夫だ、と言い切ったのだ。


「イトーはお前を警戒してる」


「……どういう事だ? 私に敵対心などないぞ」


「そういう事じゃねぇ。何だか解らねぇが、アイツは何かを隠してる。……それが俺達に有害なことじゃねぇのはメイアと俺が確認済みだから心配しなくて良い」


「やはり、貴様等は知人同士だったのだな」


「あぁ、大分前にな」


「だが、それとこれとは話が別だろう。どうして私が遠ざけられる? 何か警戒されるような事をしたか?」


「……ここな、俺が座って良いっつたのは何でだと思う?」


「いや……」


「この森の中の、殆どの生物はイトーの手中にある。お前を襲った触手も、お前を転ばせた鳥も、服にくっついてきた虫もな」


「使霊だ、と。その話は聞いていたが……」


「お前を襲わせたのはイトーだよ」


「なっ……!?」


「疲労させるためにな。現にイトーの家の中を観察する余裕なんて無かったんじゃないか?」


「確かにそうだが……」


リドラはイトーの家に入るなり、疲労いっぱいで今すぐにも眠ってしまいたかった程だった。

メタルの言う通り、彼女が自分の疲労を狙っていたのだとしたら、それは大成功したことになる。

現に自分は部屋の風景に関心こそすれど、それを追求しようとはしなかったからだ。


「……だが、メタルよ。それを私に話したとして、私が彼女を調べようとするとは思わなかったのか?」


「今の話聞いて,そんな地雷原に飛び込むような馬鹿か? お前」


「……それもそうだが」


「メイアが言ってたよ。そこまで短慮じゃない、ってな」


苦笑するように、リドラは微かに口端を緩めてみせる。

確かに彼の、いや、彼女と言うべきか。

その通り、自分はそこまで短慮なことをするつもりはない。

森の魔女、イトー・ヘキセ・ツバキが如何なる人物であろうとも。

自分の目的はスズカゼ・クレハの回復。それ以外の何でもないのだ。

謎があるならば解きたいというのが性分であるのは否定しない。

しかし、危険を冒してまでそれを追求しようとなどーーー……。

況してやスズカゼの命が掛かった状態で、それを行おうなどと。

どうして思うことがあろうか。


「……謎が全て解明される訳ではない、か」


「うん? どうした?」


「いや、何でもない。……それより、材料はこれで全てだな」


「ん、そのはずだ」


見れば、木籠の中には山のように様々な物が積み重なっている。

特に最後に拾ったカーメルの実が最も多い。表面上を覆い尽くしている程だ。

これで人体が構成されるのかと聞かれれば、自分はそちら側の知識は決して多く持ち合わせて居る訳ではないので、簡単に意見を述べることはできないだろう。

今は森の魔女ことイトーだけが唯一、スズカゼを救えるのだ。


「……だからこそ、だな」


だからこそ。

彼女が自らを遠ざけるのならば、遠ざかろう。

彼女が自らを嫌うのなら、嫌われよう。

それでスズカゼが救われるというのならば安い物だ。


「[鑑定士]も楽ではないな」


「仕事も多いだろーしな。……ま、頑張れ?」


「疑問系で言うな。反応に困る」


「なっはっは! まぁ、仕事が多いって事は食うモンに困らねぇし人に頼られてる、って事だ。良いことじゃねぇか」


「……貴様に言うと、酷く実感がこもっているように感じられるな」


「知ってる? 食堂で飯を食う、あの辛さを。最近は湖で魚捕ったりしてんだぜ」


「…………働け」



読んでいただきありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ