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<ウサうさネコかみ>もふけも装備のおれたちは妹たちを助けるためにVR学園闘技場で成り上がります!~ティアブラ・オンライン~  作者: 日向 るきあ
Stage_9 決闘、黒猫VS銀狼!

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9-6 トウヤ・シロガネの再訪

「……またお前たちか。

 これからお前たちへの事情聴取を始める。何か質問はあるか」

「ええと、なんでまた『トウヤ・シロガネ』がおれたちの聴取を……?」


 これが小説ならば、まさしく天丼というやつだろう。

 聴取にきたのはまたしてもトウヤ・シロガネ。

 現役警察官にしてエクセリオン。そんな彼がホイホイこんなとこにきてていいものかと思ったが、統括理事会メンバーが起こした事件、しかもご禁制薬物も絡んでいるとなれば、それなりいろいろあるものらしい。


 果たして、シロガネ氏が来たのは正解だった。

 アスカの弁によれば、これはα候補として行った『泳がせ捜査』であるとのことだったが、その対象が問題だった。


「お偉方は絶対に認めないと思いますが、『ドラゴン』への迫害は、国の未来を担う未成年への犯罪行為は高天原に実在している。

 俺はずっとそれを白日のもとに晒す機会を狙っていた。

 理事会がワスプ戦を持ちかけてきたあたりから、俺はずっとイツカの身辺に注意を払ってきた。

 果たして、レイン理事がわかりやすく接触、アレを使ってきた。

 俺は、計画通りにことを進めた。

 カナタは俺の指示で、証拠となるステータス画面のスクショを撮ってくれた。

 そのことで、複数の人間の手になる、揺るがぬ証拠がそろった。

 イツカは俺の意を汲んで、ミライとカナタがキュアをすすめるのを断り、あえてワスプにたかられてみせてくれた。

 このことで、おれが怒りの断罪会見へと動き出すための、お膳立てが整った。

 全ては、そういうことです」


 もはや理事一人をどうこう、なんて次元じゃない。

 ぶっちゃけ、月萌に激震を走らせる内容だったのだ。

 いや、もうとっくに走ってるといえば走ってるのだが。

 チラッとチェックしたニュースサイトは、どれもこれも沸騰している。

 一体誰がやったのか、疑惑の残る試合や、ラビットハントのまとめがタイミングよくアップされ、火に油を注いでいる。


 それでも、兎耳のエクセリオンは終始冷静に聴取を進め、調書を取っていった。

 最後に彼はこう告げて、席を立った。


「……事情はよく分かった。

 たった今、マザーの決断が下された。

 月萌国からのとがめは、お前たちにはない。

 民をむしばむ真実であるならば、民に知られ民に裁かれるべきことである、とな。

 しかし、危険薬物を発見しながらしかるべき先への報告が遅れたのは、望ましからざることだ。

 国と民を守るαの候補生として、今後より一層自覚をもって努めるよう。いいな」



 学園メイドに送られてシロガネが出ていくと、イツカがんーっとのびをした。

 そうして、待ちかねていたように部屋を飛び出していく。


「よっしゃー、無罪放免! 軽くなんか食って闘技場に戻」

「待て馬鹿猫」


 いや、飛び出そうとして首根っこ捕まえられてソファーに戻された。

 下手人はノゾミ先生だ。ちなみに、かなり怒っている。


「お前たち、正座でなくていいのでそこに座れ。

 いまからハヤト以外に説教をする。しっかり聞くように」


 はたしておれたち……イツカ、アスカ、おれとミライが先生の対面にかけると、びしっと雷が落ちてきた。


「なぜおまえたちだけで始末しようとした。

 イツカは下手したらワスプに倒されていた。

 アスカ自身もあれでやつらの恨みを買った。

 カナタとミライについては、押し切られた側面はあるが……。

 それでも、この中の誰か一人でも、理事の不正を疑ったその時点で申し出ていてくれていれば、俺たちの方で合法的に奴をとらえ、お前たちに害の及ばぬ方法で処理もできたものを」

「すみません……」


 たしかに、その通りだ。

 たとえアスカとイツカを信じてやらせるにしたって、その先に一報入れておくべきだった。

 ミライ、そしておれは頭を垂れた。

 けれどその瞬間、激しい声が耳を打つ。


「そうしてなにも変わらないまま?

 あいつは『合法的に』取り調べを受け、『合法的に』無罪放免となる。

 そしてまた、ちょろちょろと妨害工作を仕掛けてくる。

 俺らに手を出せばああして赤っ恥をかかされる。そのことはほかの奴らにも知らしめておかないと。じゃないと俺はハヤトを守れないっ!」


 アスカだった。

 今まで見せたことがないような表情、いつにない剣幕でくってかかる。

 それでも、先生は動じない。


「なら聞くが、もしもお前に何かあったら、誰がハヤトを守ってやるんだ?

 体だけでない。その心も含めてだ」


 アスカの反論は、なかった。

 はっと息をのんだアスカは、小さく口を開けたまま、固まっている。


「わかったら、お前もちゃんと守られろ。

 ……守り切れなかったもののある俺たちに言われても、不安は残ると思うけれどな。

 せめて、ならば巻き込んでくれ。俺たちの手の届かぬ死地に、お前たちだけで行こうとしないでくれ。何度でも言う。……頼む」


 先生が、頭を下げる。

 静寂が、室内を満たす。


「……いえ。

 それは、おれも、おなじですから……

 すみませんでした。

 もう、繰り返さない。約束、します」


 やがて発されたアスカの声は、とぎれとぎれにかすれていた。

 深く頭を下げ、そのままうつむくアスカ。

 下げたうさみみで、さりげなく顔をかくす。

 それでもその肩は、震えていた。しばし、そちらは見ないでおくこととする。


「俺からも、いいですか」

「ああ」


 けれど、事態はまだ終わらなかった。

 今度はそのとなりで、ハヤトが声を上げたのだ。

 ハヤトはイツカを見据え、問いを発する。


「イツカ。

 さっきもシロガネに言ってたが、お前この件、『なんとなくだがわかっててかんだ』、ってことでいいんだな。

 それについて、どう思ってる」

「ああ。

 センセに連絡しないのはよくなかった。

 けど正直言えば、今回のはこれでよかったと思ってる」

「っざけてんじゃねえっ!!」


 けろっと言い切るイツカだが、ハヤトは完全にブチ切れたようだ。

 立ち上がり、がっと襟首をつかみ、イツカを怒鳴りつけた。


「危険なことはわかるだろうが! お前も! アスカも!!

 あそこでお前がキュアもらっとけばこんな事態になってなかったんだぞ!!

 そんな判断力でこの先誰かを救えるか!!」

「いやっ、結果オーライだったじゃ」

「何がオーライだ!!!

 ……お前、もうやめろ。アイドルバトラーじゃない。剣闘士自体をやめろ。

 何がほんとにムカついてるのか今わかった。お前は平気で自分を差し出しやがる。

 デビュー戦から始まって、お前がとっこんでったのはむちゃくちゃなバトルばっかりだ。そして今度はこれだ!!

 さっき負った傷は本来お前が負うべき傷じゃねえだろうが! どうせおとりになるんなら無傷でやりやがれ!! それができるようになるまで、闘技場になんか出るな!!」

「……ごめんなさい」


 そこへか細く響いたのは、ミライの声だった。

 いつの間にかイツカとハヤトのそばに立ち、小さく震えながら、それでもふたりに頭を下げている。


「ごめんなさい。おれが、……

 おれが、ちゃんとやれてたらよかった。

 イツカをとめて説得してキュアかけて、ちゃんと連絡もして、……

 そもそもイツカたちがアイドルバトラーなんかやってるのも、おれが、……おれがダメだったから……

 ごめんねイツカ。おれのせいで。

 ハヤトくん、叱るならおれを叱って。イツカはわるくなんかない。ぜんぶおれのせいなの。おれがハヤトくんを心配させたの! おれが、……」


 こらえてはいるが、ミライの声は湿っていた。

 ハヤトががくぜんとした顔で、イツカから手を放す。

 そしてミライの前に腰をかがめ、壊れ物でも扱うように、細い肩を支えた。


「ちが、……そうじゃない。いまのはあくまで、……

 お前はきちんと考え、できることをやったんだろう?

 そもそも悪いのは仕掛けてきた奴らだ。お前もアスカも、断じて悪くなんかない。

 いいかミライ。俺がイツカに怒ったのは、奴が『なんとなく』で危険に突っ込み、平気でボロボロになったからだ。

 かんしゃくを起こしたのは、悪かった。

 俺の怒りを、わきで聞いてるお前たちにも押し付けちまった。

 そこは俺が、無思慮で未熟だった。

 だから、お前が全部悪いなんて、どうか思わないでくれ」


 小さな弟にするように、優しく懸命に説くハヤト。

 ミライもすなおに説得を受け止め、気を静めたようだ。


「……そう、だね、……うん。

 全部、おれがわるいって、……わけじゃない、よね。

 おれこそごめんねっ。ハヤトくんを、心配させちゃったね。

 みんなもごめんね!

 でも、気を付けるところは、ちゃんと気を付ける。

 おに……先生に連絡しなかったのは、たしかにおれの判断ミスだし。

 繰り返さないようにしなくちゃね!」

「ちゃんとわかっているみたいだな。その調子だぞ、ミライ」


 小さなその手を、ハヤトの大きな手に重ね、おれたちみんなに笑顔をくれた。 

 ほんわかとした雰囲気の漂う中、ノゾミ先生はお兄ちゃんの顔でミライの頭を撫でると、もう一度先生の顔になる。


「それで、どうする。

 ハヤトが今の発言を取り下げず、イツカがそれに従うというなら、決闘自体が立ち消えになるが……」


 ハヤトはイツカにむきなおり、申し訳なさそうに頭を下げた。

 が、それでも決闘の取り下げはなさそうだった。


「……さすがに今のは言い過ぎた。

 あいつら相手にノーダメージになるまで闘技場に出るなとか、無茶苦茶もいいところだった。

 それは取り下げる。悪かった。

 だが、『突撃ドラゴン』がアイドルバトラーをやるなんてのは、それでも全力で止めなきゃならない無茶だと俺はさらに強く思うようになった。

 改めて言いたい。

 イツカ、俺と全力で戦ってほしい。そして負けたら、アイドルバトラーはやめてくれ。

 もう少し強くなるまででいい。俺がお前を鍛える。その間のファイトマネーも、全部お前たちにやる。

 だから、この決闘を受けてくれ」


 対してイツカは、静かな笑みをたたえて答える。


「俺はもとからそのつもりだぜ、ハヤト。

 全力でやろう。で、負けたらアイドルバトラーはやめる。で、お前に鍛えてもらう。

 ただ、心配かけたのは……

 あ、これは決闘の後にするか。じゃないと、何か気、抜けちまいそうだ」


 しかしやつめは、素直に謝るかと思いきや、挑発ポーズをとってみせつつニカッと破顔するのであった。

次回やっと本戦(本当です)!

コメディタッチな始まりとなります。お楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[良い点] それぞれの『想い』が交錯してすね。 皆が相手を想い、怒り、泣き、近づいていく感じが素敵です(*^^*) ハヤトの皆を想っての怒りがビンビン伝わってきました。
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