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なろうラジオ大賞2 • 3 • 4 • 5 • 6 • 7 参加作品

雨宿りしながら僕は雨に唄えばのフレーズを口ずさむ


僕は雨宿りする為に駆け込んだ避難小屋の窓から、空を見上げる。


空は黒く厚い雲に覆われていて雨はまだまだ止みそうになかった。


空を見上げていた目を下に向ける。


谷間を挟んで赤茶けた禿山が連なっていた。


昔、200年以上昔だったら山々は赤茶けた禿山では無く、木々が生い茂り緑色に染まっていたと聞く。


でも今はそんな光景は何処を探しても無い。


昔は空から降って来る雨はただの水だったらしいけど、今は酸性雨、それも高濃度のアシッドレイン。


避難小屋の外に出て雨に打たれればドロドロに溶けて骨も残らない。


谷間の向こう側に見えている禿山のように。


18世紀の半ばから始まった産業革命、産業革命によって得られる豊かさ便利さを人々は手放せず、21世紀の後半まで産業革命によって出る負の部分には目を背けていた。


その結果20世紀の半ばから酸性雨の脅威を唱える人たちが現れたけど、それらは豊かさや便利さを求める人たちには無視される。


だけどそれまで山々の木々を枯れさせる程度の酸性雨だったのが、21世紀の半ばを過ぎた辺りからドンドン濃度が濃くなって行き、22世紀になる少し前くらいになると人は地上で生活する事はできなくなり、地下深くで暮らすようになった。


地上にいるのは僕のように、観測機器の点検修理の為に派遣されて来た者たちだけ。


当然地上には呼吸に適した空気は存在しない。


僕が背負っている酸素ボンベに充填されている空気は居住区より更に深い地下から汲み上げた地下水を、何度も何度も濾過した水から得た物。


僕は避難小屋の中の椅子の上で膝を抱え、ザァーザァーと音を立てて降り落ちる水滴を見つめる。


地面に落ちシュン! シュン! と土や石が酸性雨によって溶けるのが見えなければ、地下深くにある居住区で見た雨に唄えばの映画のワンシーンのようにしか見えない。


僕は窓の外のザァーザァーと降る雨を見ながら、何時しか雨に唄えばのフレーズを口ずさんでいた。





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