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反省10:王国幹部を殺っちゃいました

「——ダイバナ、ダイアナ゛」

「そうよ。あの小娘が何を考えたか我が国に向かってきているらしいわ」


「そうガ。あいつが。そうだな。あいつがいたから俺はこんな姿になったのだったな」

「息子よ。そんなことを言ってどうする。覇者たるもの、過去を悔やむべきではない。それに今のそなたならばあのような小娘相手にする価値もなく蹴散らすことが出来るであろう?」


「もちろんだ」


 カールズは蘇ってから変わった。

 父や母に対する敬意は持っているものの、態度は尊大で言葉も拙くなっている。一度死んだだけではこうはならない。蘇ってすぐだけではカールズの生まれ持っての性質は変わらない。王族として培われ凝り固まったプライドはその程度では矯正されなかった。

 だからこそ何度も何度も逆らうたびに上下関係をわからせるべく調教を受けていた。

 その弊害として元々低かった知能はさらに低くなってしまったのだった。


「すぐに終わらせテヤル。ダイアナ。お前がいなければ僕はもっと――王だった」


「……これが今の王国」

「我々もすぐに国を出たから知らなかったが、随分とまあ様変わりをしているな」

「本当に。これじゃあ、王都観光をする気になりませんわ。あまりにも陰鬱なんですもの」

 この状況で観光を少しでもしようとしていたことに驚きです。仮にも戦争中だというのに。どこまでも暢気な人です。


 きっかけは私そしてダイアナ・フォン・クインテットだとしても魔族に魂を売り払った時点で敵対することはわかりきっていた。

 そうだ。もはやこれはダイアナとカールズの因縁だけの話ではない。人類と魔族の生存をかけた戦争なのだ。


「その割には私達は魔族の目的も何も知らないんですよね」

「それも今回の戦いで判明するのではありませんか? さすがに捨て駒に一方面を任せるとは思えません」

「……そこが私には不安なのです。私の中に残るカールズの印象としてはおつむが足りないというか、なんというか」


「ただの傀儡として座らせている可能性があると?」

「そうです」

「あっ、それは私もそう思います!」

 ブリジット、あなたそんな相手をダイアナから奪ったの? 本当に何がしたかったのよ。


「政治に関しては一応前王夫妻も傍にいるらしいですし? 後は力で押し切ればいいんじゃないですか? 担当は荒事だけでしょう?」

「ほんと。ほんと。あの馬鹿王子が難しいことなんてできるわけがありませんから」


「じゃあ、サクッとやっちゃってもいいのかもしれませんね。どうします? 私がやっても構いませんけど」

「いえ、因縁があるのは私ですから。今回は私が。それに師匠がやると話も聞けなくなってしまうかもしれないでしょう」

「なんだね人を破壊の権化みたいに。加減はするさ。相手が弱すぎなければね」

 それが怖いというんですよ。


「相手はゾンビですから首を落としたぐらいでは死なないでしょう。やっぱりここは私のギロチンが適任でしょう」

「あらま、今回はアレのお披露目はなし?」

「使うのは奥の手にしておくべきでは? あのデュラハンが黒幕と決まっているわけでもありませんし余計な情報を相手方に渡すつもりはありません」


「——よく来たわね小娘!!」

「これはこれは王妃様、それとも太后様とお呼びするべきですか」

「相変わらず憎たらしい。それに可愛いカールズを誑かした阿婆擦れに裏切り者までいるとはね。これは本当の意味での記念日になるわ! さあ、可愛いカールズ。あいつらをさっさと捻り潰してちょうだい!」


「あんなの息子を狙っていたなんて」

「……ああ。本当に同感」

 そこ、変に刺激しない!


「……あら? なあにその小汚いガキは。冥途のお供にしてはちょっとばかし身なりが貧相ではないかしら?」


「とりあえずうるさい口は閉じてもらいましょう」


「——はっ?」

 油断しているのが悪いんですよ。というわけでうるさい口には黙ってもらいました。正確にはうるさい口を使えないように首から上を切り離させてもらいました。


「母上!! 貴様ああああ!!」

「少しは人間としての感情を思い出せましたか? だとしたら残念です」

 化け物として殺してあげたかったのに。


「あの頃と違うのはあなただけじゃありませんよ」

 手足を瞬時に拘束。そして、拘束具に合わせるように出現した刃が四肢と首を切断する。

「修業によっていくつもの刃を同時に出すことが可能になりました。まだやるというのなら面倒ですが細切れになるまでやってあげますよ」

 それでも再生するならこのギロチンの真の力で以て滅してあげますけど。


「ところで一つ質問良いですか?」

「ぐ、ぐぐぅう」

 ゾンビってこういう時便利~。バラバラになったぐらいじゃ死なないんですもんね。まあ、師匠だったらバラバラにした段階でゾンビだろうと吹き飛ばすことが出来ると思うけどね。


「あの下種な首なしの居場所とそいつの目的を教えなさい」

「……あのお方のことは知らん! 貴様のような奴に教えるわけもない!」

「やっぱりあなた程度じゃ駄目ですか。だったら知っていそうな人に聞いてみましょうか」


「——ねえ、国王様?」


「ふっふっふ。私に? たかが人間の私に聞くかね?」

「ええ、あなたですよ。だってあなたは本当の国王様なんですか? そもそも国王様というのはもっと矮小な人間だと思っているんですよ。少なくとも戦場に出てくるタイプではありません」

 出て来るにしても強い者の陰に隠れるタイプですもの。


「王の形を奪っているあなたは誰ですか?」

「グハハハ、我はデュラハン様の第一の部下悪魔貴族の一体デモンモン様だ!」


「「「へぇ~」」」


「リアクション薄いぞ!」

「……どうでもいいでしょう。というか、王妃とかは……知らなかったようですね」

 カールズ様が呆然と元王様を凝視していますし。いつ頃入れ替わったのか。王妃様は知らなかったみたいだけどね。


「……はぁ、もういい。お前達のような輩にわかってもらおうとは思っておらん。だが、せっかくだお前達とお前達が持ってきた魔法道具を奪っていけばあのお方の覚えがますますよくなるに決まっているからな!」

 予想通り、カールズはただの傀儡でしたね。


「それじゃあ、第二ラウンドといきましょうか」

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