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第43話 ピクシー2

そして目が覚める。ぼぅっとした頭で少しニヤけていた。


「もう、勇者さまったらぁ~……」


現実になかなか戻れずにいた。少しずつ夢との境界線をさまよい、ようやく本当の朝に立ち返ると、恥ずかしくて真っ赤な顔を抑えた。


「ゆ、夢? やだぁ。私ったらはしたない。なんて恐れ多い思いを……」


なかなか勇者のいるほうを見れない。少しずつ顔を動かして勇者の寝ていた方を見てみると、そこに勇者はいなかった。


「勇者さま?」


驚いて跳ね起きると、コボルドのハスキーもいない。

ハスキーがまた寝返ったのかと少しばかり疑ったが、今の彼がそんなことをするわけないと首を振った。

すると、草むらがガサガサと音を立てたかと思うと、フェニックスの尾羽がひょいと顔を出して、その下には勇者の満面の笑みが現れた。


「おねえたん、見てー」


見ると、ミューが縫った服のあちこちにかぶと虫やクワガタ虫がしがみついている。


「これ、かっこいいでしょー。おじたんにとってもらった」


そこに少し遅れて現れたのはコボルドのハスキー。


「よう。起きたか。よく眠って寝言言ってたから寝かせといてやったよ。ほれ見ろ。鳥モンスターから卵をかっぱらってきた。ゆで卵を朝食にしようぜ」

「わぁいわぁい。タマゴだ。タマゴだ」


喜ぶ勇者だが、ミューは顔を真っ赤にして立ち上がり、ハスキーに詰め寄った。


「ね、寝言? 寝言ですって? 聞いたんじゃないでしょうね? いやらしい! プライバシーの侵害だわ!」


ハスキーも余りの剣幕にタジタジ。


「い、いや、全然聞いてない。なんか、モゴモゴだったし」

「そ、そう。だったらいいのよ」


「じゃ、ゆで卵を作ろう。ボーズは黄味がカチカチが好きらしい」

「お塩。お塩ボク削りたい!」


「そうそう。小さいが岩塩も見つけたんだ。ナイフで削って細かくしようなぁ~……。ところでさぁ、ミュー」

「なに?」


「ユークって誰?」

「聞いてるじゃないバカ!」


ミューは鍋の底でハスキーの頭を叩くと、それに驚いて勇者の服にしがみついていた虫たちは飛び上がってしまった。


朝食もすみ、荷物を抱えて荷車に向けて出発。

すると、近くにピクシーニンジャーズが夜通し攻め続けた疲れで傍らに固まって寝ていた。


「あ。おねえたん子鬼だよ」

「ホントですね。このくらい小さいとカワイイものです」


「ボクのオチンチンもカワイイんだよ」

「……知ってます」


知っていたし、今関係ない。

しかしミューはこの小さい幼児を夢のせいか意識してしまうのだった。

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