第18話 レイヴン2
一方、丘の上で子どもたちはそれを見ていた。
「た、大変だ! 村が!」
「今から勇者が向かっていっても時間がかかる!」
「おい、勇者! 得意の剣術でなんとかならないのか?」
しかし勇者は剣を持っていない。
聖剣グラジナを持っているからこそ、神がかりの剣術が発生するのだ。
勇者は大きくブランコをこいだ。
「みんなでボクの背中を押して!」
「あ、遊んでる場合じゃねーぞ?」
「いいから!」
子どもたちに大きく押されながら自分でも、バネを使って大きく漕ぐ。
やがて縄がかけられた大樹の枝と水平になったところで勇者はブランコの板を思い切り蹴って空中に飛び上がった。丘から飛び出して眼下を覗いて見ればそこで始めて村の様子が見える。カラスの大群で真っ黒だ。
その隙間に聖剣グラジナを抱えてカラスに襲撃されるミューの姿がある。
「あっ! おねえたん!」
勇者の体は空中で再頂点に達し、そこから膝を抱えて勢いよく縦に三回転。
「どうするつもりだろう?」
「剣もないのに」
子どもたちが丘の端から下を覗くと、勇者の目は輝きに満ち、空中で魔法の言葉を唱えていた。
「おおがみよ おおがみよ おちからをおかしください わたくしのそばにきて かたきをうちはたしてください ヒューレのこボルーダよ きみはうちあまる おおがみのおちからをおさえ わたくしのゆうじんたちを きずつけないでください きたれらいりゅうのもん!」
得意の稲妻の魔法。しかも上級の大魔法だ。
「ギドライガーっ!」
途端、勇者の指先から紫色の光が飛び出して、大きなカラスたちをあっという間に焼いてしまった。
だが、このままではあの小さい勇者は地面に叩き付けられてしまう!




