第17話 レイヴン1
夜、二人は一つの寝台で寄り添いながら眠った。
久しぶりのフカフカのベッドに熟睡。
次の朝、勇者は珍しくミューより先に目を覚ました。
「おねえたん。朝ですよ~。朝ですよ~」
「う、うん……」
しかしミューは寝返りをうって眠ったままだ。
勇者の部屋は1階だった。そのまま庭を見ると、昨日遊んだ子どもたちがそこでにこやかに待っており、手招きをした。
「なに?」
「オマエすげーなー! 勇者だったんだな! 村を救ってくれてありがとよ! よし。オマエに秘密の場所を見せてやろう」
秘密と聞いて勇者は嬉しくなった。幸いミューが起きる気配は無い。出発前に少しくらい遊んでもいいだろうと、マントを羽織って村の子どもたちのところに急いだ。
「あれ見て見ろよ」
道具屋の息子が指差した先には丘の上の大樹。
そこが秘密の場所らしい。
集落の裏手にある柵の扉から出て丘に登る。
たちまち集落を一望出来る場所についた。
「うわーー! ちれいだなぁー」
「へへ。ありがとよ。だがそれだけじゃねぇんだ」
子どもたちがさらに指差したのは大樹。その下には縄と板で作られたブランコがあった。
「わぁ凄い! おもちろそう!」
「へっへー。だろう? 今日は特別にオマエを乗せてやる。村を救ってくれたお礼だからな」
勇者は子どもたちに支えられてブランコに立ち乗りをする。
背中を押されて大きく揺さぶった。
「ひょーー。ひょーー。楽しいーなーー!」
「へへ。だろう?」
しばらく揺さぶられて遊んでいたが、丘の下が騒がしくなり始めた。おかしな声も聞こえてくる。
「グァア! グァア!」
と言う声に、一人の子どもが眼下にある村の様子を見に行くと、なんと大きなカラスの大群だった。
作物を食い荒らし始めている。このままでは作物に飽き足らず、人間も襲い出すかも知れない。
その声でミューも目を覚ました。大ガラスの大群のせいで朝なのに暗い。外では農具や棒を持った男たちがカラスたちを追い払おうと必死だ。
「大変! 勇者さま!」
しかしベッドの上に勇者はいない。
ひょっとしたらすでに外に出たのかと窓から見てみたがいない。
聖剣グラジナは置きっぱなしだ。
「ひょっとして、剣を持たずに遊びに行ったのかも?」
ミューは聖剣を抱えて外に飛び出した。
そこをカラスたちが気付かないはずはない。
カラスはきらめくものが好きだ。聖剣グラジナにそれを感じ一斉にミューに襲いかかってきた!




