9-7 お・・・お兄様が・・・おとな?
お兄様と話しているうちに涙も止まりました。
いつの間にか部屋に居たキュリアさんが、濡らした手巾で顔を拭いてくれました。
「どう、落ち着いた。みんなを呼んでこようか」
「まだ、ちょっと・・・」
「うん。わかった。じゃあ、もう少し僕と話をしようか」
「はい」
ベッドから降りてソファーの方に行きました。
キュリアさんが紅茶の用意してくれました。
一口飲んで気持ちを落ち着かせます。
「何の話をしようか」
「アルンスト侯爵家とルートガー公爵家にも連絡したんですね」
「ああ、うん。おじいさまがね」
「お父様も仕事の途中でしたよね」
「うん?ああ、もしかして、王宮にこのことがばれたと思ってる?」
「違うのですか」
「うん。丁度いい口実があったから、それを使ったよ」
わからなくて首をかしげます。
お兄様はやわらかく微笑んでいます。
「今、隣国の公爵であるキャバリエ公爵がこちらに向かってるよね。それで、トラブルが起こったと連絡がきたことにしたんだ」
「えっ、それは・・・」
「もちろん、うちと親戚ではあるけど、隣国の重鎮であるキャバリエ公爵に失礼があってはいけないから、
外交担当の父上は状況を確認するためにも、帰ってきたのさ」
「いいのですか、それで」
「大丈夫だよ。ちゃんとキャバリエ公爵のもとに迎えをだしたから」
それでいいのでしょうか。
私にはわからない政治的な事でそうしたのでしょうか。
お兄様の手が顔に伸びてきて眉間を突っつくように触りました。
「セリア、そんな顔ばっかりしてるとしわができるよ」
「え、あっ」
お兄様がクスクス笑います。
「大丈夫だよ、セリア。セリアが心配するようなことは起こらないから」
「でも」
「でも、は無しだよ」
「・・・」
「そろそろ、みんなを呼ぶ?それとも、みんなの所に行くかい」
みなさまと顔を合わせるのは、まだ、怖いです。
でも、お兄様が大丈夫だと言ってくれています。
なので、みなさまのところに行きたいと思います。
「みなさまの所に行きます」
お兄様が立ち上がり手を差し出してくれました。
その手に摑まって立ち上がります。
膝がガクガクと震えます。
ベッドからソファーに移った時にはこんなことなかったのに。
「しかたないなぁー」
そう言うと、お兄様は私の手を自分の肩に摑まらせて、軽くかがむと膝の下と背中に手を当てて、私を抱き上げてしまいました。
突然のことに動揺して、私は手足をバタバタ動かしました。
「セリア、動くと落ちちゃうよ」
耳元で聞こえたお兄様の声に私は動くのをやめました。
顔が、ち、近いです。
わたし、お姫様抱っこされてます。
彼女だってされたことないのに。
あの、スチル(より幼い顔)の美しい顔がこんなに近いなんて、心臓バクバクものです。
「首に手をまわしてくれると楽になるんだけど」
言う通りに首に手をまわします。
「じゃあ、行こうか」
お兄様が歩き出しました。
キュリアさんがお兄様に変わりましょうかと言っていますが、お兄様は大丈夫だと歩いていきます。
扉はキュリアさんが開けてくれました。
「なんかおとなしくなっちゃったね」
「・・・」
「もしかして僕がセリアのこと落とすと心配してる?」
「あっ・・・いえ」
「大丈夫だよ。落としそうだと思ったら、下ろすから」
「・・・はい」
「でも、セリアは軽いね。もう少し食べて太った方がいいんじゃないかな」
「う~ん、食欲がないことが多かったから?」
「そういえば、そうだったね。早く体調が安定するといいね」
階段を慎重に降りてくれました。
居間に行くかと思ったら、手前の隣の部屋にキュリアさんが立ち、扉を叩き開けてくれました。
部屋に入るとみなさまが驚いた顔でこちらを見てきました。
お母様は慌てて立ち上がると私のそばに来ます。
「セリア、起きて大丈夫なの」
お兄様が私を下してくれたので立ち上がります。
お母様に抱きしめられました。
「はい。ご心配をおかけしました」
小さな声で返事をしましたが・・・。
私はそこに並べられたものに目を奪われていました。
まさか、これ。
これを、全部?
わたしが?
ほんとうに?
やっちまったい。
いくらなんでもこれは作り過ぎでしょう。
そこにあったのは布の山。
いえ、出来上がった服の山です。
色とりどりのドレスや、紳士服がテーブルの上に並べられていました。
隅の方になぜか、ハサミ・・・。
見間違いでなければ、裁ちバサミと紙を切る用のハサミが!
あははははは、はぁ~。
渇いた笑いしか出てきません。
これ、どうしましょう。
ソフィティア叔母様、ウルリーケ叔母様。
そんな、キラキラした目を向けないでください。
91話です。
はぁ~。
ここにもいました。
年齢詐称疑惑の人が。
いえね。かっこいいんだけどね。
かっこいいんだけど・・・。
ミルフォード、あなた、まだ、10歳ですよ。
何してんのよー!
お姫様抱っこって。
おんぶは?
おんぶじゃダメなの?
さて、次回・・・は、と。
今、調べ物の真っ最中です。
わたし、ドレス、もとい服に、詳しくなくて・・・。
付属品とかもねぇ~。
一応、この世界の服は中世ヨーロッパ風なので、それに準じたドレスや、男性もその頃の服装のイメージでいます。
いますが、よく、分かってないというか?
一応、ルイ14世の時代の服装を参考に考えていたけど・・・。
ボタンが~。
いいの。
この世界はボタンが、まだ、なかったの。
ということで、次回で会いましょう。




