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22話・ストーカー野郎と直接対決 1

 炎天下の中、河川敷を目指して真っ直ぐ駆ける。

 容赦ない太陽の光が肌を焼く。パーカーを目深に被り、サングラスを掛けてはいるが、それでも全てを防ぎきれてはいない。頬や袖から出た手がジリジリと痛む。熱い空気は吸う度に喉をカラカラに涸らしていく。呼吸が苦しい。酸素が足りない。それでも構わず足を動かし、前へと進む。


 ミノリちゃんから体力つけろと言われていたのに、結局なんにもしてこなかった。そのツケを今払わされている。


 ショウゴみたいに車があればすぐの距離なのに、免許が取れない俺の移動手段は自分の足のみ。どうせ金がないから車なんか買えないか。俺ってホントに情けないな。


 ──それなのに、なんでこんなに必死になって走ってるんだろう。






 なんとか河川敷に辿り着いた。

 公園は対岸。

 急いで近くの橋を探し、走って渡る。


 真夏の昼間。日陰は少ない。遊具はどれも金属部分が火傷(ヤケド)するほど熱くなっているから、遊ぶ子どもの姿はなかった。


 その公園の片隅にある東屋(あずまや)のベンチで並んで座る男女の姿を見つけた。一人は見知らぬ男子高校生、もう一人はミノリちゃんだ。困ったような表情で俯いている。彼女の手首は隣に座る男子高校生に掴まれていた。

 それを見て、何も考えずに突っ込む。


「な、なんだよコイツ!」


 突然間に割り込んできた俺に対し、男子高校生が声を上げた。近くで見ると、かなりガタイが良い。ショウゴほどではないが身長もある。

 ソイツは無視して、まずは二人の手を引き剥がす。不意を突いたおかげか、すんなり離れた。


「プーさん……?」


 青褪めたままのミノリちゃんを背に庇い、男子高校生と真正面から対峙する。


「誰だオマエ。なんで邪魔するんだよ」

「…………」

「おい、なんか言えよ!」


 ホント待って、声が出ない。

 数年振りに全力で走ったから脇腹は痛いし、まだ全然呼吸が整ってなくて苦しい。こっちは肩で息をするのがやっとの状態なんだよ。喋るとか無理。

 あー、でもやっと日陰に入れた。日陰最高。ミノリちゃんと公園。こんな状況じゃなければもっと良かったのにな。


 男子高校生……ストーカー野郎・須崎(すざき)は不機嫌さを隠しもせず、突如現れたお邪魔虫である俺を睨み付けている。


「オマエもミノリさんとの仲を邪魔するのか。どいつもこいつも何で僕たちの仲を引き裂こうとするんだよ!!」

「…………」


 須崎の怒鳴り声に、後ろにいるミノリちゃんがビクッと身体を揺らした。俺のパーカーの裾を掴む手が震えている。


「ミノリさん、こっちにおいでよ」

「い、いや。行かない」

「なんで? 僕を怒らせたいの?」


 ミノリちゃんに話し掛ける時の須崎の表情と声は優しいが、圧が感じられた。力で相手を従わせようとする奴の態度だ。間に挟まれてようやく気付けるくらいの違和感。


 間違いない。

 須崎はミノリちゃんを支配しようとしている。

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