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魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第一章 幼年編

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第95話 魔力0の大賢者、ドワーフの歓迎を受ける

「むむむ、しっかし、こんなにあっさりやっつけるなんてな……マジで大賢者ってのは凄いんだな」


 氷漬けになったマグマワームを見ながらドメステさんが唸った。まぁ、マグマと言っても普通のマグマだしこれぐらいならね。


「勿論です。お兄様の魔法にかかればマグマやワームを氷漬けにするぐらいわけがありません」

「まさに朝飯前だね」

「……本当に大賢者の魔法は凄まじい、それに美しい。ワームすら著名な彫刻家の作った氷の彫刻のよう」


 何かまた色々感心されてるけど、そんな大げさなものじゃないんだけどね……それに僕は物理的に温度を下げないといけないから結構動くことになるしね。魔法ならそんな真似もしないでいいんだろうけど。


「でも、これでやっとお父様の剣が打ってもらえますね」

「あ、私も鞍や鐙を作ってもらいたいんです」

「……マゼルもこれで安心」

「い、いや。それは勿論ここまでやってもらったんだから、すぐにでも取り掛かりたい。だが、少し待ってもらう必要はあるかも知れねぇ」

「え? まだ何か問題が?」


 ドメステさんが慌てだした。だから僕もつい聞いてしまった。もしかしてまだ魔物がいたりするのかな? 


「あ、あぁ。実はワームが燃鉱石を随分と喰っちまってな。確保するのに難儀しそうなんだ。勿論! 出来るだけ急ぎたいとは思うんだが」

「あ、そのことでしたか。なら多分問題ありませんよ」


 ドメステさんの話を聞いて納得した。確かに魔炉を動かすには燃鉱石が必須だ。でもそのあたりは想定内だったりする。


「……は? それは一体どういうことだ?」

「はい、見ててください」


 とりあえず氷漬けになったワームは魔石を避けるように粉々にした上で、凍ったマグマを溶かしていった。


「……氷魔法だけじゃなく熱魔法もいけるのか」


 ドメステさんが唖然としていたけど、熱魔法というよりは単純な温度上昇なんだよね。高速振動させた後、気化熱を利用しないで熱をこもらせれば温度は上がるからね。


 そんなわけで、うん、ある程度溶けていったら案の定、マグマはいい感じに固まって鉱石に変化していたよ。


「うん、ドメステさん、これで燃鉱石は大丈夫ですよね?」

「え? お、おいおいおいおい! 確かにこれは燃鉱石じゃねぇか! これは一体どうなってんだ!」

「あ、それはですね」

「……これが、大賢者の錬金魔法!」

「――へ?」

「凄いです! 流石お兄様! これほどまでの錬金魔法が使えるとは! また1つ伝説が!」

「ほえ~本当に大賢者様は何でも出来るのですね」


 いや、その何かこれまた凄い勘違いされてるけど、これはあくまでそういう知識があっただけなんだよね。


 昔、師匠に火系の魔鉱石は炎を吐く魔物が熱した岩を急速に冷やすことでも生まれたりするって聞いていたから、マグマワームが吐き出したマグマでも上手くいくかなと考えただけだし……。


 でも、何か違うとは言えない雰囲気なんだよね……ま、いっか――





 それからドメステさんが早速職人に呼びかけて燃鉱石の採掘作業が開始された。既にある場所は判っていたから砕いてトロッコに乗せてひたすら運ぶだけという状態。


 そのためか魔炉の再開も早かったよ。


「え~と、それでこのヒヒイロカネを加工するのに必要な費用は幾らですか?」


 いよいよ剣を作れる段階に来たから費用を聞いた。お金は、いつの間にか僕用に父様や母様がお金を貯めていてくれたようなんだよね。


 魔物を倒したりダンジョンを見つけたり探索したりでどうしてもと貰ったお金は父様と母様に渡していたんだけど、とっておいてくれたなんて本当に僕は家族に恵まれたと思う。


 だからそこから捻出しようかなと思ったんだけど。


「とんでもない! これだけのことをしてもらっておいて金なんて貰えねぇよ。なんなら逆に金を支払いたいぐらいなんだからよ」

「え? いやいや、僕がやったのはあくまで自分の為ですし……」

「謙遜するなって。大体いくら自分のためだからって普通のやつはあんな化物を相手に1人で挑んだりしねぇって」


 そ、そんなものなのかな? 僕的にはあまり化物って意識はなかったんだけど……。


 とは言え、流石に何も支払わないというのも申し訳ない気がして、話し合った結果、余ったヒヒイロカネを分けるという話に落ち着いた。


「この上ヒヒイロカネを分けてもらえるなんてこんなありがてぇ話はねぇよ。こうなったら依頼された剣も鞍も鐙も最高のもんを用意してやる!」

「ありがとうございます。それで完成はいつに?」

「おう! 明日中には仕上げてやるよ!」


 はや! そんなに早く出来るのか……そこは流石ドワーフだね。


「ならまた明日取りに……」

「は? おいおい馬鹿言っちゃいけねぇぜ。ここまでされてタダで返すわけにはいかないだろう?」

 

 え? た、タダで返せないって、あれ? 何か気を悪くさせることしたかな?


 思わず僕はドメステさんの顔色を窺ってしまったけど。


「当然、今日は宴を開かせてもらうぜ! うちのもんも全員お礼をいいたがってるんだ。上手い飯もたらふく用意するから今夜は泊まっていけ!」

「え? ええええぇえええぇえ!?」


 参ったな。ドメステさんは鼻息荒くして僕たちを招待する気満々だ。でもアイラにも都合があるかもだし、と思ったけど僕となら外泊しても大丈夫とか言って残ることになった。どういう意味だろう?


 ハニーも大丈夫みたいで、僕とラーサは一応目的は母様に伝えているから問題はないね。


 だから好意に甘えることにした。宴には蜂たちも一緒でいいと言ってくれたね。


 そしてその日の夜は飲めや歌えの大騒ぎとなった。勿論僕たちはお酒を呑むわけにはいかないからジュースを頂いたけど。

 

 ちなみにドワーフには女性もいた。驚いたけど女性のドワーフは寧ろスラリと背が高いんだよね。そして皆美しかった。


「ふふ、貴方が大賢者様? へぇ意外と小さいんだねぇ」

「え、え~と……」


 そして何故か僕に密着してきて顎を撫でられた。よ、酔っ払ってるのかな?


「ちょ、お兄様にそんなに近づいたら駄目です!」

「……ラーサに同意」

「あらあら、もしかして大賢者様、もう相手が? うふふ、それなら妾でもいいんだけどね」

「妾ってなんですか?」

「な、なんでもないよ!」


 ハニーが不思議そうな顔で見ていた。うん、そのまま純真なままでいてね。


「ビー! ビー!」

「え? ちょ、なんだいなんだいこの蜂は?」


 ドワーフの女性に気圧されていたところにビロスが乱入してきて間に入ってきた。何か不機嫌そうだけどどうしたのかな?


「がっはっは! 全くまだ若いってのに流石大賢者様はモテモテだなぁ」


 お酒片手にドメステさんが肩を揺らしてやってきたよ。う~ん若いというか一応転生後の年齢としては子どもなんだけどね。でもモテるというよりからかわれているだけな気もするけどね。


 うん、でも料理は美味しいね。かなり豪快で牛の魔物の丸焼きとかだけど、ドワーフは鍛冶だけではなく料理もいけるみたいだ。


 そんなわけで、その日の宴は夜更けまで続いた。なんだかんだでやっぱり皆で食べる料理は美味しいよね――

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