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魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第一章 幼年編

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第68話 魔力0の大賢者、認められる

前回のあらすじ

ヤカライにも勝利した。


「これはもう、認めざるを得ませんね閣下」

「……何がだカレント?」


 ヤカライは気を失ったまま起きてこない。しばらく起きないかなこれは。それを認めてレイサさんが将軍を納得させようとしたけど、何かどこ吹く風って態度で応じてきたよ。


「いえ、ですからこれでマゼル様が大賢者たる資格があると証明出来たかなと思うのですが」

「うむ、確かにこれで彼の実力は判った。だが、それがどうしたというのだ?」

「それが判っていただけたなら、混蟲族と裏で繋がっていた可能性はないとみて宜しいかなと」

「何故だ? 勿論最初から決めつけていたつもりはないが、そやつが強かったからと言って裏で繋がりがないとは言い切れないだろう?」


 え、えぇ~……そこ認めてくれないのなら僕は一体どうしてこんな試合をしたのか……。


「いえ、それを認めた時点で可能性は完全に消えてますよ。良かったですね大賢者マゼル。これで貴方の疑いは晴れました」


 あれ? でもレイサさんは将軍の話とは関係なく、僕のこと信頼してくれたみたいだね。


「お前は何を言っている。私が認めたのはマゼルがそれ相応の実力を持っているということだけだぞ」

「なるほど。ではお聞きしますがもしマゼル様が閣下の言われるように、未開拓地を探索する権利が欲しいばかりに蟲一族と結託していたとしましょう」

「それは私ではなくヤカライが言ったことだがまぁいい。それで?」

「その策略は一度も顔合わせもせずに行ったと思いますか?」

「馬鹿言うな。それだけのことをしようというのだから当然それなりの機会あっているだろう」

「そうですね。どんな形であれお互い全く会いもしないということは考えられません。ならば、なぜ虫一族はハニーという少女だけ(・・)を寄越したのでしょうか?」

「……それは、自作自演なのだからそれで十分だと思ったのだろう」

「いえいえそれは不自然ですよ閣下。今も見たと思いますが大賢者マゼルの強さは常人の域を遥かに超えてます。王国の魔導師が束になっても敵わない程な上、自己強化魔法で近接戦までこなします。王国騎士が全く歯が立たないレベルでです。それにですよ――」

  

 そしてレイサさんは僕たちが蟲一族と共謀していたとして発生する矛盾点を適切に指摘してくれた。これには将軍もぐうの音も出ないようであり。


「判った! もういい!」

 

 結局途中で話を打ち切り僕への追求もそれで収まった。その後はしばらく領地の確認をし、混蟲族の村を一通り確認した後、王国へと帰還することになったんだけど。


「……色々、申し訳なかった」


 最後にヤカライがそう言い残して去っていった。特に気にしてなかったけどね。でも、なんか喋り方も普通になってたような?


「あいつ、ちょっと自意識過剰なところあったから大賢者様と試合で負けたのはいい薬になったかもね。私もいろいろと勉強になったわ」

「いいえ、僕もいいものを見せてもらいました」

「ありがとう。本家の魔法剣を編み出した大賢者様に言われるなんてとても光栄よ。魔法剣の本家だもんね」


 ウィンクをされてちょっと照れる……魔法剣は色々誤解あるんだけどね。


 さて、将軍たちは戻っていき、あとはあの未開拓地探索の許可が下りるかどうかなど気になる点はあるけど、先ずは米の状況の確認だね。収穫の日は近い。そしてワグナー家との米対決もね……。






◇◆◇

sideガーランド


 くそ! 何が混蟲族だ! 結局ガキ一人片付けることも出来ないポンコツ集団じゃないか!

 おかげで結果的にローラン領の連中が未開拓地に乗り出すキッカケを与えてしまっただけだ。畑にもほとんどダメージがない。

 

 全く忌々しい。だが、まだだ。そうだ、逆に言えばこれはチャンスでもあるのだ。まさか混蟲族の集落があんな場所にあるとは私ですら知らなかった事実だが、それは上手くやれば大きな利につながる。


 私は今、陛下の前にいる。今回の報告をかねて謁見許可をもらったのだ。


 そこで私が作成した報告書に目を通してもらっている。陛下はこのあたりが割と真面目だからな。大事な書類にはしっかり自分で目を通す。


「……ふむ、ご苦労であった。だが、この報告書はレイサの作成したものとはところどころ異なるようだが?」

「申し訳ありません陛下。どうもあやつは個人的感情を優先するところがありまして、物事を客観的に見る能力に若干難があります。己が扱う魔法剣の考案者とされている大賢者の称号を有するマゼルに会えたことで浮かれてしまったようですな。どうしてもローラン領に肩入れするような内容になってしまっているのです」

「なるほど……しかし、お主の報告書を見ると、まるでローラン領の伯爵と大賢者が結託して国を貶めようとしているように感じられるが……」

「陛下。勿論それは客観的事実に従って書いたものでありますが、現段階では疑いがあるに留まっております。ですが、懸念がある以上、未開拓地の探索はやはり任せるべきではないかと……それに米の件についても不安が拭いきれません。本来今回の件は公の場で競技し、ローラン領で収穫された米か、ワグナー領で収穫された米のどちらを輸出するかを決める手はずでしたが、それも含めて考え直す余地はあるかと」

「……ふむ、米の輸出に関しては辺境伯に一任しているのだがな。それに未開拓地についても、もしローラン領が引き受けてくれると言うなら、こういったことはやはり冒険者に一日の長があるゆえ、それに越したことはないと思ったがふむ……」


 王国軍は以前に比べ戦争の可能性が減り、安穏な日々が続いているということもあり縮小傾向にある。


 私はこのことにも大きく不満があるのだが、あの地の探索に騎士団を向かわせるという話になれば軍に回る予算も増え、軍の規模や発言力も強まる。


 その上でオムス公国の協力を得られれば、この平和ボケした時代に再び風穴をあけられるかもしれん。


 訓練ばかりの何の実にもならない日々。たまに魔物や魔獣の相手をすることもあるが、それもほとんどは冒険者に取って代わられ、よほどのことがない限り王国軍が出陣することなどもない。


 竜殺しと称され畏怖された私の腕を振るう機会も与えられず、このままただ平和というぬるま湯の中で腐っていくなど耐え難いこと。屈辱だ!


 だからこそ、私がこの怠惰な現状に亀裂を入れ、今に徹底的に破壊し主導権をこの私が握るのだ!


「失礼致します」

「むっ……」


 私が心の中でほくそ笑んでいると、謁見の間にあの男、ナムライが姿を見せた。どういうつもりだこの男……。


「ナムライ、何を考えている? 今はこの私が陛下に御目通り中であるぞ。早々に出てゆくが良い!」

「いや、構わぬ。実は元々この場に来てもらう予定だったのだ」

「……それは一体どういうことですかな?」

「ガーランド卿、今話されているのはローラン領のことであろう? 私の話もそれに関係することなのだ」


 なんだと? わざわざ私がこの王と話しているところにやってきたかと思えば、一体この男、陛下に何を伝える気だ?


「陛下、此度の事件について、私から一つ申し上げて置きたいことがあります」

「ふむ、それは?」

「はい。実は、混蟲族が大量の蟲をローラン領へけしかけた際、実は私の孫娘も現場にいたのです」

「な、なんだとぉおおぉおお!」

 

 思わず私は声を大にして叫んでしまった。だが、馬鹿な! そんなこと。


「どういうことだ! そのような報告受けておらんぞ!」

「はい。その件についてはガーランド卿にもお詫びせねばいけませんな。何分孫は個人的にマゼル殿と親しくしているようであり、故にマゼル殿が暮らす領地の危険を知り黙っていられなかったのでしょう。あくまでマゼルの親しい友人としてメイド長と一緒に加勢に向かったようなのです。なので私も知ったのは本当に最近のことでありまして」

 

 くっ、何が最近のことだ! こいつさては知っていて敢えてそれを知られないようにしていたな! 


「ふむ、なるほどな。確かナムライの孫は魔法にも長けていたと聞く。メイド長にしても戦闘もこなせる腕と魔法を併せ持つと噂されるほど。加勢としては申し分ないと思われるが、して報告とはそれだけであるか?」

「はは、なるほど。いやいやこれはわざわざ済まないなナムライ卿。陛下、彼は律儀な男ですからこのようなことでもしっかり報告しないと気がすまないのでしょう。さぁ、もうわかったから後は私に任せて下がるが良い」

「いえ、勿論これだけのことでわざわざ陛下にお時間を割いていただいたわけではありません。大事なのは孫から聞いた話とガーランド卿の報告書に食い違いがあるということです」

 

 こいつ……私の報告書をどこかで見たのか! 殿下に上げる書類はかならず複写する必要がある。こいつはその複写を見たのだろう。


「それでその食い違いというのは?」

「はい。報告書を読む限り、ローラン領が疑わしいという点が随分と強調されているようですが、孫のアイラによると、蟲の襲撃にもハニーという蟲使いの一族についても怪しむべき点はまったくなかったと言っております。これは現場に直接居合わせたアイラだからこそ判る重要な証言と見ております」

「ふむ……」

「お待ち下さい陛下。流石にそれをそのまま信じるのはどうかと思われますぞ。そもそも証言をしているのがこの男の孫なのです。その孫のアイラからしてマゼルと親しくしている間柄。それであればマゼルやその領地を疑いたくない助けてあげたいという感情が働き客観的な意見などきけるわけもありません」


 ふぅ、最初は驚きもしたが、この程度ならばなんてことはない。むしろこやつの孫などあきらかに信憑性に欠ける。


「ガーランド卿がそう申される気持ちもわからなくもありません。問題はここからです。ガーランド卿、貴方の書かれた報告書ですがところどころ重要な点が抜けておりますな。これがあるとないとでは印象が大きく異なると思われますが……」

「じゅ、重要な点だと? そ、そんなものあるか!」

「そうでしょうか? 例えば蟲の襲撃について、この報告書ではただ襲撃があったとしか記されておりませんが、事実はローラン領の東西南北から一斉に大量の蟲が襲撃してきたわけです」

「何? それは真のことか?」

「はい、事実でございます。これについてはローラン領に暮らす多くの領民からも証言がとれており」

「そ、そんなもの、口裏を合わせている可能性もある!」

「はい。そう言われるかと思いましたので、近接する領地の人々にも証言をとりました。何せそれだけの蟲が動いていたのですから、当然ローラン領近くに暮らす人々の目にもつきます。それらの証言はこの調査書に記されておりますので」


 こいつ、いつの間にそんなものを!


「ふむ、各領主のサインもしっかり取ってあるとは、流石仕事がしっかりしているな」

「恐れ入ります」

「さて、この調査書を見る限り、確かに蟲はローラン領を包囲するように襲撃しているようだが、何故このことを報告書に記載しなかったのだ?」

「そ、それはさして重要ではないと考え、割愛を……」

「重要ではない? はて、おかしなことを。この報告書を見る限り、ローラン領、それにマゼルは混蟲族と結託しており、全てが自作自演であった可能性が示唆されている。だが、それであればこの蟲の件を触れないのはいかがなものかと」

「そ、それが一体なんだというのだ! どこから攻めて来ようと蟲が攻めてきたという事実だけ伝わればいいであろう!」

「残念ながらただ蟲が襲ってきたのと、全方位から大量に襲ってきたのとでは意味合いが全く異なります」

「何が、何が違うというのだ!」

「なぜなら、もし本当にここにあるとおり、ローラン領と混蟲族が結託していたのであればわざわざ全方位から蟲を襲わせる必要などないからです。どこか一方から適当に襲わせればよい」

「そ、それは少しでも信憑性を高めるためにだな……」

「その為に各地に冒険者まで配置し、ましてや今回はカッター領の冒険者にまで協力を仰いでいる。自作自演であればここまでやるというのは寧ろ不自然でしょう」

「そ、それは……」

「それに、蟲使いの一族の介入に関しても報告書ではただ蟻の魔物が出たとだけ書かれてますが、実際はソルジャーアントクイーンによって巣が築かれ大きなコロニーが出来上がっていました。しかしこのことについても、もし混蟲族や蟲使いの一族と繋がっていたのなら疑問が残ります。包囲の件といいここまでする理由がない」

「そ、それは当然、そこにもあるとおり、ローラン領か混蟲族が裏切ったのだ! だからそのようなことに!」

「裏切った? この段階で? ならばなぜ協力する話に?」

「そ、それは……」

「――そもそも裏切るにしても裏切らないにしても、この報告書のような策を考えていたなら孫のアイラを同行させるのも不自然でしょう。普通部外者はできるだけ排除するものだろうに、ご丁重に混蟲族の集落にまで同行させている」

「それは!」


 そもそもナムライもローラン領とグルだ! と喉からでかけたが飲み込んだ。その反論をこの男が想定していないわけがない。何より、ナムライがこのような話に加担する理由がない。


 ナムライ辺境伯領はローランの米に目をかけており、公国への輸入の後押しもしている。それなのにローラン領の畑を台無しにしかねない話にのるわけがない。それなのにこの男も共謀者だったとこじつけてもとってつけたような話になるだけだ。くそ! ここまできて!


「陛下、騎士団長のヤミが今この場で申し上げたいことがあると謁見の許可を求めておりますが」

「何? ヤミが?」

「は、なるほど! きっとこの報告書の件でしょう。ヤミの話を聞けば、きっと陛下もご納得頂けるはずだ。私は話を聞くべきだと思うがどうかなナムライ卿?」

「私も構いませんよ」

 

 はは、馬鹿め! あやつはこの私が目をかけ続けていた騎士だ。当然この場でも私に有利な発言をするに決まってる!


 まぁ、拒んだところで、否が応でも通すよう話に持っていったがな。


「失礼致します。陛下、不躾な申し出にも拘わらず快く謁見の許可を頂き真にありがとうございます」

 

 ヤカライが片膝をついて陛下に頭を下げた。ふむ、流石にこの場ではあの妙な口調は控えたか。


「よい、それで話というのは?」

「はい、実はローラン領の大賢者マゼルについてどうしてもご報告したいことがありまして」


 はは、いいぞ! どんな理由でもいい。大賢者などと吹聴しているあのガキを貶めることを言うのだ。そうすれば後はこの私が……。


「――以上の経緯により、私、ヤカライ・ヤミは大賢者マゼルと試合を行い、敗北いたしました」

「うむ、なるほど。悔しかったであろうな。私も見ていたが、あの男は卑怯にも……」

「そこで私は自分の未熟さを痛感いたしました」

「そう、卑怯にも未熟さを痛感……は? いや、ちょっとまてヤカライ、なんだそれは?」

「正直言えば、私はあのような子どもが大賢者などと名乗っていることに腹立たしさを覚えておりました。その感情から、大賢者マゼルに対して随分と失礼な物言いもしてしまいました。試合においても私はマゼル様が大怪我を負うのも厭わない気持ちで挑みました。にもかかわらずあの御方は私に一切怪我を負わすことなく意識だけ奪う形で勝利を収めたのです。私が彼に対して仕掛けたのは騎士としてあるまじき劣情と嫉妬に駆られたただの暴力であるのに対し、大賢者マゼルは試合でこのような私に応えてくれたのです。正々堂々とした立派な立ち振舞でした。いい返す言葉もない完全な敗北、完敗でした。にもかかわらず、今の私はとてもすがすがしい気持ちでいっぱいです」

「お、おいヤカライ?」

「だからこそ、私は今ここではっきりと断言できます。あのような正々堂々な試合が行える大賢者マゼル様に限って、このような卑怯な行為に出れるわけがないと。それに調査内容や近隣の民の発言から考えても、ローラン領並びに大賢者マゼルと混蟲一族及び蟲使いの一族が結託して自作自演を仕掛けたなとどいう話は考えられない。それだけ、どうしても伝えておきたかったのです」


 私は、あまりのことに頭がまわらなくなってしまった。結局それだけを伝え、ヤカライも謁見室を後にし、それから先は私の報告書は差し戻しとなり、レイサの報告書が採用され、私は何故このような報告をしたか答えるハメに、申し訳程度にナムライが「きっとガーランド卿は疲れてるのですよ」などと何の足しにもならない言葉を付け加えられたのがより腹立たしい。


「ヤカライ! 貴様どういうつもりだ! なぜあのような話をした!」


 あまりに腹が立ち、あのあと私はヤカライを呼び出し責めた。だがこの野郎は。


「理由は陛下に申し上げたとおりです。閣下には目をかけて頂き感謝の気持ちもありますが、私にはどうしても大賢者様が王国に仇なす存在とは思えないのです」

 

 こんな生意気な反論を! しかも憑き物が取れたような晴れやかな顔をしているのがより腹が立つ! 大体口調もすっかりまともになってるだろうが! どうなってるんだくそ!


 あぁもう。いらいらする。これもすべてあのマゼルのせいだ。だが覚えておけ、米対決のときにこそ、目にもの見せてくれる!

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