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魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第一章 幼年編

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第57話 魔力0の大賢者、結ぶ

前回のあらすじ

ハニーの蜂に乗って蟲使いを尾行した


sideバグズ

 くそ、なんなんだあいつは! まさか本当に大賢者の生まれ変わりだとでも言うのか! 

 俺が育て上げたあの蟲まであんなにあっさりやられてしまうとは! これでもう俺には戦うすべがない。


 まさか、あれだけ用意した蟲が全部やられるとは、卵化しておいた蟲は全て孵らせてしまってストックもなくなってしまった。


 唯一背中に入れておいた羽蟲だけが残っていたからあの場から離れることはできたが、結局おめおめと引き返すはめになってしまった。


 情けない! これまで一度たりとも任務に失敗したことはなかったというのに。だが、こうなってはしかたない。大体あの化け物を相手するのに俺一人というのが間違いだったんだ。

 

 人数を揃えよう。村長に言ってすぐに強力な蟲とそれを操る蟲使いで兵力を補い、一気に攻め落とすんだ。四の五の言っている場合じゃない。


 よし、山が見えてきた。この険阻な山岳地帯の中に俺の村は隠されている。絶対見つかることのない隠れ里だ。何せ村に侵入者がこれないよう、空のハンターとも言える蟲たちが常に周囲を警戒していて、やってくる侵入者は排除する。


 よし、村についたぞ。一見寂れた村にも思えるが、ここにいるのは全員蟲使い。まぁ俺ほどの才能あるやつはそうはいないが、それでも何人かはそれなりに使える。

 

 さて、村長には一応話しておかないとな。流石に村長の許可なく勝手には決められない。

 

 ……正直言うとあの村長は苦手だけどな。何を考えているのかよくわからないし、普段から蟲の研究にばかり明け暮れていて滅多に姿を見せない。任務が生じたときも蟲を使って知らせに来るほどだ。


 それにしても、なんだろうな? 普段から物静かな村ではあるんだが、今日はそれに輪をかけて静かすぎる気がする。


 まぁいい。俺は村長の家に向かうが。


「……戻ったか」

「あ、あぁ」


 家には村長がいた。珍しいなと思った。いつもなら村の奥にある洞窟を改良した村長いわく研究室に篭っている事が多い。一応家には来てみたが、いなかったらそっちに向かうところだった。


「……それでだ、その、良くない知らせがあってな」


 村長の真っ黒な瞳が俺に向けられる。久しぶりに見るがこの黒に染まった目からして不気味だ。節くれ立った体で、髪の毛は勿論眉だってない。唇も常に干からびたようで水気が全く感じられない男だ。年は60だと聞いているが、全くそうは見えないな。遥かに上に見える。


「……任務に失敗したのだろう?」

「な! 知ってたのか!」

「ふん、偵察用の蟲で常に監視しているからな」


 偵察用だと? そんなものがいたのか。全く気づかなかったぜ。しかし、気分が悪い。まるで俺を信用してないみたいじゃないか。確かに任務には失敗したから、文句は言えないが。


「とにかく、判っているなら話が早い。あの大賢者を名乗ってるガキは、実際にヤバイやつなんだよ。俺が用意した蟲共は全てあのガキ一人にやられたようなもんだ」

「それも判っておる。だが、それを踏まえてみても貴様の失敗は看過できんな」

「くっ、確かに俺は失敗した。それは認めてやる。だが、まだ挽回は可能だ! 何人か他の蟲使いもよこしてくれ! 兵力を補っていけば決して――」

「馬鹿が、わしが言っているのはそればかりではないわ。全く任務一つまともにこなせないばかりか、尾行されていることにも気づかんとはな」

「――尾行、だと?」

「空の蟲の様子を探ってみろ。騒がしくしておるだろう」


 そう言われてみて俺は気がついた。確かにこれは何者かが村周辺の上空に現れた証明。しかも俺が戻った直後ということは……くそ! まさか尾けられてたなんて!


「お前には期待していたのだがな」

「ま、まてまて。逆に考えてみればこれはチャンスだ! これだけ早くやってこれたということは、侵入者は大賢者である可能性が高い。あとは蜂使いの女か? どちらにしても飛んで火に入る夏の虫とはまさにこの事! 人数揃えてこちらから向かう手間が省けたってもんだろ?」


 そう、そうだ。わざわざ村に来てくれるなら好都合それに。


「大体、よく考えてみれば外の蟲だってかなりの強さ。少なくとも空中戦で負けるような蟲じゃない。はは、村に来る前にくたばるかもな」

「やれやれ、随分と寝ぼけたことを。気を緩めずしっかり探り続けろ。そしたらわかるだろう? 既に空の蟲がかなりやられている。このままじゃ村にやってくるのも時間の問題だ」


 ……くそ! 確かに、空の相手にこの早さかよ。


「……だが、この村で迎え撃つというのは悪くはない」

「あ、あぁそうだろ? だから、早く村の連中を集めようぜ。それで」

「安心しろもう来ておる」

 

 は? もう来てるだって? 村長が俺の背後を指さした。意味がわからず振り返るが……何だこれは?


「お、おい、村長! なんなんだこいつらは!」

「何だとは随分な言い方だな。全員村の仲間だろう?」

「……は? いや、何を言って……」

「わしの名前を全部覚えているか?」

「何だ突然。パラシトス・セクトだろ?」

「そのとおりだ。そしてセクトの姓はこの村のもの全員に名乗らせている」

「何を今さら……」

「お前はその意味を考えたことがあるか?」

「は? そんなのは同じ村で暮らしているから村長のあんたと合わせてるんだろ?」

「ふむ、大体のものはそう思っていたようだな。だが本当の意味は違う。お前、わしが長年一体何を研究していたと思う?」

「……言ってる意味がわかんねぇよ。だいたいそれとこの後ろのと何が関係ある……まて、さっきあんたはこいつらが村の仲間だと言ったな? まさ、か……」

「そういうことだ。まぁ、本当はまだまだそのままでいてほしかったのだがな、仕方ない。ほれ、お前もわしの駒となって、大賢者を倒すのに協力するがよい」

「な、そんな馬鹿な! なんでこんな! こんなことをあんたは!」


 つまりこいつは長年このためだけに洞窟に篭って研究を? そして、俺も駒だと? ありえない! 嫌だ、俺は! くそこうなったらこんな村いられるか! オレだけでもニゲて、あレ? オれは、一体、ナニモ、ソウダ、オレハ、ム――






◇◆◇

sideマゼル


 現れた蟲は、トンボを巨大化させたようなラルファリベルラに、やっぱりかなりの大きさを誇る蛾タイプのアダガスアトラス、あとは扁平で長い胴体に羽がつき強靭な顎を備えた長大な蟲ジャイアントフライスネークだ。


 それが全部で30匹はいるね。アダガスアトラスは上につかれると幻覚作用のある鱗粉を降らしてくるのが特徴だ。


 どれもが空のハンターと呼ばれるほどの蟲ではあるけど、でもこのメンバーなら楽勝だ。何せ相手は基本近接戦しか攻撃手段を持ってない。


「……ビードルの針を利用させてもらう」

「ビー!」


 ビードルは離れた相手に針を飛ばすことも出来る。その上、のっているアイラは錬金魔法の使い手だ。だからビードルが撃った針を錬金魔法で変化させてより強力な槍に変えてしまった。しかもビードルは針を高速で連射出来る。


 連射した針が鋭く長い槍に変化して迫るラルファリベルラを次々撃ち落としていった。

 

「――ファイヤーバード!」


 ラーサの魔法も絶好調だ。顕現された火鳥がアダガスアトラスに命中し撃ち落としていく。あの蟲は火に弱いんだよね。


「ひ、ひ~! ひ~!」

「ビビビビッー!」

 

 そしてハニーは、え~と、逃げ回ってた。ジャイアントフライスネークが群がってるね。あ、でも、動きはビーダーの方が速いしこれなら――

 

「ハニー! そこ、右に、そう、そして左、そこから下で回り込んで……」

「こ、こうですか?」

「そうそういいよ。そのまま」


 思いついたことがあったからハニーに指示を出して、ジャイアントフライスネークを誘導させた。

 後はそのままくぐって――


「「「「ギギッ!?」」」」

「す、すごい! これでもう動けない!」


 うんうん、上手くいったね。ジャイアントフライスネークは胴体が長いからいけると思ったんだけど、見事に数匹まとめて結ぶことができたよ。


「お兄様凄いです。こんな手を思いつくなんて!」

「……これだけの蟲が襲ってきてるのにその冷静さ、感服」


 ラーサとアイラが蜂の上から感心したように言ってきたけど、なんとなく思いついてやってみたくなっただけなんだよなぁ~。


 でも、有効ではあるね。後はもがき続ける蟲に向けて拳を振り抜いて衝撃波で纏めて倒してしまった。


「……ビ~♪」


 わ、なんかビロスが尾を振りながら8の字を描くように動き出したよ。


「ビロスも大賢者様を称えてるようです」

「そうなんだ。でも、ビロスはもっと役立ってると思うよ」


 密かにフェロモンを撒いて蜂たちの能力を強化しているからね。


「……ビッ♪ ビッ♪」

「大賢者様に褒められて嬉しそう」


 そうなんだ。うん、そう言われてみると鳴き声が弾んでるかも。喜んでくれたなら良かったよ。


 さて、そうこうしている内に空の蟲は全滅したね。


「大賢者様、もうしわけありません。蟲はこれで全部ですが、あの混蟲族がどこにいったのかが……」

「うん、それなら大丈夫。もう村も近いみたいだから、気配で場所はわかるよ」

「け、気配ですか?」

「……大賢者の感知魔法は砂漠の中の砂金一粒を見つけられる程の性能」

「お兄様なら当然ですね」

 

 いや、何か超解釈されてる! 大体砂漠の砂金なんてやったことないしなぁ。

 とにかく、このまま後は村に乗り込むだけだね。さて、いよいよ混蟲族の一派とご対面だ!

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