皇弟の誓い
「ディアナ嬢、改めて今ここで伝えたいことがある」
ユージンの真剣な眼差しに自然とディアナの背筋も伸びた。
「先ほどはディアナ嬢が嫌であれば皇后になるのを断ってもいいと伝えたが……」
そう言いながらユージンはテーブルの上の両手を組む。
いくらか逡巡した後、さらに言葉を続けた。
「私としてはできれば皇后となって一緒にこの国を導いて欲しいと思う」
ユージンの瞳はディアナを見つめてそらさない。
「私は今まで自分が帝国を継ぐとはまったく考えていなかった。今回のようなことがなければあり得ないまま終わったことだろう」
たしかに、帝国は既にイーサンが継いでいたから何事もなければ次はイーサンの子が継ぐことになったはずだ。
しかしそうはならなかった。
「正直急なことで戸惑ってもいる。だからこそ、ディアナ嬢に共にいてもらいたい」
そこまで言うとユージンはテーブルの上のディアナの手をそっと取る。
「ディアナ嬢、本来なら『あなたを幸せにするから結婚しよう』、そう言うべきところなんだろう」
『あなたを幸せにする』
なんて甘美な言葉なのか
でもその言葉はきっとディアナには響かない。
誰かが自分を幸せにしてくれる、そんな夢をディアナはもう抱いていないから。
幸せになるには自分でそれを掴み取らなければならないと身に染みて知っている。
「しかしあえてこう言いたい」
そこまで言ってユージンは一息ついた。
「一緒に幸せになろう」
いつもは厳しい眼差しでいることの多い目元がいくぶん柔らかくなる。
「あなたと一緒に幸せになりたいから、結婚してください」
『一緒に幸せになる』
どちらか一方が寄りかかるのではなくお互いがお互いを支えて幸せになる。
もしそうできたら、それこそがディアナの求めるものなのかもしれない。
「私でよろしければ喜んで」
だから。
ディアナは快諾する。
「……! ありがとう」
一瞬ほうけたような顔をしたユージンが破顔した。
なぜそんなにも嬉しそうなのかディアナにはわからなかった。
ユージンに応えたその時、はからずもディアナ自身がとても綺麗に微笑んだことを当の本人だけが知らなかった。
そしてその事実をディアナが自覚するのはもう少し先のこと。
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