王女のこれから
解呪の香水を使い始めて一週間。
日に日にイーサンの意識がはっきりしてきた。
最初は眠っている状態で使っていた香水も今ではイーサン同意の元使用している。
そもそもイーサンがどこまで正気でいたのか、どれだけ現状を認識しているのか、まずはその確認から必要だった。
そのため、香水の用意はディアナがしていたが実際に使用する際にはユージンがそばについて様子をみながら行っていた。
そしてある日ディアナはユージンにイーサンの執務室へ呼び出される。
「今日は改めて陛下と話し合いの場を持つということですか?」
執務室までの道すがらアランが確認してきた。
「はっきりとは聞いていないけれど、おそらくそうでしょうね」
そもそもディアナはイーサンとの婚姻のためにウィクトル帝国へやって来たわけで、さらには結婚式も控えている。
しかしいまだ婚姻準備はほとんどできておらず、むしろそれどころではない状態であることを考えると、結婚式が当初の予定通りに行われることはほぼ不可能だろう。
もっと言えばイーサンが帝国法にのっとり退位した場合、婚姻自体どうなるかわからない。
仮に婚姻がなくなったとしてもディアナは祖国フォルトゥーナへ帰ることは許されないため、今後の身の振り方を考える必要があった。
唯一良い点は女神の神託を達成することによってディアナに課せられた義務から解放されることだろうか。
(この件が終わったら、どうしようかしらね。できればウィクトル帝国のどこか片隅でいいから住まわせてもらえると助かるのだけど)
ついでにディアナでもできるような仕事を紹介してもらえたら御の字だ。
国が変われば常識も変わる。
やっとウィクトル帝国にも慣れてきたところだし、ここからまた別の国へ行くというのは考えられなかった。
(ましてやマレフィクス卿についてユエラン国へ行くのは絶対にないわ)
大陸からして違うユエラン国はディアナにとってはまったく未知の国。
いくら書籍で学んだといっても実際の暮らしはまた別だろう。
それに、あれほど女神の愛し子に執着しているマレフィクス卿に対して、その愛し子としてついて行くなどその先どうなるのか想像もつかない。
(ユエラン国の件は本当の愛し子であるお姉さまとお兄さまたちにお任せしたいわ)
元々ディアナはテネル以外の姉兄たちに対しては心のどこかで一線を引いていた。
さらにはウィクトル帝国へ来てからの苦労も相まって、その一線は心の壁になったように思う。
(どちらにしろ私は祖国に戻れない)
ならば後始末は彼らに任せてもそれくらいは許されるだろう。
(ああ……そういえば、結婚式にはテネル以外参加するのだったかしら)
フォルトゥーナの王族は基本的に自国を離れない。
しかし女神の神託のために実行者が他国へ嫁ぐ時、その時だけは成人した王族は全員結婚式に参加することと定められている。
いまだフォルトゥーナへは事の詳細は伝えていない。
だから彼らはまだ結婚式に参加すると思っているだろう。
(事件のあらましを知ったら、彼らはどうするかしらね?)
そう考えているうちにディアナはイーサンの執務室に着いた。
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