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第二十話 (エルファ視点)

更新が遅くなり誠に申し訳ございません…。


〈エルファ視点〉


「だいたい、おかしいだろう!!

 エルファ! お前は俺の奴隷だ! 何逆らっているんだ!?

 勉強だけで脳のない家畜以下のお前が!」

………。

私は、何故。

何故、こんな人との婚約を続けていたのでしょうか?


例え遊んでいたとしても…王族としての行持や、臣下への情は、持っていると思っていました。

持っているものとばかり思っていました。

何故なのでしょう?

何故、私はこんなことを言われ続けなければならないのでしょう?

私にだって、怒りの感情はあります。

感情があるからこそ、ハーディー様の粗を全力で探したのですから。


人を人とも思わず、全て自分の思い通りになると思い込んでいる。

今の自分の地位を、自分の力によるものだと考えている。

愚かで、醜い、考えをする、この方は。

本当に、本当に―――


「巫山戯るなよ(ゴミ)が。」

「!?」

静かに、でも冷たい声が響き渡ります。

聞き覚えのあるテノールボイス。

「フォ、リアン……!?」

何を。

何を、して……。


次の瞬間、ピキリ、とフォリアンを中心として、氷の渦が巻き起こり。

「「「「「っ!?」」」」」

瞬く間にその渦は周囲を凍てつかせた。

床を舐めるようにしてハーディー様の足に近づいていった氷は、ビキビキと音を立てながら増えていき、ハーディー様の足を侵食していく。

ハーディー様を助けようにも、床一面に張り巡らされた氷がそれを許さない。

近づいてきた者たちを片っ端から凍らせていき、動けなくする。


まって。

やめて。

貴方が、そんなことをする必要はないのに。

もし、もし。

罪人に、なって、しまえば…

だめ。

それは、だめよ!


私は、氷の床に足を踏み出す。

お願い。やめて。

氷は足にまとわりつかず、私の足の形にたちまち溶けていった。

彼がこちらを振り向いた。

「なんで…。」

その顔は驚愕一色に彩られている。

「だめ。お願い、やめて。」

私は彼の方に進む。


特に、深い接点もなく、関わりもない。

でも。

それでも。

何故か、彼が罪を犯すのは嫌なのだ。だめなのだ。

ただの主従であったはずなのに、私は何故か彼に特別な感情を抱いている。

………あぁ、何故気が付かなかったのだろう。

私は、もう彼に―――


だから。

「やめて…?」

彼の表情が、一瞬で泣きそうな表情に変わる。

そうしていると、まるで小さな子どものように見えるのね。

至近距離まで近づいた私は、彼を抱きしめる。

「もう、いいわ。」

ハーディー様の表情は怯えと恐怖に包まれ、周りの貴族も口を出せずにいる。


ぶわり、と。

周りの氷が粒になって空気に溶けていく。

解放された騎士やハーディー様は尻もちをつき、こちらを見て怯えている。


「ぉ、っ、おっおっおっ、お前!! こっ、この俺にこのようなことをして許されると思っているのかぁ!!!!」

怯えながらもそう言い切ったハーディー様。

その子供じみた訴えに、思わず溜息がこぼれる。


「当然の報いであろう。」

聞いたことのない声がした。


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