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祝福の赤い月  作者: violet
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結婚式

ミモザがオリビアの髪を梳いている。

人型になったミモザは赤毛の女の子だ。

小さな色石の付いたピンがオリビアの髪にさされていく。


「綺麗な石ね。」

あれはサファイア、あれはルビーとオリビアが確認する。

「全部、森の鉱山で採掘された石です。

他にも金や、鉄が採れます。」


すごいわ!

公爵ってすごい財産があるのでは、と思ったが、人間と交流がなかったと思いだしたオリビア。

「採掘された石は、私が使ってもいいのかしら?」

「公爵にお願いされるといいですよ。きっとオリビア様の為なら許可がおりますよ。

彫金も腕のいい職人がいます。」

「ミモザ、そうなの?」

ふふふ、とオリビアの頬がゆるむ。

多くの女性は宝石が好きである、オリビアもそうだった。

お嫁に来てよかったー!

現金なオリビアである。


朝早くから、オリビアはメイド達に花嫁仕度をされていた。

昨夜届けられた荷物から、ウェディングドレスとベールを取りだし、花が飾られた。

「このお花は、昨夜お庭で見たわ。綺麗で好きよ。」

笑顔でオリビアが言うのを、ミモザも笑顔で答える。

「良かったです。

公爵からの指示なのです、オリビア様が気に入ったようだからと。」



そうなの?と聞いたオリビアの顔は赤い。

ラヴィダルの優しさが嬉しい。

自分達は、出会ったばかりだが、こうやって歩み寄っていくんだと思う。


魔物の森、本当の怖さをまだ知らない。




結婚式をするのは、もちろん教会ではない。

各部族長が集まった中で、結婚の宣誓をすると終わりだ。

宣誓書に二人でサインをする。

横目でラヴィダルを見ると黒い礼服だ。


「カッコイイ。」

小さな呟きは、吸血鬼に聞こえないはずがない。

「オリー、貴女はとても綺麗だ。」

18歳の乙女はともかく、本人も覚えてないぐらい生きてる吸血鬼がいい雰囲気のところに、無粋な声が響く。


「公爵、人間の小娘など娶って後悔しますよ。」

狼族だろう、大柄な獣人が歩み出た。

「予言だか知らないが、何百年も待つ価値があるのか?」


予言?

オリビアは、自分の事を言われているが、事情がわからない。

わかったのは、この狼は嫌いだ、ということだ。


「クラークス、予言があったからこそ、彼女がここに来たんだ。

君は、まだオリビアを分かっていない。

きっと納得できるよ。」

ラヴィダルが、クラークスと呼ぶ狼族の男性と対峙する。


「ほらほら、結婚式を祝うために来たんだ、クラークス落ち着け。」

またもや、大柄な男性が出てきた。こちらは人型だがわかる、きっと熊だ。

「そうよ。」

派手やかな女性もクラークスをなだめてくれる。


「彼らは、それぞれの族長だよ。代表して結婚式に参列しているんだ。」

いならぶ人々をラヴィダルが教えてくれる。

あれは狼、あれは熊、あれは孔雀、あれは鹿、あれは虎・・・


「オリーは勇者だ。ここにたった一人で立っている。」

言われれば、ここに身内はいない。


魔物の森に入るのを、母には泣いて止められた。

父は逃がそうとしてくれた。

兄は付いてくると言い張った。


涙が一滴頬をつたう。

「ここに来るのを選んだのは、私自身です。」

オリビアの涙をラヴィダルがなめると、オリビアは真っ赤になる。



ラヴィダルもわかっている。

人間が魔物の森に入る、ということを。

簡単な決意でなかったろう、家族や友人達と別れ来てくれたのだ、と感動している。

自分がそれを補わねばとさえ思っている。

何百年も待ち続けて、考える時間は期待を消していった。

いくら待っても、乙女は現れないだろうとさえ思っていた。


オリビアの方は、王太子と結婚するのが、死ぬより嫌だった。

覚悟してきたら、公爵は美形だし、獣人の使用人達は優しいし、ラッキーと思うぐらいの気楽な性格である。

今は、ラヴィダルに涙を舐められて、頭がいっぱいである。

さっきまでは、あの狼、見返したいだった。


赤い満月の夜に生まれても、それを不幸と思わないオリビアだからこそ、この森に来た。

吸血鬼と人間の違い、男と女の違い、年齢の違い、性格の違い、違いの大きい二人だが、これから夫婦として歩んで行こうという気持ちは共通である。



「ラヴィ様、予言って?」

「後でゆっくり教えましょう。」

二人が囁き合う姿は、結婚式に集まる獣人達に、新たな時代の始まりを感じさせた。


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