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祝福の赤い月  作者: violet
10/16

オリビア捕まる

「うわああ!」

「ぎゃああ!!」

国境近くの森の中で悲鳴があがる。


ウェザラードの軍が蟻に襲われている。

まだ余熱が残る森で、蟻は耐性があるようだ。


剣や爆薬で蟻が倒されていくが、次々と目の前で小さな蟻が巨大化していく様は恐怖でしかない。

逃げ戻る兵士に紛れて、オリビアとミモザが森を抜け出した。

アキルは小さなトカゲになって、オリビアのバッグに入っている。



「誰だ!!お前は!?」

大きな手が、オリビアの進路を防いだ。


オリビアは、よろよろと倒れてみた。

「オリビア様!」

ミモザがオリビアに駆け寄ると、進路を防いだ兵士が声をかけてきた。


「侍女殿、こちらの姫君は?」

「カルデアラ王国ネーデル侯爵のご令嬢、オリビア様です!」




ウェザラード軍の司令官テントには、ミモザが付き添ったオリビアか嘘寝で横たわっていた。

名優はミモザである。人型のミモザを獣人だと気付いく者はいない。

「オリビア様は、城をこっそり抜け出して国境に来られたのです。」

嘘はついていない。

「お可哀想なオリビア様。」


何処から聞いても、逃げだしてきた花嫁である。

100年に一度の花嫁の話は、近隣の国には浸透している。

生け贄のように、捧げられた姫を助けた英雄になるチャンスだ。


侯爵家の美しい令嬢だ、倒れてしまうほど傷心していたのだろう。

司令官は、カルデアラ王国にも恩を売る機会と考えた。


その時だ、司令官のテントに体格のいい男が入ってきた。

「ヤイ司令官、女性を発見したと聞いたが?」

司令官より上位になるのだろう、司令官が場所を譲る。


「これは、美しいご令嬢だな。衣類も豪華な物だ。」

「カルデアラ王国の侯爵令嬢だそうです。」

「何故にそのような令嬢が?

赤い満月の姫君か?」

「さように。」

そうだな?と司令官がミモザに確認すると、ミモザが頷く。


「なるほどな。内部の情報を知りたいな。」

男がそう言ったところで、オリビアは焦った。ミモザが拷問でもされたら大変である。


う・・

小さな声を出して動いた。

瞼をゆっくり開けると男が覗きこんでいた。

「きゃっ」

小さな声を出し、驚いてしまったオリビアだ。ミモザの方が名優である。


「ご令嬢大丈夫ですか?」

オリビアは身体を起こすとゆっくり言葉をだした。


「ありがとうございます。

私は、カルデアラ王国ネーデル侯爵の娘、オリビアです。どうか、父に連絡を取らせてくださいませ。」

「私はウェザラート王国第2王子ツェール、貴女が赤い満月の姫君か?」

オリビアは内心、凄いわ王子よ、これを何とかすればと思いながら、小さく頷く。



「どこか、痛いところはあるか?軍医を呼ぶが?」

ツェール王子が、オリビアに尋ねてきたが、オリビアが首を横に振ると話を変えてきた。


「赤い満月の花嫁で、魔物の森から出て来たのは初めてだろう。

過去の花嫁の話を聞いているか?」


城にたどり着いたのは僅か、その花嫁も逃げ出した、とラヴィダルは言っていた。

何も知らない者が森に入れば、結果はわかっている。

「わかりません。多分、蟻に。」

うつむいてオリビアが答える。


「オリビア嬢は、我が軍が焼いた森を抜けて来たから、蟻に襲われなかったのか。」

「よくわかりませんが、そうとしか。」

草の事は秘密である。


「公爵領の中はどうなっている?」

「申し訳ありません、閉じ込められていたので、よくわかりません。」


「変ですね、閉じ込められていて簡単に逃げれるとは?」

ふーん、と王子がオリビアを見る。

「貴女だけ蟻の難から免れたというのも、不思議ですね。」

黒髪の王子は軍人らしい体格で、緑色の瞳は王家の教育を受けているのだろう、理知的な輝きをしている。

「それに、貴女が本当に赤い満月の乙女とも、確証できない。」


「もっともですわ。

私には、それをここで立証するすべがありませんもの。」

オリビアの態度は堂々として、王子も高位貴族の娘と思っている。


お互いが、相手の目的を探っている。

「司令官、直ぐにカルデアラ王国に詳しい者を連れてまいれ。

赤い満月の乙女は、王太子妃の第一候補だったと聞いている。」


降参したのは、オリビアだ。

「あの王太子は大嫌いよ!女にだらしがなくて、努力が嫌いなくせに、偉そうな口ばかり。」

王子は、カルデアラ王国の王太子情報を持っているのだろう。

「貴女は間違いなく、侯爵令嬢のようだ。」

苦笑いをしながら、ツェール王子が言う。


王子がオリビアに手を出したが、その手は中を切った。


王子の目の前に黒い影が現れ、オリビアを引き寄せたからだ。

「ラヴィ様!」

オリビアが叫んだ。


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