表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/74

側妃の独白④

救出されたジオン殿下は、いい意味で逞しくなった。どこか気弱で兄達に庇護される存在だった彼は、デイビスなど足元にも及ばないほどのカリスマ性に溢れていた。

しかし、性格的には大きく変わっていないようで、王太子であるジオルド様や異母兄であるクロノス様を全身で慕い、懐き、可愛がられていた。デイビスにも良く話かけていたが、父の教育のせいで拗らせているデイビスは、何かにつけてジオン殿下に逆らっている。

けれど、魔術省でのやらかしは、流石の父も私も庇えなかった。

まったく、何をやっているのか。デイビスは私の言葉など聞きやしなかった。


ジオン殿下は、生まれた時から、亡きロイヒシュタイン公爵であったウルベルト様のお嬢様と婚約を結んでいた。

ウルベルト様亡き後、伯爵位にあたる妹君が後見人となり、ブランカ嬢に献身的な愛情でもって育てていたようだが、その妹君も亡くなられ、その御夫君が新たな後見人、公爵家代理となられた。本来ならまだまだ御健在の前公爵様が後見人になられるはずだったけれど、当の御令嬢が叔父上でなければ嫌だと言い張り、前公爵夫妻も渋々引き下がったのだそう。

けれど、ブランカ嬢への教育は上手く言っているのかと言えば微妙だそう。前公爵夫妻が派遣した家庭教師からは、優秀だとの評判なのに、実際にジオン殿下とのお茶会に参加された際には、聡い殿下とは会話が成立せず、王城の侍女や騎士にも横柄だと聞いた。殿下の前で繰り返す失態。誘拐事件以後、城の外に出ることがめっきり減ったジオン殿下はいつもの穏やかな微笑みは何処かに忘れてしまったかのような冷たい笑顔を見せているようでラウラ様もナディア様も呆れていたけれど、一度、お茶会に参加したナディア様が「あれは、駄目だ」とダメ出しを明言していた。元々ハッキリ言われる方だけど、まだ成人前の令嬢にこのような判定をするのは珍しいと思った。このままなら、いずれ婚約は解消か、公爵家代理の責任問題に発展するだろうとの見方が濃厚だった。


私は、全てをラインハルト様達に告白した後、父や父の子飼とも交流を絶った環境に身を置いた。

そして、優しい陛下に心を寄せた。

そんな時、ラウラ様とナディア様に呼び出され思いもよらぬことを言われた。

「陛下が、姫を欲しいみたいなの。私もナディアも陛下とは家族愛、戦友の感情以外持てないのよ。」

「それに、男の子ばかり見てきたでしょ?そろそろ可愛い女の子、姫を愛でたいのよ。アリアナ様はとても美しいし、実は陛下のタイプドンピシャなのよねぇ。だから、」

「私とナディアが与えられない愛を彼に捧げてくれない?」

家族からの愛情を失い、敬愛していたウルベルト様とリオニー様も失っていた私は、私の心に寄り添ってくれようとしてくれる陛下に恋をしていた。けれど、自分の感情は、生涯隠していくはずだった。

照れ臭そうに夜現れたラインハルト様に此方も照れてしまった。

その結果、生まれたのがミリアナだった。

ミリアナは、陛下はもちろん、ラウラ様にもナディア様にも可愛がってもらった。この頃になると父は、私が種の影響から逃れたことを悟りデイビスの教育の失敗から段々と中央から弾き出されていた。

デイビスは、先の魔術省での失敗から、陛下より直接叱責を受け、学園への入学を期に意識を切り替え、王族としての自覚を持ったようだった。ミリアナには少しの興味を持っているみたいだけど、頼りにしていた使用人が軒並み総入れ替えとなり、城では明らかに居場所が失くなっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ