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こんなはずでは

レティシア・ミッターマイヤー子爵令嬢はため息を吐いた。

伯父に爵位を譲り、一人の令嬢としての生活が始まったのは良いことだった。

中の人であった自分には邪魔な父親は勝手に死んだ。外の人であるレティシアを虐げて死に追いやった義母も異母妹もレティシアを裏切った元婚約者も事実上処分できた。

貴族令嬢として生きやすい環境は手に入れた。これで敬愛する主であるブランカ・ロイヒシュタイン公爵令嬢の取り巻き?友人?いや、親友の地位を築けると思っていたのに姫は療養のため新学期にならないと学園に来ないと言う。

自分と同様に荒れているはずの男は若くして国の要職についていて、しかも、旦那様の兄弟と言う、羨ましい立場を手に入れたと忙しい日々を過ごしていると聞いた。ロイヒシュタイン公爵家と我がミッターマイヤー子爵家には今のところ接点はない。乗っ取る体を間違えたか。いやいや、あの時、屋敷内には私に相応しい体はなかった。

自分で選んだのだと納得しよう。今現在、理不尽な状況であっても。

レティシアは、伯父に願い出て王都の学園に通うことになった。いずれくるブランカのために人脈作りをしておくためだ。しかし、スキャンダルを起こした子爵家の令嬢だと遠巻きにされている。

レティシアと違い、子爵家のために学園での人脈作りに尽力していたはずの義妹は本当にアホだった。

一人の女生徒が作る一代勢力に所属していたようなのだ。一人の女生徒とは、サキュラ・ロイヤーとか言う平民の特待生だ。平民にはしては魔力保有量が多く魔術の扱いにも長けている優秀者として学園での学びを許された特待生だ。

サキュラと言う名前に前世を思い出したが、レティシアにとって、理解不能の髪色と瞳をした容姿が頂けなかった。

(髪も瞳も桜色とか、あり得ないでしょ。)血筋は遥か東の国らしく実家はここ最近繁盛していると有名な商家だと聞いた。

確かに周りを見れば、明るい金髪や赤毛、茶髪と色とりどりてあるけども、あそこまでピンクなのは恥、いやあり得ない。とレティシアは思い近寄りたくなかった。

しかし、義妹は彼女の取り巻きだったらしい。

貴族令嬢が、平民の取り巻きってなんだ!との疑問はさておき。サキュラは自分と同じ平民出身の特待生や下位貴族の象徴的存在らしい。この国の第四王子と側近からなる生徒会のメンバーでもあり、風通しのよい学園作りに奔走しているのだと言う。学園の中は基本平等だが、社会に出たら階級社会。若い内から社会性を身に付けるためには、能力だけではない一般常識やマナー、教養そして、人脈の構築が必要となる。第四王子は見た目麗しの王子様であり、学園では成績も優秀で生徒会長。常日頃から生徒間の格差、どうすれば優秀な平民の若者を社会の重要ポストに就かせることが出来るのか悩んでいたらしい。そんな折りに現れた特待生サキュラは学園内の平民特待生や下位貴族の生徒を上位貴族から守るために奔走していたようで第四王子は、彼女と話し、学園そして、社会を内から変革するのだと意気込んでいる。所謂、遥か東の国の『王ではなく民衆』が政治を動かす世界を目指雰囲気さえある。いやいや、お前、王子だろ?民主主義とやらになったら、階級社会じゃなくなるぞ?それでいいのか?とツッコミを入れる側近はいなかった。


この国や周辺の王国は、大穴の驚異から民を守るためにある。国の頂点に立つ者は其々の国で魔力保有量の多い者と決まっている。邪悪な穴から出てくる魔物から民を守るため存在していると言える。魔力保有量が多く、強い魔術を展開出来る王族は結界の要である。また、国王や上位貴族ほど魔力保有量が多く、何かしら国に民に貢献する義務がある。

王都から遠い程に国王一家の結界の力は弱まり、脅威に晒される。そのために辺境を守る者達は国王に準ずる魔力保有量と政治力が必要となる。

大穴を有しているオーヴェル国の魔力保有量の高い上位貴族は自国の民を大穴から出てくる魔物から守るため日々研鑽を積まねばならないのだ。魔力保有量が少ない貴族ももちろんいるが、その者達は自身の知識や知恵で国を支えねばならないとの使命を担う。平民であっても魔力保有量が一定以上であるならば、国のため、故郷のため、家族のため王都や領地の中心にて見識を深めていくのである。

(あの第四王子殿下とやらは、魔力保有量が王族にしては少ないと見たわ。そんな貧弱な男が姫様の婚約者に収まっているなど、)

レティシアは眉間にシワが出来ていた。

姫の旦那様である第三王子ジオンはもとより、臣下に降りたクロノスも前世との関連で元より高かった魔力が天元突破している状態であり、この世界で普通に王子としてある王太子も神獣と契約するだけあって魔力保有量は多い。四人の王子の中で、第四王子であるデイビスだけが保有量が少ない。一般的な伯爵家レベルだと聞いた。

しかし、それに気付かず、蝶よ花よと育てられた結果、自分が一番国王に相応しいと思っている節がある。

(なのに、民主主義を推すの?馬鹿じゃない?)

学園には他の王子も通っていたようだが、自ら生徒会長をするものは居なかった。王太子ジオルドは成人前から公務で忙しくほぼ通うことなく卒業、次男クロノスは、放浪癖が全盛期で国に居てもダンジョンか騎士団での修行に明け暮れていたし、デイビスの数ヶ月前に生まれた第三王子ジオンは病弱と言うことで学園には、ほぼ在学していなかった。

(ここは、第四王子にとって、楽園なのね。)

レティシアは、今日もため息を吐いた。



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