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ますぷろ 〜ファンタジー世界で量産機しか乗れない俺だけど、プレイヤースキルで専用機やエース機や決戦兵器やドラゴン諸々全部ブッ飛ばす!〜  作者: 紫炎
第二部 雪崩新生の章

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040 ヘリオス

「落ち着きましたかティッサ?」


 窓の外を見ながら、坊主頭の、イシュタリアの裁定者と呼ばれた男がそう口にした。

 言うまでもなく、闘技場の襲撃者は彼らであった。もっとも、その目論見は完全な失敗で終わった。

 リリ・テスタメントの捕獲はできず、無人マキーニ『イカロス』三機も失った。

 たとえオリジンダイバーが参戦したとしても抗せるはずの戦力が失われた……ということに裁定者はそれほど落胆はしていなかった。戦いとはそうしたもので、敗れて失われることも裁定者の中では想定の範囲内の出来事だ。

 また失われた分の戦力についても、彼にとってはそれほど問題ではない。

 後始末は終えてあるし、追加の補充も容易であった。ただ、裁定者と共にいた少女にとってはそうではなかったようである。


「も、申し訳……ございません。私が……引き際を……誤ったばかりに」


 部屋の中では、床に這いつくばるように謝罪する少女ティッサの姿があった。

 今の彼女の表情は苦痛で歪み、脂汗が大量に流れ出ている。それがイカロスを失ったフィードバックによるものだと知っている裁定者は咎めることをしないが、今も醜態を晒して続けている彼女にとっては己の不甲斐なさに憤死したいほどであった。


「謝る必要はありませんよティッサ。相手が悪かった。今のあなたの精神状態で、あの状況。アバターが暴走するのも仕方のないことです」

「いえ、いいえ。私が未熟だったのです。あの機体……アレを見た瞬間に意識が飛びました」


 ティッサの目に浮かぶのは、表面上はボロボロの機体だ。闘技場でアヴァランチと呼ばれていたアレは、確かに『彼女の両親を殺した』アーマーダイバーだった。

 その姿を見た瞬間に、彼女の心は三人分の憎悪に押し潰されたのだ。結果として港町全体へと降り注ぐはずだった魔導不活性(グレムリン)弾はたった一機のアーマーダイバーへとすべて向けられ、アーマーダイバーや魔導具の不活性化は闘技場周辺に限定されてしまったのである。その失敗がなければ、こんな無惨な結果にはならなかっただろう。


「三機のイカロスに入れたあなたのアバターはあなたの意識の反映であり、そして目の前にご両親を殺したスケアクロウがいた。アバターからフィードバックした感情はあなた三人分の憎悪です。耐え切れるものではないでしょう。それがあの機体の仕様なのですから」


 悔しそうな顔のティッサが項垂れながら「はい」と頷いた。

 無人マキーニ『イカロス』に搭載されているアバターシステムは、操縦者の魂を複製した、アバターと呼ばれる擬似魂を機体に宿すシステムだ。アバターは距離を問わず、同一の形をした操縦者の魂と同期し、魔術的な妨害を気にすることもなく遠距離での操作を可能としていた。

 もっとも魂の複製であるアバターはティッサの感情までも正確に複製されている。故に憎悪の対象に対しての攻撃意思が収まらず、ミサイルはすべてその機体に向けられてしまったのである。その後にティッサは持ち直したが、最終的にはあの青と黒の機体に敗北した。


「それに乗り手はあなたが始末したのです。アレに乗っていたのは別人です。気にすることはないですよ」

「そう……ですね。両親の仇はすでに討っている」


 裁定者の言葉は正しく、一年前に命を奪われた両親の仇は、すでにティッサがその人物の所属組織ごと討っている。今回、彼らがこの場にいる理由も、そもそもがそのためだった。ティッサの復讐を果たすために彼らはこのシェーロ大天領に潜伏していたのだ。


「ともあれ……まさかイカロスがたかだかスケアクロウ一機に、それもエントリークラスにやられるとは思いませんでしたがね」

「やられた私の言葉では言い訳に聞こえましょうが、何故イカロスのオートコンバットを凌げるのか。高出力型の方はまだしも、あの機体の乗り手は明らかに異常でした」

「そうですね。勝負になること自体がそもそもおかしいはずなのですが」


 スケアクロウとイカロスの戦いは、イカロス側のメインカメラを通して裁定者も見ていた。エントリークラス相応の量産機、ミドルクラス相応の高出力型。どちらもスペック上ではイカロスの敵になり得ない相手のはずだったにも関わらず、結果は予想を覆していた。


「……時折いるのですよ。異常個体(アノマリー)。秩序を破壊し、世界に変質をもたらす者……本来の私はそれを見つけ、排除するか否かを裁定する機構でした」

「裁定者様?」


 首を傾げるティッサに裁定者は薄く笑う。


「ティッサ、私の役回りは変わりません。今も昔も、私は私に与えられた律に従って、動いている。あなた方を救うのもそのためでしかない。だからあなた方が私を敬う意味はないのです」


 その言葉にティッサが首を横に振る。


「いいえ。いいえ。それでもあなた様だけが我らに希望を与えられた。だから、次こそはあのリリというオリジネーターを捉えてまいります」

「いえ、それには及びません。今回は引きましょう」

「何故ですか裁定者様?」


 その言葉にティッサが愕然とした顔をするが、裁定者はそれがティッサの至らなさ故ではない……とでも言うように首を横に振った。


「すでに相手も警戒をしているはず。それにオリジンダイバーに乗った彼女と、あのアノマリーの乗り手は同じクランのメンバーです。アレらが揃っていては、手を出すのは困難でしょう。これ以上、『代用できるかも分からぬ者』に固執して、こちらの狙いが悟られるのも良くはありません」

「しかし、いえ……はい」


 言葉を飲み込んだティッサに裁定者が頷く。


「元よりここに来た用事は済んでいます。作戦は予定通りに。あの者の情報は集め、機会があれば……ふむ?」


 話している途中で、裁定者が不意に部屋の入り口へと視線を向ける。その様子にティッサは首を傾げ、その意図に気付くと、ふらつきながらも急いで立ち上がった。


「なるほど。流石に大天領。それなりに優秀ではあるようですね」

「まさか、気付かれましたか?」

「さて、どうでしょうか。まあ容疑者を虱潰しに……ということかもしれませんが。仕方ありませんね。宿の方には申し訳なく思いますが……ティッサ、ヘリオスをお願いします」

「はい」


 裁定者の言葉に呼応するようにティッサの瞳が金色に輝き、そして彼女らの頭上、宿屋の上空の、何もない空間が歪み始めた。




———————————




(隊長。ここがそうです)


 シェーロ大天領軍の領都防衛隊。

 生身でも身体強化の魔術を扱うことで飛獣との戦闘が可能な彼らが、港町の宿屋に来ていたのは偶然ではなかった。

 本日発生した闘技場襲撃事件。シェーロ大天領の領主、彼らの主人が狙われた事件はマキーニと呼ばれる、深海人の扱う機体によって行われた。そう報告を受けた彼らは二日前に発生した犯罪組織の壊滅の件でチェックリストに入っていた不審者の一斉捜査を即時行うことを決定したのだ。

 そしてチェックリストに入っていたふたりの人物がいるこの宿屋へと足を運んでいた。

 すでに宿屋のオーナーには事情を説明し、彼らは隠密行動をとりながら扉の前にまで到着していた。

 音は立てない。魔術を使えば気取られるために、素の身体能力のみで音を殺し、魔力の漏れない直接接触による念話のみで彼らはやり取りをして配置についた。


(中にいるのは、流民の兄と妹だったな)

(はい。背後に空賊『蛇の心臓』がいる犯罪組織『泥人形』壊滅の実行者として容疑が上がっていました)

(深海人か……境遇には同情するがな)


 中にいるふたりの内、妹の方が泥人形壊滅の際に近辺で目撃されているのだ。深海人の特徴である額の結晶体は確認できていないが、燻んだ赤色の髪と不健康そうな白い肌から深海人だろうと推測もされていた。

 もっとも港町は天領内にあって、天領内ではない、治外法権の場だ。彼女らが深海人であろうと咎めることはないし、彼女らが敵討ちの犯罪組織を港町の中で潰したとしても捕らえる予定もなかった。

 深海人でなければそれなりの対応は必要だが、深海人を表に上げる理由を作ること自体が領内では禁じられており、犯罪組織との因果関係が出ないようにも彼らは動いていた。

 けれども領主を狙ったのであれば話は別だ。

 泥人形壊滅の取り調べに港町に来ていた領都防衛隊は即座に動き、この天領に手を出した代償を支払わせようと動いた……が、彼らの行動はわずかに遅かった。いや、察知されずに突入するよりも被害は少なかっのたかも知れないが。


(それでは突にゅ)

(!? 隊長、上です!)


 そして突入のタイミングでソレは現れた。


「は? なんだ、アレは!?」


 宿屋上空に突如として現れたのは人型の機械だった。

 闘技場に出現したマキーニに似てはいるが、全長は6メートルを超え、アーマーダイバーに比べて直角的なフォルムをしていた。何よりもソレは太陽のように黄金色に輝く機体であった。


「あれはアーマーダイ……いやマキーニか?」

「闘技場に出たのよりもデカい? ま、魔力反応が増大してます!?」

「は? 天領の上でか? おい、あれ。魔力の塊が人型に?」

「畜生、アレは闘技場のマキーニだ。召喚してるぞ」


 彼らの前で黄金の機体の周囲に三機のマキーニを顕現していく。

 それはそれぞれが戦闘機の形に変わり、さらには黄金の機体へと合体していった。


「『召喚して合体した』? なんだ、その浪漫あふれる合体は!?」

「言ってる場合ですか隊長。落ちてきますよ、アレ!?」

「クソッ、退避だ。退避ぃぃいい」


 隊員たちが声を上げながら、その場を離れるのと同時にその合体マキーニは宿屋へと落下した。

 そして立ち昇った土煙の中、その場の全員が呆気にとられて見ている前で、ソレはブースターを噴かしながら空高く飛び去っていったのである。

合体後のヘリオス・ロウウィングス(仮)は某レッドドラゴンのバックパックみたいに三機のイカロスがくっついてる感じだと思います。


これにて今章は終了です。

書き溜め期間に入るため、しばらくお休みします。

次章『新生牙の章(仮)』でまたお会いしましょう。

次はアヴァランチの武器を探す内容になる予定です。

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― 新着の感想 ―
アヴァランチの武器 勝手に予想 棍 アリーナ入場時 新体操の如く踊る
下の感想。犯罪者の両親が天領に殺されたんじゃなく、犯罪組織が両親の仇で彼女らが来て壊滅させたのだと思いますが。
深海人というより犯罪者の両親が殺された逆恨みか 取りあえずそのロマン機体置いてけ~
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