024 薄氷の即殺
突然現れたオリジンダイバーの部隊。ルッタがそれらを余裕をもって圧倒した……かといえば、実のところはそうではない。むしろ、こうするしかなかったというのがルッタの本音だった。
(実際さ。レーダーにオリジンダイバーが五機も出てきたのには肝が冷えたんだよねぇ)
そんなことを思いながらルッタがラガスの操作するゲンブ四機の突撃を避けていく。
オリジンダイバーが強敵だなんてことは当たり前の話だ。何しろオリジンダイバーは量産型アーマーダイバーの二倍以上の出力があり、その装甲も強固で、魔導銃が当たったとしても即座に落ちることはない。
それが五機も出てきたのだから当然警戒はしたし、だからこそタイフーン号に敵の攻撃が集中するのを承知で竜雲海の中に隠れたのだ。
とはいっても、オリジンダイバーの本当に厄介なところは出力差でも硬さでもない。確かに強敵ではあるが、それだけなら分かっていれば対処のしようはある。そもそも、そうでなければパワーでもスピードでも上回っているランクの飛獣などを相手にはできない。
(だから問題なのはオリジンダイバーの保有する『未知の兵装』だったんだけどさ)
リリのフレーヌにはキャリバーやシルフ、ラインのシトロニエにはセラフィムフェザーがあるように、オリジンダイバーにはそれぞれがアーマーダイバーが扱うモノ以上の性能を有する固有兵装を所持している。
(特に使われたくないのは威力よりも範囲や誘導重視タイプの兵装なんだけど。ま、出される前にさっさと潰せて良かったよ)
ルッタの乗るブルーバレットは量産機の中でも速度や機動性重視のイロンデルタイプをさらに特化させたもの。つまるところは紙装甲だ。相手の固有兵装が数十発の誘導型マイクロミサイルなどであったりすればガトリングガンでも撃墜しきれないかもしれないし、広域タイプの特殊兵装なら最悪だ。
だからこそルッタは最初にミサイルランチャーらしきものを持っていたザイロの乗るシャルドンを落とした。使われる前に潰した。ほとんど全速力、賭けに近い速度で可能性の高い機体から順に潰していった。反撃されればピンチになるリスクを負ってでも即殺を狙って動いた。
加えて言うならば、今回の戦いの前に全自動魔導散弾銃とタラに出会えたこともルッタにとっては幸運だった。
ガトリングガンでは当たらないし、当たってもほとんど怯まないから仕留める前に逃げられる。水平二連の魔導散弾銃でも、牙剣でもオリジンダイバーを打倒しえる火力を出すには足りない。チェンソーモードなら可能だろうが、アレは回数が限られているから容易に使えない。
リリやアンたちと検討した結果、オリジンダイバーの装甲を破壊するのであれば近距離での重弾三連射は必要だろうという話になり、タラという照準をサポートしてくれるパートナーもついたことで、ようやくルッタはオリジンダイバーを即殺する目処がたったのだ。
(相手がまだあったまってなかったからできたことだけど……連中は頭の中が戦闘に入りきっていなかった。遊ぶ時間があればノせたんだけど、今日はガチだからね)
また、オリジンダイバー五機という圧倒的優位が彼らの油断も呼んだのだろう。示威行動的な意味もあったろうが、ルッタからすればだからなんだという話だし、最初から五機でやってくるのが分かっているのだからやりやすいことこの上なかった。
本来その戦力と正面からやり合えば、ルッタも負けるつもりはないが苦戦は強いられただろう。そういう状況を望んでいる自分もいたが、仲間の命が両肩に乗っている今そんな愚行は犯せないから実力を出される前に叩き潰した。
その結果が今である。
『あっさりとやってくれるな。貴様にとってはオリジンダイバーも敵ではないか』
「本当にそうだったらもう終わってんだけどね」
ゲンブ四機に加えてノワイエ本体による五機の攻撃を避けながらルッタが言う。ラガスを最後に残したのはノワイエの戦い方を知っているために優先して処理すべき対象ではないと判断したからではあったが、狙ったところで盾がさらに増えたノワイエを仕留め切れないとも思ったからだ。
(ぶっちゃけさー。もっとも最悪な展開は本気になった四機のオリジンダイバーをノワイエがサポートにまわることだったんだけどねー)
ラガスが味方のサポートにまわるような殊勝な性格をしているか否かはともかく、同じ系統の機体を扱うジェットの戦い方を知っているルッタとしては、その展開だけはなんとしても防ぎたかった。
「シーリス姉。こっちは少しかかりそう。そっちは大丈夫?」
『あんたが随分と減らしてくれた……らねぇ。問題ない。先に進……待ってるよ』
ルッタの問いにシーリスがノイズ混じりの声でそう返す。それはタイフーン号との距離が離れているためだ。ルッタがオリジンダイバー部隊を相手取っている間にタイフーン号は距離を離しつつあった。
『少しかかる……か。舐めてくれるなルッタ・レゾン!』
「そんなつもりはないけどねぇ」
ラガスの怒りの声にルッタはそう返すものの、その表情にはまだ余裕がある。
決して侮るつもりもないが、負ける相手であるとも思っていない。
ただクレバーに、ルッタは迫る四機のシールドドローン『ゲンブ』の動きを観察しながら、攻める機会を窺っていた。




