015 タラちゃんデビュー
「うん。召喚弾の補充に問題はない。タラちゃんは大丈夫か?」
「キキー」
タイフーン号から飛び出してスカイフィッシュの群れの元へと近づく途中で、ルッタとタラがそんなやり取りをしている。全自動魔導散弾銃のドラムマガジン内の総弾数もルッタひとりでは十発込めるのが限度であったが、タラがいることでフルの二十発まで入れられるようになっている。単純に倍増えたことで継戦能力は向上した。
そしてルッタは索敵モードで敵の位置を把握すると、すぐさま頭部の二角を一角に戻して戦闘モードへと切り替え、スカイフィッシュの群れへと飛び込んでいく。
「まずはタラちゃんから行ってみようか!」
「キーー」
タラの意思を乗せたタクティカルアームに持たせている全自動魔導散弾銃が連続で火を噴き、迫るスカイフィッシュを一体、二体と重弾で撃ち落とす。
続けて三体目が重弾を掠めてバランスを崩したところにルッタが飛び込んで白牙剣で斬り裂き、さらに続く四体目を黒牙剣で貫いて仕留めた。
『ルッタ、今の……』
接近してきた四体を即座に処理したブルーバレットにリリからの通信が入る。そしてルッタはリリの意図を察して笑う。
「ああ、リリ姉は気づいちゃうか。今のはタラちゃんが撃ったんだよ」
「キーー」
訳:どんなもんよ!
『うん。ルッタにしては照準甘いからそうだと思った』
「キキー」
訳:なんだとー
『ルッタにしては反応が素直すぎる。相手が避けることも予想して撃たないと』
タラの狙いは正確であった……が、三射目だけは先に二体が倒されたことに気付いた相手が回避を行なったことで当たらなかったのだ。
「うーん。それでもタラちゃんはランクCクラスの腕はあると思うよ。ヒムラさんってほとんどタラちゃん頼りだったんじゃないかなぁ」
ルッタがそう言う。実際それは確かで、素人同然のヒムラがルッタたちと曲がりなりにも戦えたのはタラのサポートプラス散弾をばら撒いて近付けさせない、素人でも立ち回れるビルドの機体だったからである。
「まあ、タラちゃんは射撃だけじゃなく、機体制御も手伝ってくれてるからね」
ルッタはタラをサポートに回すことで、制御系のいくつかの操作をオートからマニュアルに変更していた。状況が起きてから素早く動くのではなく、負荷が起きることを事前に予測してカバーに回しているのだ。
それは従魔契約による思考のリンクにより、ダイレクトにルッタの考えを読み取ることで可能となるモノで、それこそがタラの真価だった。
(本来はもっとダイレクトにタラちゃんが操作することで、乗り手の負担を減らすんだろうけど……タラちゃんにはもっと別の……俺だけだと手の届かない域の作業を手伝ってもらった方が効率が上がるんだよねぇ)
「ま、甘いところはこれから訓練で直していけばいいしね。何千回でも何万回でも繰り返せば、そのうち修正できると思うよ」
「キ、キキ?」
その言葉にタラは何故かゾワッとしたが、今は戦闘中だと頭の片隅に追いやった。もっともその悪寒の意味に気付いたとしても、すでに従魔契約を結んだ彼女はもう逃げられない。
ルッタの実力を支えているもの。
その正体は一握りの才能でも、前世の記憶に裏打ちされた操縦技術でも、テンキーもどきによる動作のショートカットでもなく、ただひたすらに繰り返される膨大な量の訓練時間であった。
そして、その事実をタラが知るのは、今より少し先の未来のことである。




