013 強襲
「ゴーラ武天領軍っていう物証はないみたいだね」
「ま、暗部の類だろうからな。そりゃそうだ」
ルッタとギアがそんな言葉を交わしている前にはタイフーン号内部に用意された独房内があり、その中に三人の男が放り込まれていた。
ゴーラ武天領軍らしきもの達の侵入と襲撃。その対処について彼らは事前に準備をしていた。ティタノス天領に入る前の時点で船内で共有されていたことだった。
相手が風の機師団の進路を掴んでいるとするならば、ティタノス天領に寄る際に仕掛けてくるはずだろうと。しかし、ティタノス天領を出るまで何事もなく過ぎてしまった。であればもう安全か……等とギアが思うはずもなかった。より一層警戒を強めた。
もっともさすがは正規の軍の暗部であった。実際船の中にまで容易に侵入され、結局は目標であるルッタやリリが自分で対処することとなってしまった。
ちなみに船導核のある機関室への警戒が最も大きかったのだが、こちらは空振りであった。
「ルッタ。あのトラップはテオ仕込みか?」
「そうだね。トラップに使った糸はタラちゃん製だから気づかれにくくはなっていたけどね。島にいた頃は店を閉める時には仕掛けて、先に店に出勤する時には外してたよ」
「……そうか」
ちなみにテオの仕込みはハンタークラン標準でも風の機師団標準でもなく、ただテオがそうしたバイオレンスなことに長けているだけであった。アレはデンジャラスじーちゃんである。
「でも散弾銃で仕留められなかった時は焦ったし、結局はタラちゃんのおかげで助かったようなもんだよ」
「キーー」
ルッタは魔弾散弾銃だけで仕留められると思っていたのだが、相手のスーツの性能はそれ以上だった。そこは流石にルッタが以前に相手にしていた盗人のチンピラとは格が違ったということなのだろう。
そして褒められたタラちゃんが前脚を挙げて喜んでいるが、糸吐きで視界が遮られていなければ、ゴーラの刺客にガンソードの攻撃は当たらなかったかもしれない。今回の件でのタラちゃんの活躍は明らかだった。
「それにしても随分とガッチリ拘束してるね」
ルッタが牢屋の三人を見ながらそう口にする。
実際彼らはガッチリと手錠と猿轡をはめられ、さらにはそれらには魔術師封じも施されていて、マーヤ調合の筋弛緩剤も投与されている。
「この手のは生身で飛獣と渡り合うクラスの身体強化や魔術を使うからな。まあ人型の魔獣と同じ扱いで対応しねーと危険なんだよ」
ギアがそう言って肩をすくめた。
なおリリはこの状態からでも抜け出せると豪語しているのだが、それに合わせて対応すると常人は死んでしまうので難しいところである。
「しかし、こうなるとゴーラの連中。すぐに来るだろうな」
「なんで?」
「そりゃあリリを捕まえるのに成功したとしても、たった三人でどうするって話だからな。鹵獲したアーマーダイバーで脱出ってプランを考えるにしても杜撰すぎる。成功失敗関係なく、ゴーラ武天領軍はすぐここにやってくる予定だろうさ」
そうギアが言ったのと同時に、艦内に警報が鳴り響き始めた。
「チッ、ほら来た」
そう言いながらギアが好戦的な笑みを浮かべて、壁に添えつけてある通信機を手に取ってブリッジに連絡を入れる。
「おう、ギアだ。こいつは連中か? ゴーラ武天領軍が来たんだな?」
『いえ、敵襲ですが違いますぜ艦長』
「何?」
返ってきたラニーの言葉にギアが眉をひそめ、そばにいるルッタも首を傾げる。
『迫っているのは飛獣です。飛獣スカイフィッシュの群れが接近してきてやがります!』




