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ますぷろ 〜ファンタジー世界で量産機しか乗れない俺だけど、プレイヤースキルで専用機やエース機や決戦兵器やドラゴン諸々全部ブッ飛ばす!〜  作者: 紫炎
第一部 強羅業の章

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010 潜む紅鮫

「……なるほどな」


 ボソリと男が呟いた。

 そこは雲海船の一室だった。

 アーマーダイバー製造が可能なプラントを保有する八つの天領のひとつゴーラ武天領。そのゴーラ武天領の軍の中でも、自領の外へと遠征して他天領の救援や飛獣の討伐等を行うことを目的としているのが第七兵団『クリムゾンシャーク』と呼ばれる軍だった。

 別名『血臭嗅ぎの紅鮫』。追い詰めた飛獣や空賊を必ず追い詰めて仕留める執拗さで知られている彼らには今、一年以上も追い続けている獲物が存在していた。


「ふふ、見つけたか」


 そしてクリムゾンシャークの兵団長ゾッド・サーヴェント、魔人将のひとりでもある彼へとつい先ほど一報が届いた。

 それは実質的なラストチャンスだ。これより先はヘヴラト聖天領の手の届く領域。ラインを越えればもう挽回の機会はない。


「賭けには勝ったな」


 ゴーラ武天領の領主アーシェス・デウスエクス・ゴーライアンの命令でゾッドはゴーラの地を離れ、一年以上もの間、タイフーン号を追い続けていた。

 当初の話では、ランクBとはいえ雲海船一隻しか保有していない小さなクランという話だった。ソレを制圧し、オリジネーターの少女をひとり捕らえるだけの簡単な任務であるはずだった。

 相手はオリジンダイバーも所有していたが、ゴーラ武天領軍は自分たちもオリジンダイバーを実戦運用している。だから過度にオリジンダイバーを恐れない。手強い相手であることは事実だが、ハンターたちの間で言われているように、出会えば死を覚悟するほどのものではない存在なのを彼らは知っていた……はずだった。


「厄介な連中だったが、だが流石に今回は逃すことはない」


 最初に正攻法で捕らえに行った時には、ジェットという乗り手の機体のシールドドローンに阻まれ、他のメンバーのチームワークによって逃げ切られた。

 もっとも惜しかったのはヴァーミア天領だろう。偶然とはいえ、オリジネーターとオリジンダイバーを切り離し、後一歩というところまで追い詰めた。しかし、それは新たに風の機師団のメンバーとなった乗り手によってひっくり返された。

 その後のハンタークランと協力して挑んだのは普通に失敗だった。ヴァーミア天領からの新人も加わったことで、分散した戦力では任務達成が難しいと考えざるを得なかった。


「新人の名はルッタ・レゾン。あれだけの乗り手が子供というおかしな報告もあったが、油断を誘うためのブラフだろう。どうあれ、連中の尻尾は掴んだのだ」


 ヘヴラト聖天領行きの移動ルートを絞り込み、散らばった戦力を集結させ、またジナン大天領の子飼いの貴族からの情報も得て網を張った。

 偶発的に起きた天領襲撃の容疑もかけて、早々にその場を逃げ出すことも想定して彼らは動いていた。そして実は結んだ。彼らはついにタイフーン号の行方を掴んだのだ。

 戦力差を考えれば、今度こそ確実に捕えられるとゾッドは確信していた。一クランを相手にするようなものではない、大人気ないほどの過剰戦力をそろえた。量も質も限界まで整えた。それは領主の命令だからというだけではない。すべてはゴーラ武天領の未来のために。このままでは滅びるしかない故郷のために。

 それからゾッドは、ふと窓の外に見えるサングリエ艦級のひとつに気付き、口を開いた。


「そういえば……あ奴も待ち望んでいたな。生意気で哀れな小僧ではあるが、今は使わせてもらおう」




———————————




「ハァ。内臓の負担が大きいねぇ。これ以上はレッドラインだ。ゴーラに戻らないと三十まで持たないよ」

「知るか。長生きするつもりはねえんだよ。俺様は父上とは違う」


 ゾッドが視線を向けた戦艦内の医務室では、医者の言葉に吐き捨てるようにそう返したラガス・ヴェルーマンがいた。

 クリムゾンシャークに合流したゴーラ武天領軍の戦力のひとつ、魔人将ラガスの雲海船『サングリエ級戦艦オーガゲート』。かつてヴァーミア天領でルッタたちが接敵した船の中に彼はいた。


「お父上……ゼロム・ヴェルーマン閣下もかつてはそうだったよ。若い頃の無茶が祟ってああなっているが、立派なお方だった」

「芋虫侯爵がか。糞を自分で拭くことすらできないあの様になるのはごめんだ。俺様は戦場に生きて戦場に死ぬ。次期当主は弟のダリルにやらせておけ」


 その言葉に医者がやれやれという顔をする。けれども彼はラガスを積極的に止めようとはしない。言われるままに輝く赤い結晶体の入った注射をラガスの腕に挿して、注入していく。

 ヴェルーマン家は魔人将を多く輩出する家系だ。そしてゴーラ武天領では造魔人施術なるものが存在し、それは資質のある人間ならばオリジンダイバーを操れるほどの魔力を引き出すことが可能になる禁忌の術だった。

 人工的にオリジネーターに近づけ、オリジンダイバーの乗り手となることで一騎当千の活躍をする。強化の代償として確実に身体の障害を負うことにはなるが、手厚く介護を受ければ老齢まで生き永らえる事も可能で、代々ヴェルーマンの当主は造魔人となって二十代を魔人将として戦い続け、以降を介護を受けながら当主として生き続けていた。

 それでも平均寿命は60前後であるので、この世界基準での寿命を考えるなら悪くない選択と言えなくもない。


「その父君よりも踏み込んでいるのだけれどね。ラガス様は」


 無茶を続けた現当主であるゼロムはもはや人と呼べるのかも疑問視されるほどに変質していたが、ラガスはその父よりも無茶をしている。


「勝てなきゃ意味がねえんだ。笑える話だろ。あのクソガキ、ランクAを単独で討ったらしいぜ」

「信じがたいがね」

「信じるさ。だからこそ無理は通させてもらう」


 処置なしという顔で医師が注射針を抜き、ラガスが唸る。そしてラガスが苦痛に顔を歪めてベッドの上で悶え、それから落ち着き始めた頃に部下の兵士が飛び込んできた。


「ラガス様。タイフーン号、見つかったそうです」

「ハッ、今度こそは捉えたか。それでヤツは?」

「姿は確認できていませんが、離脱したという話も聞きませんから。死んでいなければおそらくは」

「アレが死ぬタマでもあるまいよ」


 そう口にしたラガスの額には潜雲病の患者のように魔力結晶の角が生えており、真っ赤に染まった瞳は爛々と輝いていた。


「ルッタ・レゾン」


 そして笑みを浮かべるラガスはひとりの少年の名を口にした。

 ラガスは気付いている。相手がすでに最初に出会ったあの時の比ではないことを。伝え聞く話だけでも化け物ぶりが窺える。あのヴァーミア天領で目覚めた少年はすでに羽化を果たした。もはや尋常ならざる相手になっていると。

 だからこそ己も命をかける価値があると、来るべき戦いの時を想って笑みを浮かべる。


「ヤツはこのラガス・ヴェルーマンが倒す」

紅鮫って書くと紅鮭みたいだなーとぼんやりと思う今日この頃。

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― 新着の感想 ―
紅鮫の名を冠して鮫殺しの前に立つのか…
ルッタはサメ尽くしだな。前世でサメをいじめた事があるのかもしれない。
うわあ、またサメだ… もう助からないぞ……
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