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何をしても、どうやっても、俺の視界に入る物はモノクロだった。

モノクロ、というのは比喩表現だ。事実、俺が見ている色合いに異常を来たしている色はない。

だがしかし、世界に色がないのと同じ事だった。小さな時からこの目立つ容姿に、周りは放ってはおかなかった。老若男女問わず、グルリと囲まれ、気の休まる時なんてなかった。

成績も上位で、なんとなく行った大学も主席で卒業し、ただなんとなく教師になって、なんとなく時を過ごしていた。

そんな折に出会った少女は、癒しを与えてくれた。

何をするわけでもなくただ俺の隣に座り、本を読んでいた。




出会いは図書館。何気なく論説を読んでいた時、その少女は俺の隣に座り本を開いて勉強をしていた。

黒い髪に、意思の強そうな瞳になんだか惹かれた。話し掛けられるわけでもなく、話し掛けるわけでもなく適度な距離に居た少女の名前は木野萌というのだという。中学生ぐらいだろうか。志望校はここ等へんでは有名な進学校のようで、ノートの端々にその学校名が書かれていた。

相当行きたいのか、頑張って勉強に打ち込んでる姿に好感すら持てた。

小さな白い手。細い首。ぷっくりとした赤みのある頬。そのどれもが俺を惹きつけて止まない。特に、安産型の尻はなんとも魅力的だ。

今日もその尻を狙って、何人の男達が釘付けになっているか想像するだけで、不思議と嫌悪感に悩まされた。

それが恋である事に気付いたのは、数日後の事だった。

土日はいつも図書館に通った。その為に、教師の仕事は残業を残さないように細心の注意を払って片付ける。少しでもミスがあれば、そのミスを補う為の作業をしなければならないからだ。主に、成績付けとか。

部活の顧問なんてもっての外だったが、受け持ったのは文芸部。しかもほとんどが幽霊部員。という事で、かなり助けられた。

そうして、俺の休日の楽しみは、萌と過ごす事になった。




そして、春。萌は入学式には姿を見せなかった。彼女は、受験に落ちたらしい。

そんなの俺が許すわけではない。なんとか、萌の身内である木野蓮華と接点を持ち、萌の事を色々と聞き出した。

萌は、バカ校で有名な女子校に通っているとの事だった。それを聞いた時、俺は後悔に襲われた。なぜ、萌が受験を滑る事を考えなかったのだろうか。と、毎日毎日絶望してた俺に転機が訪れた。それは、他校からの誘いだった。

「阿澄先生の噂はかねがね聞いております。ぜひ、うちの高校でも教鞭をふるっていただきたいですわ」

年配の女性は姿勢をビシッと正し、蕩けるような目で俺を見る。その目には色欲が浮かんでいた。だが、しかし。その女性が管理する高校は正に、萌が通っている学校だった。

「えぇ。数学だけであれば。テストなどは、そちらで任せます。私はただ、彼女達に数学の面白さを教えたいと思います」

週に二回の授業を約束し、その他にも中学校の誘いが来たが、それは俺の都合に合わせるとの事で話は片付いた。

初めての、萌のクラスでの授業。心が逸る。

彼女は、虐めにあっていた。だが、それを一々、萌は気に掛けていないのかガン無視だった。それもなんだか面白くて、初めて萌を教壇に呼んだ時はやはり胸がドキドキした。結局のところ、俺はあの年配の女と同じだった。俺好みの女がここに居て、触りたいと思わない奴は居ないだろう。

そうして、触った萌の尻は俺の手に妙にヒットした。驚いた眼でこちらを見た萌に、欲情がぐちゃぐちゃに掻きまわされる。

あぁ。なんという至福。こんな小娘に振り回されるなんて、思ってもいなかった。いいだろう、萌になら振り回されてやろう。

そして、俺しか見られないように、誰の目にも触れないように一生閉じ込めて、愛してやろう。

一度捕まえたら、離してなどやらん。逃げないように鎖で雁字搦めにして一生俺の傍に置く。その相手は萌以外には考えられない。もしも、俺から離れるというのなら、俺は狂うだろう。

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