閑話 王妃様視点 莫大な聖魔力を持つ筆頭聖女候補を見つけたので、これからじっくりと教育していこうと思いました。
私の名前はカサンドラ。この国の筆頭聖女だった。
伯爵家の出身の私は小さい時からお父様とお母様に可愛がられて育てられた。
だから5歳の時に聖魔力が発現したときに父も母もとても喜んでくれた。
でも、入れられた大聖堂での生活は大変だった。
5歳でいきなり寮生活は中々厳しかった。私達の面倒を見てくれるシスター達は厳しかった。
いや、甘やかされて育てられた私には厳しいように感じたのだ。
私は一番下の聖女で、大聖堂では親の爵位など何も関係無かったから。
朝は大聖堂の掃除から始まった。
私は出来ないなりに必死に掃除した。
その後は質素な食事。人参の嫌いな私は残してよくシスターに怒られた。
午前中はお祈りやいろんなお勉強の時間があって昼からは初級ポーション作りだ。
私はレベルが10になってもただひたすら初級ポーションを作らされたのだ。
何で初級ポーションばかり作らされるんだろう。
シスターに聞いたら、
「カサンドラさん。何事も基本が大切なのです。基本をしっかりやらないと中級、上級ポーションを作る時に困りますよ。あなたはまだ小鍋でしか初級ポーションが作れませんが、慣れてくればこれが普通の鍋になり、そして大鍋になるのです。大鍋で普通に作れるようになるまで、中級は作れませんよ」
「えっ、そうなんですか!」
私はシスターの言葉に気が遠くなったのを覚えている。
私は今は小鍋で作るのも精一杯だ。
私が出来ない子ではない。これでも出来る方なのだ。出来ない子は更に小さい試験管で必死に作っていたから。
出来る方だった私も小鍋一杯作り終わると本当にもうヘトヘトだった。それなのにこれを大鍋で作れるようになるなんて、絶対にあり得ないように私には思えた。
でも、そんな私も6歳になった頃には小鍋一杯は普通に出来るようになって7歳で普通の鍋が出来るようになり、9歳では初級ポーションを大鍋で作れるようになったのよ。10歳で聖女に認定されて中級ポーションを作れるようになったときは本当に嬉しかったのを覚えているわ。15歳の時には上級ポーションが作れるようになって、筆頭聖女候補になって、学園にいた王太子殿下と普通に恋して結婚したのよ。
だから息子のエドにもそうして相手を見つけて結婚してほしかった。
まあ我が国の聖王になるエドには筆頭聖女と結婚しなければならないという不文律があって、中々自由に相手を見つけられる環境にはなかったけれど。
私はこの国の王妃でもあるので、色々と忙しくてここ最近大聖堂に顔を出しても聖女達とよく接していなかった事を思い出した。
そして、忙しい時間をやりくりして大聖堂に行って息子の嫁候補の聖女達の様子を見に行こうとした。
お忍びで言っていろんな聖女と交流したかったのだけど、行く前に大司教にバレてしまって筆頭聖女候補達に出迎えられてしまった。
まあ、これは仕方が無いだろう。
でも、聖女達にポーションを作ってもらうところを見せてもらったんだけど、何か、皆とても少ししかポーションが作れていないのだ。こんなに沢山いるのに、皆小鍋に少しのポーションしか作っていない。
筆頭聖女候補の最右翼にいると言われた侯爵令嬢のアレハンドラですら、小鍋に試験管の量の上級ポーションしか作れないのを見て私はショックを受けた。
アレハンドラはやっと上級ポーションを作れるようになったところなのだろうか?
でも、皆が皆初めてという事は無いだろう。
私はとても不安になった。
「もっと他の者のポーションを作っているところも見たいわ」
私は元同僚で聖女候補達を教えているベルタに希望を述べた。
「そうはおっしゃっても筆頭聖女候補の方々は大半はここにいらっしゃいますが」
ベルタは渋ってくれた。
「そう、じゃあ、初級ポーションを作っている所も見たいわ」
「いえ、そんな、筆頭聖女様に見ていただくような者はおりません」
ベルタがとても慌てだしたので、私は強引に見学することにしたのよ。
「えっ?」
私は開いた口が塞がらなくなった。
なんと大鍋どころではない巨大な鍋で一心不乱に初級ポーションをつくっている小さな聖女がいたのだ。
私でもそんな大きな鍋で初級ポーションを作れるかどうか判らなかった。
それもその子は一つの巨大鍋を作って瓶詰めすると、また作り始めたのだ。
どれだけ聖魔力があるのか判らなかった。
「あなた、凄いのね、こんな短時間にこれだけのポーション作れるなんて」
「いえ、いつものことですから」
その子に声をかけたらその子は平然と言い切ってくれたのだ。
いつもの事ってこの子どれだけ初級ポーションを作っているのだろう?
後で調べさせたら、なんと大半の初級ポーションをその子1人で作り出しているというではないか。
私は頭が痛くなった。
ベルタはその子が平民だからと言うことでその子1人に初級ポーションを任せて、残りの貴族出身の聖女達にはレベル上げの為に初級ポーションはほどほどにして、すぐに中級ポーションを作らせていたのだった。
驚いた事にその子はここ数年我が国の初級ポーションを1人で作り続けていたのだ。
私は私に教えてくれたシスター達が初期ポーションを作る重要性を口を酸っぱくして言っていた意味が初めて理解できた。
私はベルタに、改めて全員に初級ポーションを作らせるようにさせるのと必ず全聖女を王立学園に入れるように指示した。
ベルタはその子には聖女に必要な礼儀作法や教養の教育も受けさせずに、ひたすら初級ポーションを作らせていたと報告も受けた。
今更、大聖堂で教育するには間に合わないしベルタに任せていたのでは心許ないので、王立学園で再度教育すし直すことにした。
誰に頼めば良いだろうか?
私は少し悩んだ。
王宮礼儀作法指南のロッテンを派遣出来れば良いんだけど、あまりに、その子だけ贔屓しているように見えてもその子がやりにくいだろう。
そんな時だ。息子のエドガルドが私を訪ねてきた。
「珍しいわね。エドガルドが私を訪ねてくるなんて。どのような用なの?」
挨拶の後に私が聞くと、
「それがその……」
珍しくエドガルドは言いよどんだ。
「どうしたの、エドガルド? 顔が赤くなっているけれど」
「えっ、本当ですか、母上?」
エドガルドが更に慌てふためいてくれたんだけど、鎌をかけただけなのにそれがドンピシャだったなんて。でも、このタイミングでエドガルドに好きな子が出来たなんて誰なんだろう。
エドガルドの話すのを聞くと、どうやらエドガルドはどのような聖女があるのか知るために大聖堂にお忍びで入り込んでパウリーナと知り合ったらしい。
そのパウリーナがベルタやアレハンドラ等に王立学園に行くのを辞退するように迫られているらしい。
「母上、そう言って泣くパウリーナが可哀相で」
愛おしそうにそう言うエドガルドの瞳は恋する男の目だった。
私は女の子に全く関心のなかった息子の成長を喜ぶとともに、少し寂しくなったのは秘密だ。
「判ったわ。その件は私が手を打ちます。私の要請を無視するなんてベルタもアレハンドラも許されないわ」
私は少し怒っていた。こうなればお灸を据える必要があるだろう。
私は直ちにロッテンを呼び出すことにした。じっくりとベルタとアレハンドラに釘を刺す意味でも丁度良いだろう。
エドガルドがパウリーナに気があるのならばこちらとしても手は打ちやすい。
でも、あの小さな聖女の何がエドガルドの心を掴んだのか、どうやって聞き出そうかしらと私は心の中で思案したのだった。
ここまで読んで頂いて有り難うござました
新作『母に叩かれ家出して魔術学園に入学したら何故か王子様と親しくなりました 平民少女のシンデレラストーリー』https://book1.adouzi.eu.org/n8270ll/
書き出しました。
パシーン! アマーリアは母に頬を引っ叩かれて前世の記憶を取り戻した。この世界がどのゲームの世界か判らないけれど、前世病弱で出来なかった学園生活を楽しむために、アマーリアは反対する母の元から家出して王都の魔術学園に通うことに。平民のアマーリアはやっかい事を避ける為に、貴族とは出来るだけ接触しないように注意しているのに、何故か次々と貴族と関わってしまうことに。学園で再会した平民の幼なじみだと思っていたリックもどうやら貴族らしい。やることなすこと規格外のアマーリアとその友人達の巻き起こす学園ドタバタ劇。貴族達の虐めも持ち前のパワーと魔術の前で叩き潰すアマーリア。
探しているアマーリアの実の父は誰なのか?
アマーリアの母の正体がわかるとき衝撃の事実が判明します。
毎日二話更新目指して頑張るので最後まで読んでもらえたら嬉しいです
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