ヒロイン視点 チビ聖女を魔物の餌にしてやろうと妄想していたら、魔物の寄せ餌にしたスパイ聖女の亡霊?に襲いかかられました
「行っけーーーーー」
チビのかけ声と共に光の奔流が私目がけて飛んできたのだ。
「ギャーーーー」
私は光の奔流を浴びて叫んでいた。
激痛が体を走ってもの凄く苦しかった。
バリン!
背嚢に持っていた魔道具が砕け散るのを感じた。
嘘! 私自身が浄化されるの?
恐怖が体を包んだ瞬間、私は光の奔流に吹っ飛ばされていたのだ。
気付いたら森の中にいた。
自分の体が無事であるのを確認してほっとした。
なんとか浄化はされていなかった……
いや、ちょっと待って!
何故、聖女の私が浄化されないといけないのよ!
絶対におかしいわ!
確かにやましいことは考えていたかもしれないけれど、私は聖女様なのよ。それも物語のヒロインなのに! 本来浄化なんてされる訳無いじゃない!
あの、チビ、何考えているのよ!
私に向けて、不潔な者に向ける浄化魔術を放つなんて、絶対に許せない!
私は怒りまくっていた。
私からヒロインの座を奪ったのも許せないけど、私をゴミ扱いした事も許せなかった。
「今度会ったら、私にこんなことしたのを後悔させてあげるわ! 魔物のエサにしてやるんだから!」
私は魔物の大軍の前に後ろ手に縛ったチビを吊るしてやるのだ。
そして、私に向かって必死に命乞いするちびを、魔物達の群れの中に蹴落としてやるのだ。
泣き叫ぶちびに絶対にザマアしてやるんだから!
そう想像してほくそ笑んだ。
でも、いつまでも考えていても仕方が無い。
そもそもここの場所がどこか判らなかった。
あのまま、森の奥に吹っ飛ばされたんだろう。
近くの村までどれくらいあるんだろう?
それよりもポルト王国の陰に出会えないだろうか?
周りを見渡したが、周りには木々しか見えなかった。
目印など何も見えない。
助けを呼ぼうにも誰もいなかった。
背嚢の中を見たら、魔除けの魔道具が木っ端みじんに砕けていた。
これはまずいかもしれない。
魔物に襲われたらどうしよう。
少し不安になった。
でも、あのチビの浄化魔術は強大だったから、大体の魔物は浄化したとは思う。
でも、全てを浄化したとも思えなかった。
魔除けの魔道具が壊れたということは、魔物がいてももう私を避けてはくれないはずだ。
体を動かしてみると、
「痛い!」
右足を骨折していた。
私はヒールで治す。
そして、少し経って、なんとか歩けるのを確認する。
でも、水も食料も無かった。
なんとかしなければまずい。
取り敢えず水を探そうと立ち上がった。
ゆっくりと歩き出す。
私は水場を探して、森をさ迷い歩いた。
でも中々水場は出てこなかった。
こんな時に一人だと不便だった。
バルトロメーオくらいを連れてくれば良かった。ちびの下っ端聖女をコルドバ王国にやるといえば喜んでついてきたかもしれない。そうすればこういう森では役に立ったのに!
私は一人でここに来た失敗を悟っていた。
セナイダが探しに来てくれないだろうか?
あいつは生意気で魔物の餌にしてやりたかったが、ここにいれば魔物の相手させるのに丁度良かったのに! それに散々怒られはしただろうが、怒りつつも私を人のいるところまでは安全に連れて行ってくれたはずだ。セナイダから逃げ出したのは失敗だった。
それから少し歩いて私は疲れ切ってその場にへたり込んだ。
段々空が暗くなってきた。
私は徐々に心細くなってきたのだ。
そんな私に黒くうごめく者が見えた。
「セナイダ! 遅いわよ!」
私は喜んで叫んだが、そこにはセナイダはいなかった。
なんか黒く揺らめくものがいる。真っ黒なそれはゆらゆらしながらゆっくりと私を目がけて動いてくるんだけど。
でも、その姿が、私には聖女のように見えたのだ。
えっ? 何故聖女が?
私はスパイ聖女を魔物を集める餌としてダンジョンの最深部に天井から吊るしたと大使が笑って言っていたのを思いだした。
まさか、その聖女なの?
私は蒼白になった。
嘘でしょう!
そんな訳無いわ!
私は慌てて浄化しようとして、魔力がほとんど残っていないことに気付いた。
そんな!
「恨めしや!」
「ええええ!」
その魔物が確かにそう言ったのだ。
私は信じられなかった。前世の日本のお化けじゃあるまいし……
「恨めしや!」
また、私に向かって言ってきたのだ。
「いやあああ! 恨むのならばポルトの陛下を恨みなさいよ」
私は渾身の力を込めて踏んづけてやった。
そうしたら今度は私の足首がズボッと嵌ってしまったのだ。
「ギャーーーー」
私は今度は足を抜こうにも抜けなくなったのだ。
黒い塊が私の足から這ってこようとしていた。
「いやーーーー! 来ないで! 助けて! 神様!」
私は久々に神に祈ったのだ。
しかし、何も起こらなかった。
「ギャーーーー」
悲鳴を上げる私はあっという間に黒い塊に飲み込まれてしまったのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
新作現在考案中です。
しばしお待ちください。
閑話は明るい話もこの後上げる予定です。








